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50代おじさんもLINEで営業報告

2014年04月23日 16時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)/アスキークラウド編集部

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土井電機は老舗電機メーカーで、現社長は3代目。営業報告はPCのメールソフトではなくスマホのLINEを使わせている。先代と会社を支えてきた会計担当者が退職したのをきっかけに、会計勘定系システムもクラウド化に踏み切った。理由は便利さではなく、意志決定までにかける時間を短縮できるからだという。

 「A社、訪問しました。まずは見積もりからとのお話でしたので……」

 取引先からの帰り道、営業マンがスマホで「LINE」を立ち上げ、営業報告を打ちはじめる。

 都内の中小電機メーカー、土井電機の土井信幸社長は、最近こうした風景が「珍しくなくなった」と言う。土井社長自身、税理士とのやりとりにはメールよりFacebookを使うことが多い。「LINE(の営業報告)は50代でも抵抗ない。最近うちみたいな規模の会社はどこでもFacebookくらい使っている」(土井社長)。

 ソフトからサービスへ。土井電機は会計勘定系システムもクラウドの「ClearWorks」に切り替えた。

 グループ全体で出していた管理会計は、細かく事業ごとに出すように変えた。「以前は『経営者感覚で分かっているからいい』というのもあったし、銀行提出上もそれでよかった。事業自体も潤ってたので間に合っていた」(土井社長)。だが、クラウドを導入した最大の理由は数字だけではない。速度だ。

 「(従来の仕組みでは)展開スピードについていけない。税理士との打ち合わせも『数字は今度会ったとき』ではダメ。クラウドならすべて机の上でやりとりできる。銀行に対しても(財務諸表は)『クラウド見てくれ』とはいわないが、それだけ経営速度があがっていることは評価されている」(土井社長)

 アンテナやヒューズなどの製造から始まった土井電機だが、ここ数年、地域の高齢化など事業環境の変化に伴って、業態転換を進めている。わずか1年半のあいだに介護と美容鍼灸の事業を立ちあげたが、「機能訓練型の介護施設を立ちあげたとき、数ヶ月後に2~3店舗が後追いで出来た。(介護施設は)地域にくさびを打つのが何より重要で、いちはやく上げた方が勝てる」(土井社長)。

 素早くデータを集め、意志決定できた会社が勝てるというのは、今も昔も変わらない。これは土井電機だけの話ではない。資本や人材に限りはあっても、時間はすべての会社に平等だ。LINEで営業報告をさせるのも同じ背景による。取引先の状況や知識をリアルタイムに共有していれば、より効率的に営業できる。営業先が遠方の場合、スマホで確認をとれれば直行直帰をさせやすくなるという側面もある。

 だが、懸念はある。もともと業態として通信に強い土井電機と違い、情報系のリテラシーが低い企業は多い。メッセージの誤送信による情報漏えいリスクもあり、メールと異なりコミュニケーションの履歴をたどりづらい「LINE」のようなツールを手放しで導入しても本当にいいのだろうか?

 4月24日発売の「アスキークラウド2014年6月号」では、クラウド化が進むオフィスが抱えはじめた問題を情報システム(情シス)目線で切っていく。本当に会社に必要なのはクラウドなのか、それとも情報システム部門なのか?

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