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まつもとあつしの「メディア維新を行く」第41回

セルフパブリッシングの未来(1)

同人小説で食べていく――野田文七さんの場合

2014年04月26日 15時00分更新

文● まつもとあつし

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野田さんの短編を元にコラボ動画が制作され、ニコニコ動画にアップされるといったことも。瞬時にクオリティーが判別できない小説の場合、知名度や表紙の力は大きいため、このようなコラボ動画は部数の後押しにつながる。

野田さんの名前をpixivとニコ動でも見掛ける理由
イラストやPVでのコラボが知名度拡大につながる

―― 最終的に紙の本として作品を販売されるわけですが、そこに至る過程では、小説投稿サイトや、pixiv、ニコニコ動画を経て、まず読者を獲得していくそうですね。

野田 「はい。いまは僕のサークル名『劇団文七』やペンネーム『野田文七』を知ってくれている方も増えているので、最初から紙の本を出すこともあるのですが、初期には、そういったサービスを通じてまず自分の作品を知ってもらうことから始めました。

 最初に東方の創作小説投稿サイト「Coolier - 新生・東方創想話」(以下「創想話」)への作品の投稿です。

東方の創作小説投稿サイト「Coolier - 新生・東方創想話」

 もちろん自分のブログなどで作品を発表することは可能ですが、魅力なのは読んでくれた人がポイントを付けてくれる点ですね。たくさんの作品が投稿されている(2014年4月13日時点で17857作品)のですが、ポイントが加算されていくと読んでもらえる可能性が高まっていきます(野田さんの作品一覧)。

 また、評判になると、ネット上の掲示板で話題になることも多く、そこで作品を知ってもらうことも多いようです。もちろん、批判的な声も寄せられることもありますが(笑)。

 会社勤めをしながら小説を書き始めたのが2008年、そこから紙の本で同人小説を販売するようになるまで、2年くらいはこうやって小説の投稿を続け、少しずつ存在を知ってもらっていきました。

 そうしているうちにpixivやニコニコ動画のクリエイターさんたちが、作品の絵や動画を作ってくれるようになり、作品を目にする場所がさらに増えていきました」

―― それは自然にそうなったんですか?

野田文七名義での最初の短編集『お伽噺わんだ~らんど』

野田 「自分から働きかけたこともあります。紙の本(『こいしよこいしなぜ踊る』が収録された『お伽噺わんだ~らんど』)を出したときに、Twitterを通じて動画作者のkamSさんに半ばファンレターのような感じですが、『良かったら僕の作品を読んでください』という感じでメンションを送ったんですね。

 そうしたらDMで住所を教えていただいて、ビックリしつつも本をレターパックで送ったりということもありました。

 それで作品を気に入っていただいて、『pixivにイラストを描いてみますね』ということになって。その後、手書き動画も作っていただいてニコニコ動画にアップされています。

 この動画はおそらく当時5万視聴くらい再生数があったと思います。そして、キャプションでも僕の小説について触れていただいたので、多くの人に知っていただく機会になってとても嬉しかったですね。

作品展開を振り返ると、ソーシャルサービスの存在は欠かせなかったという

 この作品を収録した短編集を紙の本としてイベントで販売したところ、用意した部数は100と少なかったものの、2回のイベントを経て大半を売り切り、手応えを感じた記憶があります。原価が5万円掛かっていますので、1冊600円ですから、旅費も考えるとトントンか赤字、というところではありますが(笑)。

 また、動画作者の生パンさんは、創想話で僕の短編(メリーの悪夢)を読んで、イベント(大阪での『東方紅楼夢』)にまで足を運んでくれたんです。

 そこでお話しすることができて、その後やはりイラスト、そして動画も投稿いただきました。

 これ以降は、絵師さんなどへ直接こちらからお声がけすることが増えたのですが、振り返ってみると小説を書き始めたころは、創想話、pixiv、ニコ動、そしてクリエイターや読者の方とコミュニケーションが取れるTwitterがあったからこそ、今の展開に繋がっているとあらためて思いますね」

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