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渡辺由美子の「誰がためにアニメは生まれる」 ― 第33回

『Wake Up, Girls!』プロデューサー田中宏幸氏インタビュー

アニメは接客業である――エイベックスが声優を育てる理由

2014年06月13日 17時00分更新

文● 渡辺由美子(@watanabe_yumiko

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(C) Green Leaves/Wake Up, Girls!製作委員会

お客様への届け方を考える
山本監督「最初から満員とかやめてくださいね」

―― 新人声優はどのように選出したのでしょうか。

田中 オーディションですね。2012年の9月から年末まで3ヵ月ほどかけて仙台、福岡、名古屋、大阪、東京と全国5ヵ所をぐるっと回りました。

 山本監督には“女の子たちとキャラクターが重なるように”という構想がありましたので、選出した7人に合わせてキャラクター名の読みを同じにしたり、7人がレッスン中やイベントなどで見せていく個性をキャラクターに加えてみたりと、本人とキャラクターが重なる部分とそうでない部分を共存させつつ調整していきました。

―― 山本監督と意見の違いは出ましたか。

田中 声優とアイドルの棲み分けみたいなところは、かなり議論をしました。山本監督はアイドルもアニメも好きなので、両方をハイブリッドで考えられる方なのですけれど、方向性としてはアイドルに近くなります。

 一方、僕はコンサバに声優にしたいと思っていたので、対立はまったくないのですが、監督との会話のなかで、アニメの内容と、僕のほうで扱う企画や宣伝ですみ分けをしながらバランスをとって動きました。

―― WUG!のメンバーは新人ぞろいで、作品もオリジナルですから、認知度ゼロからのスタートだったと思います。時間制限のあるなかで、お客様に知ってもらうためにどのような仕掛けを作ったのでしょうか。

田中 確かにアニメ自体は2014年1月から3月までの1クール(全13話)ですから、助走期間は短いですよね。そこで、放映開始をブレイクポイントとして捉え、放映前から定期的にイベントを開催しました。

 具体的には、2013年7月開催のワンダーフェスティバルで初お披露目のミニライブ、8月にはコミックマーケット84で握手会、そして9月から年末までは毎月ショーケースイベント、2014年1月の劇場版(『Wake Up, Girls!七人のアイドル』)公開からは、全国で試写会の劇場をステージに見立てて多くのイベントをやっていきました。

『Wake Up, Girls!』で行なわれた挑戦

・主役声優7名を日本各地でオーディション
・選出メンバーを“歌とダンスができる声優”としてイチから育成
・キャラクターに声優の個性を重ね合わせた上でのアニメ制作
・主役声優全員参加の全国縦断イベント敢行

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―― なぜ劇場版まで大展開されたのですか。

田中 オリジナルということもあり、事前にある程度知られているとか、原作ファンがいらっしゃるといった状態からではないので、何かインパクトを付けて差別化しないと、負けちゃうなと。

 それに劇場ってイベント性があるじゃないですか。何と言ってもハコですから。

―― 試写会場というより、アイドルのライブ会場のような雰囲気を作りたかった?

田中 もともと山本監督と「劇場をライブ会場に見立てることで、(ファンが)ライブツアーを追いかけているような感覚で劇場を回れるといいね」と話していたこともあり、舞台挨拶は結構やりましたね。2月にはチョコレートお渡し会付き試写会なんてのも。もはや試写じゃないな、何て言えばいいのだろう(笑)。

「放映半年前のお披露目ライブを皮切りに、毎月コンスタントにお客様とのコミュニケーションの場を作りました」(田中プロデューサー)

―― 認知度を上げるためにアニメ放映より前から仕掛けていたのですね。2013年9月から年末にかけての“ショーケースイベント”という言葉は聞き慣れないのですが、これはどういったものでしょうか。

田中 新人声優のレッスンの様子や成果を見てもらうイベントのことをそう呼んでいました。7人が朗読と歌、フリートークをやって、未発達なところもありつつ、1回目より2回目、2回目より3回目が成長していることを、共に喜び合おうという感じで、7人の成長過程までお客様と共有できたらと思いました。

―― レッスン中の、まだおぼつかない様子を見てもらうというのは斬新ですね。

田中 他のアーティストさんとは見せ方がまったく違いますね。普通はできるだけ完成形を見せますから。

 しかし山本監督には“アイドルとは物語である”“挫折とそれを乗り越える人間ドラマまで含めて作品である”という考え方がありました。

 通常、僕らが新人をデビューさせるときは、どうやってハコ(会場)をお客様で埋めようかと必死で考えるわけです。WUG!の場合は、デビューライブが秋葉原のTwinBox AKIHABARAというキャパ200人のハコだったのですが、山本監督は「最初は、お客様が3人でも5人でもいいじゃない」と

 むしろそれが後になって“伝説”になるような形でそのままアニメのストーリーに盛り込めればいいからと。「最初から満員とか、サクセスしちゃうのやめてくださいね」って言われたぐらいだったんです。

Wake Up, Girls!のイベント情報ページには「SOLD OUT」の文字が並ぶ (C) Green Leaves/Wake Up, Girls!製作委員会

―― でも、イベントはお金をかけてやるんですよね。しかも完全オリジナル作品で認知度が見込めないからという理由で。にもかかわらず、観客数人からのスタートはすごい賭けですよね。もしかして、単純にお金を儲けようというプロジェクトではなかった?

田中 当然、儲かりはしたいです(笑)。ただ、儲け方のプロセスが違うということですね。先行投資も必要なので。レッスンなどにリソースを割く分、それが良いストーリーになって、アニメで回収できればいいかなと思っていましたね。

 ただ、残念ながら“観客たった5人からのスタート”という伝説にはならなかったのですけれど。1回目からハコは満杯だったので。

―― え、満員!?

田中 はい。ありがたいことにその後のイベントもずっと満員で。4月27日に品川のステラボールでキャパ1800人のライブを開催するのですが(取材時点)、応募券が必要な申し込みなのに、応募がおよそ6000通届きました。ちょっとずつお客様が増えているのかなと感じています。

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