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原理的には白熱電球と同じながらも超高速変調可能な新・光通信素子

慶応義塾大学、カーボンナノチューブ黒体放射発光素子を開発

2014年05月14日 19時58分更新

文● 行正和義

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高速変調カーボンナノチューブ黒体放射発光素子

 慶應義塾大学は5月14日、単層カーボンナノチューブを用いてギガビット/秒で超高速変調が可能なシリコン上・高集積発光素子開発に成功したと発表した。

 慶應義塾大学理工学部物理情報工学科の牧英之准教授らの研究で、カーボンナノチューブ薄膜を化学気相成長法でシリコンチップ上に成長させ、薄膜に電極を形成するという簡単なプロセスで作製したもの。素子に電圧をかけるとジュール加熱による黒体放射で発光する。

カーボンナノチューブ発光素子の直流電圧印可時の発光の光学顕微鏡による近赤外カメラ像

 ジュール熱による黒体放射という現象はいわば白熱電球のしくみと同じだが、直径約1nmの微細な一次元物質であるカーボンナノチューブを使い、チューブが基板に接触して放熱する構造を採用することにより、金属フィラメント電球に比べて100万倍以上高速となる1Gbpsの高速変調・半値幅140psのパルス発光に成功した。また、発光の理論的解明を進め、理論上10Gbpsの高速変調も可能であるとしている。

幅0.8~10ns、立ち上がり時間0.7nsの矩形電圧を印可した際の発光素子からの発光時間分解測定の実験(左)とパルス幅 120ps のパルス電圧を印可した際の発光素子からの発光時間分解測定の実験(右)

 現在使われているさまざまな電子デバイスは、トランジスタのような半導体素子ばかりと思いがちだが、光ファイバーによる通信装置以外にも、素子内部で光を送受信するフォトカプラといった光素子が数多く用いられている。光素子のほとんどはLEDと同様な化合物半導体を光源としているが、シリコン上への直接の集積化が難しい点、デバイス作製プロセスが複雑といった問題があった。

 高速変調が可能なシリコンチップ超小型カーボンナノチューブ発光素子の開発により、高集積な光源と光インターコネクト、光・電子集積回路の実用化へ大きく貢献することが期待される。また、非常に短時間のパルス発光が可能なことから、ワンチップの白色パルス光源として微小分析装置などへの応用も考えられるという。

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