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最新ユーザー事例探求第32回

システム構築・運用の自由度やオペレーション負担の軽減を両立

シーポイントがKVHのプライベートクラウドを選んだポイント

2014年05月20日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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地元密着型のブログポータルやレンタルサーバーなどを手がけるシーポイントは、沖縄のデータセンターにKVHのプライベートクラウドを導入。ファーストユーザーとして、電報サービスを手がけるヒューモニーのシステムをクラウドに移行した。

地域密着型のシーポイントのプライベートクラウド導入

 シーポイントは、「インターネットを使って、人とモノの流れを作り出す」というコンセプトの元、レンタルサーバーやショッピングサイト、ブログポータルなど地域密着型のWebビジネス開発を手がけるSIerだ。シーポイント 取締役 沖縄支店長 ネットワークソリューション事業部長 金子泉氏は、「特に『てぃーだ』という沖縄県の情報ポータルは、すでに加入者も10万人にのぼります。浜松市の『はまぞう』というポータルも地元ではナンバーワンです」と語る。現在、本社のある静岡県の浜松のほか、東京、沖縄、北京や香港、バンコクなどにも拠点・事務所を持つ。

シーポイント 取締役 沖縄支店長 ネットワークソリューション事業部長 金子泉氏

 従来、同社では自前でのデータセンター運営を行なっていたが、昨年からKVHのプライベートクラウドを導入した。KVHのプライベートクラウドは、プロビジョニングやモニタリング、サーバや仮想環境の制御、バックアップなどを行なう「KVH Turbine」と呼ばれる独自コントローラーと、サーバーやストレージなどの各種リソースプールで構成される。顧客ごとにリソースを確保できるため、高いセキュリティやパフォーマンスを実現。資産やオペレーションにかかるコストも削減できるという。

 シーポイントの金子氏は、「今まではシステム更改のたびに、お客様資産としてけっこう高価なサーバーを購入していただいていました。これを3~4年ごとにやってもらうのは、今後は難しいと考えました」(金子氏)と語っており、CapEXモデルからOpEXモデルへの移行は必須だった。

ビジネスニーズの変化にいち早く対応するヒューモニー

 サービスのファーストユーザーとして、オンプレミスのシステムをKVHのプライベートクラウドにいち早く移行したのが、電報サービスを展開するヒューモニーである。

 電報といえばNTTのイメージが強いが、総務省から特定親書便取り扱いの認可を得れば、一般企業でもこうしたサービスを展開できる。もともとは長らく営業として電報を使っていた創業者が、形式的で、割高なサービスに疑問を持ち、認可をとって事業を始めたのがきっかけだという。ヒューモニー 取締役 技術部長の伍井倫教氏は、「10年以上に渡り、事業を展開してきましたが、おもに法人のお客様にリピートで使っていただいています。ようやく電報のシェアの1割くらいを得られました」と語る。

ヒューモニー 取締役 技術部長 伍井倫教氏

 ヒューモニーの最大の売りは、低廉な料金だ。「既存の電報は電話で聞き取った文言をオペレーターが打ち込むので、人手の部分でお金がかかります。弊社の場合、お客様がPC等で直接メッセージを入力していただきます」(伍井氏)とのことで、まずはオペレーターの人件費を削減。配送拠点も全国300箇所程度にとどめており、競争力の高いコストを実現しているという。「昨今は冠婚葬祭はもちろんなのですが、人事や入学の祝いなどお客様の“お気持ち”をお届けするといった感じに電報の形態も変わってきています」という。

 このような新しいニーズにいち早く答え、低価格でサービスを提供すべく、ヒューモニーでは、当初からIT化を進めている。具体的には、インターネット経由でユーザーからの電報の内容を受け付け、これらをデータベースに格納。それらを300箇所の配送拠点に振り分け、ラベルやメッセージなどを印刷し、ストックされた台紙に貼り付け、アセンブリした後に現地まで配送するという流れになる。こうした業務フローを実現するヒューモニーのシステムの多くは、シーポイントの沖縄データセンターにおいて運用されてきた。

