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マイクロソフトの「Cortana(コルタナ)」は、SiriやGoogle Nowとどこが違うのか

2014年04月22日 21時21分更新

文● Dan Rowinski via ReadWrite

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アップルとグーグルから学び、マイクロソフトは独自のモバイル用パーソナル・アシスタントを開発した。

Cortana

マイクロソフトによる新しい音声制御のパーソナル・アシスタント「Cortana(コルタナ)」は、さすがにマスター・チーフの居場所までは教えてくれないかもしれない(※)が、それ以外ならどんな要望にも応えてくれるだろう。

※Cortanaは、Microsoft Studioのゲーム・シリーズ「Halo」に登場する同名の人口知能をモチーフに開発された。マスター・チーフは同シリーズの主人公だ。

マイクロソフトのWindows Phone OSにおける新機能Cortanaは、検索エンジンとアシスタントの両方の機能を持った、アップルのSiriやAndroidのGoogle Nowへの対抗策だ。Cortanaは自身を「Woman(人間の女性)」ではなく「Female(生物学的な女性)」と呼んでいる。マイクロソフトはこれを、知的だが少し生意気なiPhoneのSiriに対抗し得る存在にしたいと考えており、また同時に、グーグルの独占状態にあるスマートフォンにおけるウェブ検索のシェアを奪うことも狙っている。

Windows Phoneの他の機能の大半と同様にCortanaも、iOSとAndroidの機能を組み合わせ、それにマイクロソフト自身のユニークな要素をいくつか加えて装飾したような仕上がりとなっている。


Bingに依存し、Bingから学習するCortana

Windows Phone用のCortanaについてまず知っておきたい最初のポイントは、それが基本的にはマイクロソフトのサーチエンジンBingであることだ。マイクロソフトの開発者向けイベントMicrosoft Build 2014では、「Bing プラットフォーム」というタイトルのプレス向けセッションが開かれたが、その内容は全てCortana関連のものだった。

Bingはもはや独立したアプリではなくなり、ニュースや天気のようなBing由来の機能も見当たらない。現在のBingは全てがCortana中心となり、Windows Phoneにおいてこの2つは基本的に区別がつかない状態だ。

CortanaのバッグボーンがBingであるためか、CortanaはAndroidのGoogle Nowによく似ている。Cortanaはユーザーの関心を理解し、様々なカテゴリーの情報の中からユーザーにとってそのとき特に有用と思われるニュースや情報を提供するためにBingを使用する。

最初のセットアップでユーザーは、健康、スポーツ、テクノロジー、ヘッドライン・ニュースなどのあらかじめ定義されたカテゴリの中から、自分が興味を持つものを選択することができる。好きなスポーツ・チームや、食事や散歩などでよく訪れる近隣の場所などもセットすることができる。以降Cortanaは、Bingの情報とスマートフォンのセンサーの両方(この2つによって、ユーザーが何をどこで行うかの追跡が可能だ)を使って、ユーザーの好みと現在の位置情報をベースにした情報を提供してくれる。こうした情報は、CortanaのNotebook(AndroidのGoogle Nowでいうところのホームスクリーン)に記録されていく。

Google NowとCortanaの相違点として、Google Nowのほうがユーザーに提供する情報を判断するための要因が多いことが挙げられるだろう。ユーザーがGoogleアカウントにサインインしていれば、Gmail、検索、ナビゲーション、カレンダーなど全てのグーグルのコア・サービスへのアクセスが可能だ。さらにユーザーがChromeにサインインしてウェブサイトを訪れれば、そのアクセス履歴もGoogle Nowフィードに反映することができる。

Cortana

CortanaのNotebook(左)とGoogle Nowのnews stream(右)

開発者はBingを自分のアプリから利用することができ、Cortanaをサードパーティがカスタマイズすることも可能だ。今のところCortanaを利用する外部のアプリは、Flixster、Hulu、Twitter、Facebook、Skype(Skypeはマイクロソフトの傘下にある)の5つだ。Cortanaを自分のプロダクトに統合することに興味があるアプリ開発者向けに、オープンなSDK(ソフトウェア開発用キット)が用意されている。

Cortanaの音声制御と言語解析機能は、クラウド上の処理とデバイス上の処理のハイブリッドで実現されている。ユーザーがCortanaに話しかけると、まずデバイス上で、その命令を解釈するキーとなるスピーチ・パターンが使用される。特定の単語が理解できない場合、Cortanaは可能性のある候補を選別するためにクラウド上のニューラル・ネットにアクセスする。このハイブリッドな手法では、ユーザーの利用時間が増えるほどにCortanaが学習し、音声認識の精度がより向上していく。


