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クラウドネイティブな新人に負けない冴えたやり方

気がついたら俺がレガシー?情シス再生への道はkintoneにあり

2014年05月15日 12時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp イラスト●野崎昌子

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クラウドファースト世代のクラウド導入はこれでOK?

 この実績を買われ、キノシタはAMWの営業支援・顧客管理システムの導入プロジェクトを一任されることになった。もともと同社は営業・顧客管理をExcelファイルで管理しており、ファイルサーバーで共有していた。しかし、営業部のアケチ部長が競合他社の事例を社長に話したことで、営業支援・顧客管理システムの導入が一気に本格化したのだ。シバタはキノシタとともに、営業部との会議に臨む。

キノシタ:ということで、先日営業部のアケチ部長からいただいたリクエストを得た結果、外資系の営業管理システムを導入することで進めたいと思います。グローバルでも実績がありますし、販売代理店の方も慣れているとのことで。

アケチ部長:その製品なら名前も知っているぞ。確か競合のB社もあれを使ってけっこうまめに営業しているぞ。

シバタ:先週、他の製品も含めて導入を検討すると言ってたけど、ずいぶん性急だな。既存のデータの活用とか、使い勝手の検証とか、しなくていいのか?

キノシタ:既存のデータは使わず、データベースもクラウド前提にイチから作ってもらいます。使い勝手に関しても、私が販売代理店の人といっしょに検証したので、問題ありません。

シバタ:(大丈夫かなあ)他の製品の選択肢もあるはずだが、検討しなくていいのか? あと部長じゃなくて、現場のヒアリングとか。

キノシタ:先日、製品のセミナーを受けてきたのですが、きっとうちの会社でも役に立ちます。シバタさん、クラウドファーストの時代は情シスもスピードなんです。他社製品の検討とか、現場のヒアリングに時間をかけているから、うちがレガシー情シス呼ばわりされちゃうんですよ。

アケチ部長:営業部としては、いち早く導入して欲しいし、うちが予算出すんだから。まあ、シバタちゃんいいじゃないの。

シバタ:はい。プロジェクトリーダーはキノシタなので、いいのですが……。

現場とのやりとりや検証を十分せずに外資系クラウドを導入。心配だ

 キノシタは確かに優秀で熱意もあるのだが、外資系ITベンダーのセミナーの影響を受けやすいのが玉に瑕だ。「これからはクラウドファーストですよ」「これだからレガシー情シスって言われるんです」が口癖。現場部門の意見を無視しがちなのも、シバタの懸念となっている。実際、すぐにこの懸念が表面化するわけだが……。

外資系クラウドに不満噴出!そのときシバタは?

 こうして外資系の営業支援・顧客管理クラウドを導入したのだが、導入後すぐに不満が噴出した。入力項目が多すぎる、動作が重い、モバイル版が使いにくいなど、サポートを請け負った情シスの電話が鳴りまくる。最初は、「製品に慣れるのは時間がかかりますから……」と高をくくっていたキノシタだが、2週間後には逆に電話がほとんど鳴らなくなった。現場が利用をボイコットし、元の通りExcelでの営業支援・顧客管理を再開してしまったからだ。久しぶりにユーザーからのサポート内線をとったキノシタは、意気消沈している様子だった。

いざ使い始めたら、クレームの嵐だった

キノシタ:営業の人から、「現場をわかってるのか!」と言われてしまいました。

シバタ:なるほど。じゃあ、マニュアルを作って、改めて講習会をきちんとやろうと営業部に提案してみよう。

キノシタ:いや。サポート内容を聞いてみると、やはり製品の仕様で限界のところがあったんです。こちらからベンダーへ問い合わせてみたんですけど、製品がカスタマイズを前提としておらず、業務をシステムに合わせろという考えなんです。

シバタ:もちろん、合わせられたらいいけど、短期間では難しいな。

キノシタ:はい。電子部品は仕様も細かいし、ロットのバリエーションも多くて、割引率もいろいろ。営業部も顧客によってアクティビティが違うみたいで、一律にやるのは乱暴だと言われました。外部の業者を使ってカスタマイズしようとしたら、コストがかかるので、アケチ部長もすっかり腰がひけちゃって。

シバタ:わかった。まずは現場に不満の内容や彼らの期待を聞いてみよう。それから早急に代替案を考えてみよう。

キノシタ:では、さっそくメールで関係者のスケジュール調整を……。

シバタ:なに言ってるんだ! 現場のみんなが困っているんだから、急いでやろう。アケチ部長を捕まえて、現場の意見を聞く場を作ってもらおう!

 ということで、シバタはさっそく動き始めた。まずはアケチ部長に協力を申し込んで、営業部からの不満や要望をきちんと聞く場を設けた。サポートには使い勝手の不満が多く集まっていたが、面と向かって話を聞いてみると、営業部のメンバーは必ずしもクラウドに否定的じゃないことがわかった。Excelファイルを共有すると、同時に編集できず、組織ごとにうまく管理できない。これは以前から営業部内でも問題になっていた。しかも、件数が増えてきたため、検索にも時間がかかり、ファイルが分散するため、セキュリティにも問題があったという。

(次ページ、クラウド時代に情シスだからできること)


 

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