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最低限マスターしたいアプリマーケット分析の基本 (2/2)

2014年06月06日 16時01分更新

文●池村 修/エキサイト

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iOSアプリの分析の基本「iTunes Connect」の使い方

 Google Play Developer ConsoleのiOS版といえるのが、「iTunes Connect」です。アップルがiOS Developer Program(年会費99ドル)の加入者向けに提供しており、App Storeで配信するアプリの登録や、売上・ダウンロード数の確認、iAdへの出稿などができます。iTunes Connectの詳しい使い方は、iTunes Connectデベロッパガイドを確認してください。

アプリ運用中にiTunes Connectで見るべきこと

 iTunes Connectの場合も、Google Play Developer Consoleと同様にさまざまなデータが取得できます。エキサイトの場合は以下のような目的で利用しています。

売上見込みのシミュレーション

 アプリごとのダウンロード数を月別に記録しています。当月のダウンロード予測値、前月のダウンロード数との差、当月の売上予測を日数換算し、1カ月後や四半期ごとの売上着地見込みをシュミレーションします。

 iOSとAndoridのダウンロード数や売上のデータがある程度蓄積されれば、プラットフォームごとの傾向がつかめるようになり、自社アプリの強みと弱みも見えてくるでしょう。

広告出稿の効果測定

 広告の出稿やアプリのアップデートなど、施策前後のダウンロード数や売上金額を比較し、効果を分析します。どの経路でダウンロード数が増えたかまではわかりませんが、直近の施策前後の効果をすぐに知りたいときには役立ちます。

注力すべきアプリの見極め

 複数のアプリを配信している場合は、ダウンロード数が多いアプリや売上が発生しているアプリを確認し、注力すべきアプリを見極めます。ダウンロード数や売上が少なければ、配信の終了を検討することもあります。月ごとのダウンロード数を把握しておけば、ダウンロード数が伸びていない、もしくは前月比で下がり続けている傾向が一目で見て取れます。

 以下のような場合は、アプリの配信終了を検討しましょう。

  • ダウンロード数、売上ともに当初想定していた数字から大きく乖離している場合
  • 無料の類似アプリが登場し、ユーザーの流出が明らかになった場合
  • ダウンロード数、売上ともに停滞しており、アプリの性質上コンテンツの増強が難しい場合

 ただし、ダウンロード数や売上金額が少なくても、実際に使っているユーザー(アクティブユーザー)が多ければアプリを改善し、ダウンロード数や売上を伸ばせる可能性があります。アクティブユーザーの分析に関しては次回紹介します。

サードパーティが提供する便利ツール「App Annie」

 iOSとAndroidの両プラットフォームでのダウンロード数や売上を把握するには、「App Annie」が便利です。App Annieは、アップアニーが提供するマーケティングツールで、App Store、Google Playをはじめ、Mac App Store、Amazon App Store、Windows Phone Storeなどの配信マーケットの情報を一括して管理できます。

 iTunes ConnectやGoogle Play Developer Consoleと比べて、カテゴリー内でのランキングを時系列で把握できる、評価レビューを一括でダウンロードできる、スマートフォンアプリがある、といったメリットもあります。

App Annieで得られるデータ

 App Annieには無料/有料会員があり、無料会員の場合は以下のデータを取得できます。

  • ダウンロード数
  • 売上
  • 配信カテゴリー内でのランキング順位
  • 国別のダウンロード数
  • アップデート数

App Annieの管理画面

 有料会員では、上記に加えて、

  • 複数マーケットでの他社アプリのダウンロード数
  • 他社アプリのマーケット上の売上(有料アプリやアプリ内課金が対象)
  • 配信マーケット上のカテゴリー上位が1日にダウンロードされる数
  • 国別のカテゴリー別ダウンロード数や売上額

などのデータが取得できます。

エキサイトにおけるApp Annieの活用法

 App Annieを使うとさまざまなデータが取得できますが、エキサイトのチームでは主に次のように使っています。

ランキングの変動と施策の効果

 「ランキング推移」の項目を選択すると、カテゴリーランキングと全体ランキングの推移を観測できます。最大2週間以内であれば、時間軸でもランキングの推移をチェックできます。

App Annieのランキング推移

 上の画面を見ると、iOS版「エキサイトニュース」は、普段は20位前後で推移していましたが、4月22日以降に急降下しているのがわかります。広告出稿を一時停止したことが原因で、ダウンロード数が通常よりも少なくなり、順位を落としています。また、アプリのアップデート時に、バグが発生していたこともわかりました。ランキングの変動は毎日確認しましょう。

アプリの満足度向上

 ユーザーレビューは、iTunes ConnectやGoogle Play Developer Consoleでは画面上で見るしかありませんが、App Annieを使うとCSVファイルとして一括してダウンロードできます。アプリに対する満足度/不満足度の内容を見やすく加工しておけば、次のアップデートの参考になります。

 また、バージョン別/国別/評価別に取得するデータの範囲を絞り込めるので、バージョンごとの評価の違いを比較し、アップデートの効果を分析する、といった使い方もできます。アップデート後の満足度が高ければ、既存ユーザーに対してアップデートを促す施策を実施するのもいいでしょう。

日次の定点観測はアプリでチェック

 App Annieにはスマートフォンアプリが用意されているので、アプリのダウンロード数や売上をスマートフォンですぐに確認できます。アプリ版はすべての機能を搭載しているわけではありませんが、レポートを見ることに特化したアプリになっており、外出先や打ち合わせの際に便利です。

 担当するアプリをFavorite登録しておき、直近のダウンロード数やランキングの推移をスマートフォンから定点観測すると、通勤時や時間が空いたときにこまめにチェックできます。

アプリ版App Annieのキャプチャ

 今回は、App StoreやGoogle Playといった配信プラットフォームから提供される情報の見方と、サードパーティが提供するアプリマーケット分析ツール「App Annie」の基本的な使い方を紹介しました。さまざまな数値を確認できるので眺めているだけでも面白いですが、アプリが「広める」「使われる」ためにはダウンロード数の変動やランキングの推移をいち早くキャッチし、原因や対策を考えます。

 またデータをもとに、自社アプリの現状や強み弱みを社内で共有すると、強みを活かす方法を模索したり、弱みを改善する策をアプリ開発者以外にもアドバイスをもらったりできるでしょう。

 次回は、ユーザーの利用状況を細かく分析できるツールを事例とともに紹介します。


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