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松村太郎の「西海岸から見る"it"トレンド」 第34回

カリフォルニアの渇水対策とシャワーヘッドの新調について

2014年04月17日 17時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura

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人の顔より大きな、巨大すぎるシャワーヘッド「Oxgenics Vortex」。湯船に浸かる文化があまりない上、カリフォルニアは極度の水不足。節水しながらバスタイムを楽しむには、と探しているうちに出会いました

 カリフォルニアというと、ビーチ、水着、サーフィン、というイメージが強いのですが、それはロサンゼルスや更に南のサンディエゴがしっくりきます。サンフランシスコは北カリフォルニアというエリアで、グッと気温は下がります。年に数日間は内陸部の熱気が押し寄せて35度を超える日がありますが、冬は0度近くまで気温が下がる日があり、春から秋までは最低気温15度、最高気温20~25度ほどのカラリとした気候が続きます。

 夏場も安定して天気が良いのは、シリコンバレー方面と筆者が住んでいるサンフランシスコの対岸、サウスベイ、イーストベイと呼ばれる、ベイエリアの南部、東部の話です。サンフランシスコでは夏は霧の影響が出やすく、気温はまったく上がらなくなってしまいます。そうなると夏でもセーターやダウンがありがたくなるほど。コンパクトでカバンの中にも入るユニクロのウルトラライトダウンがぴったりで、こちらでも好んで着ている人が増えてきました。

 サンフランシスコ周辺のベイエリアでは、春から夏、秋にかけてはほとんど雨が降りません。シリコンバレーで起業する1つの要素に天候の良さを上げる人もいるほど。毎日が青い空だと、少しくらいビジネスに失敗しても、また頑張ろうと気分を沈ませずに済むというものです。

UC Berkeleyでの一コマ。冬まで、こうした良い天気が続きます

カリフォルニア州では
水不足が深刻化する異例の事態

Image from Amazon.co.jp
カリフォルニア水銀行の挑戦―水危機への“市場の活用”と“政府の役割”

 しかし、天気が良すぎるのも困りものです。今年のカリフォルニア州は異例の渇水にあえいでいます。報道では500年に1度といわれるほど、雨や雪が少ないといわれています。ちょうどベイエリアから3~4時間クルマで内陸に走ったところに、スキーリゾートがありますが、このエリアの冬の時期の雪も劇的に少なく、結果的に春以降の水不足に陥りろうとしています。

 カリフォルニア州は全米で約15%を占める穀倉地帯でもあり、穀物の供給にも不安が出てきました。オバマ大統領もカリフォルニア州を訪れ、渇水対策への支援を表明するなど、今後影響が長引きそうです。

 カリフォルニア州の水資源に関しては、遠藤崇浩氏「カリフォルニア水銀行の挑戦―水危機への“市場の活用”と“政府の役割”」という書籍が詳しいです。水資源は北カリフォルニアに偏っており、南の大都市であるロサンゼルスへ向けて、北から南へ800kmもの導水路で水を送っているそうです。前回の1987年からの干ばつの際には、水を固定レートで1度取引されるなどの対策が行なわれてきました。

体を洗うときは、シャワーを止めよう?
日本人の感覚では「?」となる渇水対策

 カリフォルニア州では、都市部、農村部ともに20%の節水を呼びかけています。また、南へ水を送るエリアである北カリフォルニアの自治体の中には、節水を義務づける場所も出てきています。例えば、サンタクルーズのレストランでは、客が求めない限り、水の提供を禁止するといったルールを設けているのです。

 州全体を上げた節水の呼びかけに対して、ニュースなどでは節水のテクニックなども採り上げられるようになりました。しかしその中には、日本人の感覚からすると少し首を傾げるものもあります。

 とにかく、蛇口をこまめにひねって水を止めることが呼びかけられています。例えば皿を洗っているときには水を止める。髪の毛や体を洗っているときにはシャワーを止める、洗車をする時にはバケツの水を使う、などなど。こうした情報を見れば見るほど、日本で暮らしていた頃に家庭や学校で口を酸っぱく言われていた、“当たり前のこと”のように聞こえてなりません。

 特に家庭内で節水意識が低いのは、アパートの水の仕組みも影響しているかもしれません。日本の住宅では、各家庭に水道メーターが付いていて、水道代がキチンとカウントされます。ガスや電気の湯沸かし器も同様に光熱費がかかります。そのため、こまめに蛇口を止めるのは、節水だけでなく水道代や光熱費を圧縮する知恵でもあります。

 しかし筆者が住んでいるアパートは、賃料に水道代が含まれていて、引っ越してきた当初びっくりしました。セントラルヒーティングで巨大なボイラーがアパートの建物内に設置されており、お湯の使用料も特にかかりません。つまり日本のようなコスト面での節水のインセンティブは働いていませんでした。

 日本人からしたら当たり前のことを節水のテクニックとして紹介するのも、少し理解できるような気がしました。

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