野田さんの短編を元にコラボ動画が制作され、ニコニコ動画にアップされるといったことも。瞬時にクオリティーが判別できない小説の場合、知名度や表紙の力は大きいため、このようなコラボ動画は部数の後押しにつながる。 |
野田さんの名前をpixivとニコ動でも見掛ける理由
イラストやPVでのコラボが知名度拡大につながる
―― 最終的に紙の本として作品を販売されるわけですが、そこに至る過程では、小説投稿サイトや、pixiv、ニコニコ動画を経て、まず読者を獲得していくそうですね。
野田 「はい。いまは僕のサークル名『劇団文七』やペンネーム『野田文七』を知ってくれている方も増えているので、最初から紙の本を出すこともあるのですが、初期には、そういったサービスを通じてまず自分の作品を知ってもらうことから始めました。
最初に東方の創作小説投稿サイト「Coolier - 新生・東方創想話」(以下「創想話」)への作品の投稿です。
もちろん自分のブログなどで作品を発表することは可能ですが、魅力なのは読んでくれた人がポイントを付けてくれる点ですね。たくさんの作品が投稿されている(2014年4月13日時点で17857作品)のですが、ポイントが加算されていくと読んでもらえる可能性が高まっていきます(野田さんの作品一覧)。
また、評判になると、ネット上の掲示板で話題になることも多く、そこで作品を知ってもらうことも多いようです。もちろん、批判的な声も寄せられることもありますが(笑)。
会社勤めをしながら小説を書き始めたのが2008年、そこから紙の本で同人小説を販売するようになるまで、2年くらいはこうやって小説の投稿を続け、少しずつ存在を知ってもらっていきました。
そうしているうちにpixivやニコニコ動画のクリエイターさんたちが、作品の絵や動画を作ってくれるようになり、作品を目にする場所がさらに増えていきました」
―― それは自然にそうなったんですか?
野田 「自分から働きかけたこともあります。紙の本(『こいしよこいしなぜ踊る』が収録された『お伽噺わんだ~らんど』)を出したときに、Twitterを通じて動画作者のkamSさんに半ばファンレターのような感じですが、『良かったら僕の作品を読んでください』という感じでメンションを送ったんですね。
そうしたらDMで住所を教えていただいて、ビックリしつつも本をレターパックで送ったりということもありました。
それで作品を気に入っていただいて、『pixivにイラストを描いてみますね』ということになって。その後、手書き動画も作っていただいてニコニコ動画にアップされています。
この動画はおそらく当時5万視聴くらい再生数があったと思います。そして、キャプションでも僕の小説について触れていただいたので、多くの人に知っていただく機会になってとても嬉しかったですね。
この作品を収録した短編集を紙の本としてイベントで販売したところ、用意した部数は100と少なかったものの、2回のイベントを経て大半を売り切り、手応えを感じた記憶があります。原価が5万円掛かっていますので、1冊600円ですから、旅費も考えるとトントンか赤字、というところではありますが(笑)。
また、動画作者の生パンさんは、創想話で僕の短編(メリーの悪夢)を読んで、イベント(大阪での『東方紅楼夢』)にまで足を運んでくれたんです。
そこでお話しすることができて、その後やはりイラスト、そして動画も投稿いただきました。
これ以降は、絵師さんなどへ直接こちらからお声がけすることが増えたのですが、振り返ってみると小説を書き始めたころは、創想話、pixiv、ニコ動、そしてクリエイターや読者の方とコミュニケーションが取れるTwitterがあったからこそ、今の展開に繋がっているとあらためて思いますね」
この連載の記事
-
第102回
ビジネス
70歳以上の伝説級アニメーターが集結! かつての『ドラえもん』チーム中心に木上益治さんの遺作をアニメ化 -
第101回
ビジネス
アニメーター木上益治さんの遺作絵本が35年の時を経てアニメになるまで -
第100回
ビジネス
『THE FIRST SLAM DUNK』で契約トラブルは一切なし! アニメスタジオはリーガルテック導入で契約を武器にする -
第99回
ビジネス
『THE FIRST SLAM DUNK』を手掛けたダンデライオン代表が語る「契約データベース」をアニメスタジオで導入した理由 -
第98回
ビジネス
生成AIはいずれ創造性を獲得する。そのときクリエイターに価値はある? -
第97回
ビジネス
生成AIへの違和感と私たちはどう向き合うべき? AI倫理の基本書の訳者はこう考える -
第96回
ビジネス
AIとWeb3が日本の音楽業界を次世代に進化させる -
第95回
ビジネス
なぜ日本の音楽業界は(海外のように)ストリーミングでV字回復しないのか? -
第94回
ビジネス
縦読みマンガにはノベルゲーム的な楽しさがある――ジャンプTOON 浅田統括編集長に聞いた -
第93回
ビジネス
縦読みマンガにジャンプが見いだした勝機――ジャンプTOON 浅田統括編集長が語る -
第92回
ビジネス
深刻なアニメの原画マン不足「100人に声をかけて1人確保がやっと」 - この連載の一覧へ