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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第254回

第3世代APUのBeema/Mullinsで更新されたAMDロードマップ

2014年05月26日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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筐体が熱くなったら温度を下げる新技術
STAMP

 今回の話題には直接関係ないが、Mullinsで有効にされた新しい技術がSTAMP(Skin Temperature Aware Power Management)である。Mullinsの場合はタブレットが主要なターゲットになるが、こちらだと放熱は当然タブレットの筐体そのものを経由することになる。この結果、もしCPUが定格内で動作していても、次第に筐体温度が上がって、人間が感じる温度(Tskin)が限界を超えてしまう可能性がある。

Tskin、つまり人間が感じる温度が限界に達するまでは、もうすこしSoCの温度を上げても許容される。ただし、限界に達したら即座に温度を下げないと、ユーザーが使い続けられない

 そこで、このTskinを監視し、これが最大になったらSoCの温度を下げることで、長時間使い続けられるようにするという新しい温度管理の方式である。あるいはアプリケーションによっては、動作周波数をブーストしても効果がないものがある。こうしたものはブーストせずに利用することで電力を抑える仕組みも搭載されている。

Tskinを監視し、これが最大になったらSoCの温度を下げる。逆に言えば、Tskinが限界に達するまでは、SoCの温度が上がってもOKということになる

普通はプロファイルに、アプリケーションのブーストをする/しないを登録することになるが、この説明では電力管理用のマイコンがリアルタイムに振る舞いを監視しながら、ブーストのオン/オフを制御するとしている

セキュリティー専用プロセッサーとして
ARM「Cortex-A5」を搭載

 ところで、先ほどはPSPという名称で説明を行なったが、Beema/MullinsではARM「Cortex-A5」をセキュリティー専用プロセッサーとして搭載している。TrustZoneの説明はARMのサイトを見てもらうとして、要はセキュリティー保護が必要な処理を専用回路で行なうという仕組みである。

Beema/MullinsではCortex-A5をセキュリティー専用プロセッサーとして搭載する。Cortex-A5は、CPUからは専用アクセラレーターとして見えることになる

 当然TrustZoneを利用するためにはOSやアプリケーションの対応が必要になるのだが、幸いにARMは古くからこれを実装しており、TrustZoneに対応した環境は比較的そろっている。いくつかのコンポーネントはAMDが提供する必要があるが、逆にそれだけ提供できれば後はOS類が対応してくれる。

例えばWindows環境の場合、AMDからこのPSPをデバイスとして扱うためのドライバーが提供される形になると思われる

 もっとも、TrustZoneを入れるだけで全面的に安全になるかというとそうではなく、次にアプリケーションの対応も必要になる。とはいえ、まずハードウェアがないとセキュリティーが組めないわけで、そうしたセキュリティーの構築をにらんでの実装になるかと思われる。

出荷が遅れるKaveriと
Puma+ベースになるCarrizo

 さて、Beema/Mullinsの話はこのくらいにして、最後にKaveri/Carrizoの話をしよう。まずKaveriは、当初はもうすこし早く下位の製品(A10-7800やA8-7600、A6-7300/7400K)が登場するはずだったが、6月までずれ込むことになった。これは、GLOBALFOUNDRIESの28nm HPP(High Performance Plus)プロセスの量産があまり順調ではないからで、潤沢に製品が出回るまでもう少し時間がかかるということであろう。

 次がCarrizoで、これは当然ながら前回紹介したProject Skybridgeの一部に該当する。この結果、CPUコアはPuma+ベースになる。となると4コアでは足りないだろうから、6ないし8コアになるだろう。ソケットも、新たにARMコアとの互換性を取るとなると、既存のインターフェースからの移行は考えずに新しいものに変わる公算が高い。

 また、DDR3のサポートがあるかどうかも微妙で、いち早くDDR4に移行する可能性もある。というわけで、このあたりはまだ全然見えないというのが正直なところだ。まもなく開催されるCOMPUTEXでこのあたり多少なりとも情報が出てくるといいのだが。

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