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中小企業のPC/IT保守を月額3000円で――スターティアの戦略を聞く

「どの会社にもいる“PCに少し詳しい人”の代わりに保守を」

2014年05月16日 06時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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 専任のIT担当者を置くことのできない小規模な企業では、“PCやネットにちょっと詳しい人”が本業のかたわらITサポート役を務めていたりする。スターティアの「ネットレスQ」は、その役割を月額3000円という低価格で代行するサービスだ。低価格を実現できた背景、さらにその戦略について聞いた。

従業員20名以下の小規模企業にITサポートを提供

 「どこの会社にもいる、パソコンやITに“ちょっと詳しい人”の役割を代行するサービス」。スターティアのネットワークソリューション事業部 事業部長、平澤有一氏は、同社が中小企業向けに開始した「ネットレスQ」サービスをこう説明する。

スターティア ネットワークソリューション事業部 事業部長、平澤有一氏

 スターティアは、従業員300名以下の中小企業市場をターゲットに、ビジネスホンや複合機の販売や保守などを行う「ビジネスソリューション事業」、クラウド/サーバーレンタルサービスを提供する「ネットワークソリューション事業」、Webアプリケーションの販売や受託開発を行う「ウェブソリューション事業」の3ドメインで事業を展開する企業だ。1996年に設立され、今年2月には東証一部に上場している。

 平澤氏の率いるネットワークソリューション事業部が、現在“イチオシ”するサービスが、冒頭に触れたネットレスQである。平澤氏は、ネットレスQは特に従業員20名以下の小規模な企業を対象にしたサービスだと語る。

 「この規模の企業では、PCやインターネットを使って『Office』やメール、Web、印刷をしたいという比較的単純なITニーズが中心。ただし、専任のIT担当者がいないか、あるいは1人2人でやっているというケースがほとんどだ」(平澤氏)

 だが、今日では中小企業のビジネス活動もIT抜きには成り立たなくなっている。何らかのITトラブルが生じた場合、迅速に解決できなければもたらされる被害は小さくない。さらに、マルウェアやフィッシング詐欺といったセキュリティリスクも、企業規模に関係なく襲ってくる。本業のかたわらで“ITサポート役”を押しつけられているような従業員レベルで対処するには、かなり負担が重いものとなっている。

 かねてから複合機販売/保守などを通じて中小企業の顧客と接点を持っていたスターティアが、こうした変化に着目して始めたサービス、それがネットレスQというわけだ。

「局地戦」と「ワンコール解決率向上」で価格を抑える

 ネットレスQサービスの内容はシンプルだ。顧客オフィスにヤマハのVPNルーターとフォーティネットのUTMを設置し、マルウェア対策やスパムメール対策、URLフィルタリングなどを行う。

ネットレスQでは、顧客オフィスにVPNルーターとUTMを設置。ゲートウェイセキュリティを提供するとともに、リモートでの保守サービスを可能にする

 そして、顧客から「ネットにつながらない」「メールが送信できない」「プリントアウトできなくなった」などのトラブル報告や設定変更依頼を受けた場合は、VPN経由でリモート調査/保守を実施する。現場での保守作業が必要な場合には、顧客オフィスに技術者が駆けつけてオンサイト対応を行う。

電話とリモートサポートのほか、必要であれば追加料金なしでオンサイトサポートも提供するのが特徴

 保守サービスの料金(税抜)は、オフィス内のPCや機器の台数やサポート作業の回数にかかわらず、初期費用なし、月額3000円。オンサイト保守でも追加費用は発生しない。また、ルータとUTMは5年間のリース契約となり、月額1万2000円から2万5000円(セキュリティライセンス込)となっている。

※訂正とお詫び:掲載当初、ルータとUTMの料金を「月額1万2000円」としておりましたが、正確には顧客のネットワーク構成などにより上記の価格幅が生じます。お詫びして訂正いたします。(2014年5月16日)

 大手キャリアなどが提供する同種のIT保守サービスと比較すると、非常に安価な料金設定と言えるだろう。平澤氏は「料金体系をできるだけシンプルに、しかも安くすることにこだわった結果」だと胸を張る。平澤氏は、安価にサービス提供できる理由を2点挙げた。

 1つめは、サービス提供エリアを限定している点だ。東京23区内、大阪、福岡、名古屋、横浜の、同社拠点から1時間で駆けつけられる範囲のみを提供エリアとしている。平澤氏によると、このエリアならば複合機のメンテナンスのために同社エンジニアが常時巡回しており、オンサイトITサポートの提供も追加負担が少ないのだという。

 もう1つは、顧客からのサポート依頼を受けた際、その場でサポートを完了してしまう「ワンコール解決率」の向上だ。一般的には、コールセンターでいったんサポート依頼を受け付け、それをエンジニアに回して折り返しサポート作業などを行うという流れになる。しかしネットレスQでは、コールセンター担当者のサポートスキルの向上を図ることで、ワンコール解決率を約78%にまで高め、無駄を省いている。

中小企業が望む「真のワンストップサービス」とは

 前述のとおり、スターティアではITサービスとは別の事業部で、複合機の販売やメンテナンスも手がけている。しかし、この複合機のサポート受付窓口は、ITサポートと一本化されている。これも同社のこだわりだと平澤氏は説明する。

 「たとえば『PCから書類が印刷できない』というトラブルが発生したとする。ユーザーには、その原因がPCなのか、複合機なのか、あるいはネットワークなのかは切り分けられない。だから、ベンダー側の窓口や担当が別々になっていると、ユーザーは困ってしまう」(平澤氏)

 大手キャリアやIT販社が中小企業をターゲットに同種のサービスを打ち出すなかで、平澤氏は「いかに手厚いサービスを提供するか、しかない」と戦略を語る。そのために提供エリアを絞り、「局地戦に持っていっている」(平澤氏)。

 スターティアでは複合機事業で数千件の顧客を持つが、ネットレスQの目標は「ひとまずその50%」(平澤氏)としている。やみくもに規模拡大を目指すのではなく、着実に顧客の「頼れる相談相手」となることを目指す方針のようだ。

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