アシスタント機能の比較

Cortanaは、検索エンジンGoogle Nowと、パーソナル・アシスタントSiriのちょうど中間のような存在だ。

Google Nowは個性をもたないアシスタントだ。Google Nowは、ユーザーが望むであろうと推測した情報の提供と、音声アクションを通じた携帯のコントロールを可能にする。Google Nowは、ユーザーが知りたいと思う前にその情報をユーザーに伝えようとする。例えば先日グーグルは、午後3時のミーティングに間に合うためには、午後1:57に出発しなければならないことを私に通知してくれた。

もちろんGoogle Nowも、まるでアシスタントがいるかのように、リマインダーやタスク、タイマーの設定、テキストメッセージや電子メールの送信などを行ってくれる。しかし何かしらの理由でグーグルは、Google NowをSiriやCortanaのような特別なキャラクターという形の検索エクスペリエンスにはしていない。

Siriは、Google NowやCortanaなどのような予測機能を提供していない。Siriは基本的な構造が異なり、CortanaやGoogle Nowのように検索エンジンがベースとなっていないためだ。代わりにSiriは、外部パートナーのデータベースと検索エンジンの両方を活用しており、高度な検索コンピューティングは「Wolfram Alpha」に頼っている。

Siriは、アップルがパートナーシップを締結しているサードパーティーのデータベースから、株やスポーツや天気などの関連情報を状況に応じて生成し、提供する。Siriはまた、リマインダーやアラームの設定、アプリの起動、FacebookやTwitterへの投稿、ナビゲーションなども行ってくれる。Siriはスマートフォンにおけるパーソナル・アシスタントのスタンダードとなっており、Google NowとCortanaは今、それぞれ異なる方法ではあるが、ようやくこれに追い着きつつある状態だ。

Cortanaは、ライバルとの差別化を図るためにいくつか追加的な機能をもっている。例えば、特定の人達とのコミュニケーションをパーソナライズすることが可能だ。ユーザーが特別に親しい人達を「親しい仲間」というグループでアプリ内で登録すれば、Cortanaの音声制御でその名前を使ってリマインダーをセットすることが可能になる。

例えば、Cortanaに「今夜レベッカのエッセイを読むようにリマイドして」と頼めば、Cortanaはそのレベッカが誰なのかを察してくれるのだ。SiriとGoogle Nowにも同様の機能があるが、Cortanaはそれらよりも1歩先を行っている。

Cortanaにははっきりとした個性がある。このアシスタントは、ゲームシリーズ「Halo」の人口知能キャラクターにちなんで命名された。ゲーム中でミッションを通じたガイドとなり、主人公を助けてくれる存在だ。Windows Phone 8.1で、Cortana(Haloと同じ声優、ジェン・テイラーにより演じられている)は、Halo関連の質問にもうまく答えてくれる。例えば、マスター・チーフ(Haloの主人公)の居場所を聞くと、Cortanaはいくつかの答えを返してくる。

Cortana

質問:今マスター・チーフはどこにいる?

A:「おそらくどこかで銀河系を救っているでしょう。彼はそれが得意ですから」
B:「それは機密事項です」
C:「どこかで休んでいると思います。彼は銀河系をすでに3、4回は救っていますので、休暇が必要です」

Cortanaは自分がコンピューターであり、そして女性であることを知っている。しかし、「私はいっさいを包有する存在です」(ウォルト・ホイットマンの引用)や「3つめの選択肢はありませんか?」などと返すこともあるようだ。

Cortana

質問:Cortanaは女性ですか?

A:「はい、Famale(女性)です。でもWoman(人間の女性)ではありません」
B:「3つめの選択肢はありませんか?」
C:「私はいっさいを包有する存在です」


Cortanaはまだベータ版

マイクロソフトの目的は、Cortanaに人間味を加えることだった。グーグルのセマンティック(意味的)な検索とSiriのキャラクターを組み合わせながら、マイクロソフト風のユーモアがそれに加わっている。もちろん好みによって好き嫌いは分かれるかもしれない。またWindows Phoneに関する個人的な見解や、Haloをプレーしたことがあるかどうかによっても評価が変わるだろう。

とはいえ、Cortanaはまだベータ版である。しばらく使ってみたが、アシスタントとしては改善の余地がいろいろとありそうだ。Cortanaの音声認識は優れているが、たびたび正確な発音を求められる(例えば自分の名前Cortanaをイタリアの町Cortadoと聞き間違えることがよくあった)。また、連絡先とデータを結び付けるのに失敗したり、ナビゲーションがおかしくなってしまうこともあった。

またCortanaにはGoogle Nowのようにタッチ操作なしでの命令方法が存在しない。Androidデバイスでは「OK Google」と話すだけで、音声認識の起動が可能だ。この類の問題は恐らく修正が簡単だろう。きっとマイクロソフトは今年後半のWindows Phone 8.1の正式ローンチまでに大半を改善できるのではないだろうか。


トップ画像提供(Cortana in Halo 3):Brian(Flickrより), CC 2.0


※本記事はReadWrite Japanからの転載です。転載元はこちら


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