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インドがソフトウェアにお金を支払い始めた:中国もこの動きに追随するだろうか?

2014年04月16日 20時05分更新

文● Matt Asay via ReadWrite

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パイラシーの問題はまだ解決していないが、アジアの国々がようやくソフトウェアの代金を支払い始めている。

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インドはこれまで、ソフトウェアに対してあまり代金を支払ってこなかった。しかし、Gartner の最新レポートによると状況が変わり始めているようだ。

10%のペースで成長を続けるインドのソフトウェア経済界において、長い間このマーケットに蔓延していたソフトウェアのパイラシー(海賊行為)から脱却する兆しが見え始めている。果たしてこのトレンドは、もう一つの過熱市場、中国でのビジネスを望んでいるベンダーにとって良い兆候となるのだろうか?


ソフトウェア会社にとってインドは強敵だった

インドは長い間、ソフトウェア会社にとって難しい市場だった。IBM や オラクル、アドビあるいはセールスフォースのような老舗企業たちは収益の 10〜20% をアジア太平洋(APAC)地域から得ているが、その収益の大半は少数の顧客に集中しており、「通常、インドが APAC からの利益に占める割合は非常に小さい」、と SAP のプロダクトマネジメントとビジネス開発の担当副社長 Chirag Mehta は述べている

問題の一部はパイラシーによるものだ。欧米諸国では知的財産の伝統が根付いているため、パイラシーの割合は 20〜30% にとどまっている。しかしインドを含む APAC 地域では事情が異なる。知的財産の概念、特に特許に関するインドと米国の間の緊張は、ここしばらく爆発寸前の状態だった。

しかし皮肉なことに、事態は好転しているようだ。少なくともここ10年ほどの間、インドにおけるパイラシーの割合は着実に減少している。2005年(全ソフトウェアの 74% が海賊版だった)から2008年(69%)、さらに2011年(63%)にかけて、インドでのパイラシーは継続的に減っていっているのだ。これはなぜだろうか。また、インドがソフトウェアに対して代金を支払い始めたということは、東洋の他の新興経済も同じように支払うようになるのだろうか。


インドにおけるソフトウェア・ブーム

インドでは PC 用ソフトウェアの 63% が海賊版ではあるが、それでもソフトウェアに対してかなりのお金を注ぎ込んでいる。ガートナーによれば、2013 年のインドにおけるソフトウェアの収益は前年より 10% 増加し、47 億ドルとなった。これは、他の新興ソフトウェア・マーケットと比較すると途方もない成長率だ。例えばロシアの成長率は 8.9%、ブラジルは 7.8%、中国は 7.0%、南アフリカは 6.3% である。

この収益は平等に分配されているわけではない。ガートナーのデータが示すように、複合的な専有ソフトウェアを提供する大企業に集中する傾向があり、地元のソフトウェア企業には簡単に真似できない。

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複合的なソフトウェアが売れていることは分かった。他に何か注目すべき点はあるだろうか?ガートナーの調査ディレクターである Bhavish Sood によると、「インドにおける IT 通信インフラの最近の進歩は、ITソフトウェアと関連サービスの地産地消に対する新たな道を切り開いた」という。これは、パイラシーを防ぐ SaaS(software-as-a-service)のようなネットワークベースのサービスを、もっと容易にサポートできるようにするためのインフラのことを差している。

SaaS を提供している企業にとって、これはゴールドラッシュの到来を意味する。クラウドベースのソフトウェア採用において、APAC が世界をリードする可能性があるのだ。

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IBM や他のソフトウェア企業は、インドにおける情勢がこの APAC のトレンドを証明していることに大きく賭けている


では、中国ではどうか?

インドがソフトウェアにお金を出すようになったという動向は、中国でのビジネスを目指している者たちにとって良い兆しに違いない。

中国におけるパイラシーの割合は、2010 年に失速する以前から減少はしていた。今日の割合は偶然にも10年前のインドと同じである。今後も一夜にして状況が変わるようなことはないだろう。

インドと同様、中国にも高いスキルを持ったエンジニアが大量に存在する。また、インドと同じくオープンソースのソフトウェアの利用率が高く、サポート契約に料金を支払うことは滅多にない。そして、これまたインドと同様に、中国の企業は地元の企業が開発したソフトウェアよりも進歩した、複合的な専有ソフトウェアにお金を支払う傾向があるようだ。

しかし問題は、中国が誰からソフトウェアを手に入れるかではない。中国がソフトウェアに対して代金を支払うかどうかだ。

答えはおそらく「イエス」だ。ソフトウェアそのものというより、技術的なサポートに対して、中国は代金を支払うだろう。

サポート契約を販売しているオープンソース・ベンダーにとって、中国は絶好のターゲットに見えるかもしれない。しかし、外国企業が中国内で競争するのは厳しいのだ。政府のサポートと、国内ビジネスのニーズに対する深い理解のおかげで、中国のソフトウェア企業は 1990 年台から 2000 年台にかけてマーケットを掌握してしまった。こうした中国のソフトウェアは、大規模なカスタマーサポート・チームを通じて24時間体制の多様なサポートを提供しており、外国企業が対抗するのは難しい。

中国のソフトウェア・マーケットでお金を儲ける別の方法は、ハードウェア・アプライアンス(例えば、Huawei の SAP HANA アプライアンス)やホスティングサービス(セールスフォースが 2007 年から行ってきたように)を併せて提供することだ。


複合的なソフトウェアか、クラウドか、あるいはハードウェア

中国でお金を稼ぐ条件は、インドでお金を稼ぐ条件とどこか似ている。ソフトウェアは、地元の企業が開発するものよりも複合的であるか、またはハードウェアに焼き込まれたものであるか、あるいは SaaS のようなネットワーク経由でなければならない。

従来のライセンス形式のソフトウェアモデルが世界中で廃れていることを考えれば、西洋のソフトウェアやソフトウェア・サービス・ベンダーは、インドや中国にどんどん参入していかなくてはならなくなるだろう。当然、これらのローカル市場を理解するためにかなりの投資が必要となる。しかし、中国やインドの経済にはそれだけの努力に値する価値を持っているのだ。


画像提供:Shutterstock


※本記事はReadWrite Japanからの転載です。転載元はこちら


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