 本土から遠く離れた沖縄は、IT環境という点でも、さまざまなメリットがあるという。シーポイントの金子氏は、「沖縄はメディアアイランドというIT特区構想が進めており、インフラも充実して、料金も安いのです。地震が少ないというメリットもあったので、ヒューモニー様に沖縄でのハウジングをお勧めしました」と振り返る。こうしたメリットを踏まえ、ヒューモニーではシーポイントの沖縄データセンターをメインサイトとして選定し、2006年からシステムを運用している。

セキュリティとレスポンス重視のクラウド選定

 しかし、事業規模が拡大するのにあわせて、インフラを部分的に増強しなければならなかった。また、3~4年ごとのシステム更新でハードウェアを導入するのは難しくなっている。ヒューモニーの伍井氏は、「新しい機器を導入するたびに、リードタイムが伸び、開発現場でも負担をかけてきました。そこで2012年後半から、もう少し柔軟性の高いインフラが欲しいと考えました」と語る。

 開発現場でも、クラウドのニーズは高かった。オンラインでの受注はもちろん、売り上げや請求、入金引き当て管理、営業向けツールまでヒューモニーのシステム開発を手がけるネットワーク21 常務取締役 長谷川健氏は、「ビジネスも拡大しており、エンドユーザー様からの受発注はWebシステム経由なので、サーバーリソースの需要予測がしにくかった。オンプレミスで制限のあるシステムより、クラウドがよいと考えていました」と語る。

ネットワーク21 常務取締役 長谷川健氏

 今回、ヒューモニーがクラウドの選定で重視したのは、おもにセキュリティの要件だ。ヒューモニーの伍井氏は、「お客様の個人情報や大切なメッセージを扱っていますので、データがどこにあるのかわからない、何か起きたときにまったく制御できないというのは避けたいと思いました」とのことで、コスト面でのメリットを認識しつつも、パブリッククラウドという選択肢は当初からなかったという。

 一方、シーポイントは、KVHのレスポンス品質を評価する。「沖縄はバックアップやDRというイメージが強いので、マネージドサービスの品質が担保できないと、本土とサービス面で勝負できません。マネージドサービスを充実させるには、サービスプロバイダー側のレスポンスや柔軟性が重要でした」(金子氏)と語る。また、アジア進出を図るKVHと戦略的シナジーがあったのも大きい。「今は沖縄中心ですが、われわれも成長市場であるアジア展開を進めています。その点、アジア進出で先陣を切っているKVHとアライアンスを組んでいく方がよいと考えました」(金子氏)とのことだ。

V2Vでオンプレミスからクラウドへ移行

 オンプレミスからプライベートクラウドへの移行は、2013年の年末年始に行なわれた。ヒューモニーのビジネスの根幹を成すミッションクリティカルなシステムになるため、物流がストップする年末年始を狙って行なわれたわけだ。「2009年の更新時にシステムを仮想マシンで組んでいたので、今回はV2V(Virtual to Virtual)でKVHのクラウドに移行しました。実施前にテストもできましたし、KVHさんと綿密に打ち合わせしたので、作業はスムースでした」(金子氏)と語る。ヒューモニーの伍井氏は、「今までに比べて、論理サーバーの立ち上げやリソースの割り当てが柔軟にできるので、新規事業の開発に使っていきたい」と、今後の展開を語ってくれた。

 シーポイントのようなSIerにとっては、自社の資産でデータセンターを運営するべきか、クラウド事業者のサービスを利用すべきかは大きな選択だ。その点について、シーポイントの金子氏は、「自分のやりたいことができるという環境をキープしつつ、インフラは専門のKVHさんにおねがいすることで、この業界の過渡期を乗り切れると思っています」と語る。今後は、導入事例を増やし、共有リソースの割合を高めることで、よりコスト面でのメリットを出せると見込んでいる。

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