このページの本文へ

オペレーションは傘下のグローバル企業に統合化

グローバルレディな体制に脱皮しつつあるNTT Com

2014年04月16日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

4月15日、NTTコミュニケーションズは「Global Cloud Vision」のこれまでの取り組みと今後の展開を説明するプレスイベントを開催した。オペレーションを買収したグローバル企業に任せるほか、AWSに追従した料金改定を進めるなど“攻めの姿勢”を堅持する。

クラウドサービスの顧客は倍増へ

 2011年10月に発表されたGlobal Cloud Visionは、企業のグローバル化にあわせたクラウド移行を支援するNTTコミュニケーションズの戦略を表わしたもの。拠点・国ごとに分散したオンプレミス中心のシステムをクラウド/コロケーションに移行することで、企業の経営改革に貢献するという。

NTTコミュニケーションズ代表取締役社長 有馬彰氏

 登壇したNTTコミュニケーションズ代表取締役社長の有馬彰氏は、2011年から倍増した世界共通仕様のクラウドサービス、海外が日本を上回るデータセンターの面積、196カ国/地域で展開しているネットワークサービスなど、Global Cloud Vision発表以降のビジネス展開をアピール。M&Aも順調に進めており、昨年はネットワークの仮想化を手がけるVirtelaやデータセンター事業者のRaging Wire、コラボレーション製品を手がけるArkadinなどを買収し、ソリューションのポートフォリオを拡充した。

M&Aによるポートフォリオの拡充

 こうしたインフラやサービスの拡充を受け、顧客ベースも増加。クラウドサービス(Bizホスティング Enterprise Cloud/Cloud(n))は2012年の2400件から4900件と倍増しているほか、ネットワークサービス(VPN)やマネージドセキュリティサービスのユーザーも着実に増えているという。

クラウドサービスの顧客は一気に倍増

グローバル&クラウド化の事例を披露

 今回は実際のユーザー事例も披露された。クラウドやネットワーク、管理、セキュリティまで幅広く導入した光学メーカーのHOYAは1700台あったサーバーの約70%をクラウド化し、ICTコストを約20~30%削減されたという。ヤマハ発動機はさらにアグレッシブで、生産・調達管理/製品開発/人事財務など基幹の700サーバーの99%をクラウド化。ICTコストを約30%削減できたという。また、全日本空輸(ANA)では「Arcstar Universal One」をベースに音声系の基盤をクラウド化し、従業員が1万7000台の端末で利用しているという。

HOYAではクラウド化でコストを約20~30%削減

99%をクラウド化したヤマハ発動機の事例

 こうしたGlobal Cloud Visionで提供されるバリューとはなにか? 有馬氏が挙げたのは、「通信事業者ならではのネットワークとクラウドの連携強化」「SDNやNFVなどの仮想化の加速」「API機能の拡充など自動化の推進」の3つだ。特に仮想化に関しては、「箱物からサービスへ」という流れの中で、「すべてのレイヤーを仮想化し、ソフトウェア制御できるようにする」(有馬氏)という意気込み。

ICT環境をすべて仮想化し、サービスで提供する

 2014年中には、SDNを活用したデータセンター間でVLANを多重化したり、クラウドとVPNの接続をカスタマーポータル経由で自動化するほか、買収したVirtelaのNFVを活用し、WAN高速化やファイアウォールをArcstar Universal Oneのオプションとしてグローバル展開していく予定。さらに統合API-GWを開発することで、サービスごとに異なる接続形式やデータ書式を統一し、APIの利用ログなども一元的に管理できるようにするという。

買収したグローバル各社にオペレーションを統合

 また、NTT Comグループ全体でサービスの提供を見直し、「ファクトリーモデル」に移行する。従来はサービスやオペレーション、取引やライセンス形態の差異を吸収するため、各国の法人で製造機能と販売機能を持っていたが、これだとスピード感が欠け、取引形態も複雑になっていたという。しかし、ファクトリーモデルの導入により、製造機能と販売機能を完全に分離。グローバルで統一された開発/オペレーション体制に基づいたサービスを製造し、各国の販売組織に卸し売るという形態に変革していく。

ファクトリーモデルの導入イメージ

 グローバルで統一的に提供されているクラウドサービスは、すでにこうしたファクトリーモデルで提供されており、他のグローバルサービスもオペレーションを統合する予定だという。特筆すべきは、オペレーションは日本ではなく、ほとんど買収した海外の企業に任せるという点。たとえば、「Bizホスティング Enterprise Cloud」ではオペレーションをNetmagicに順次統合するほか、Arcstar Universal OneもVirtelaに統合する。セキュリティサービスの「Wide Angle」に関しても、IntegralisとSecodeを統合したNTT Com Securityに統合していく。

データセンターは開設ラッシュ!
クラウドは新機能を次々と

 講演の後半、有馬氏はインフラやクラウド、ネットワーク、アプリケーションなど9つの特徴において、当面の展開を説明した。

 昨年のRaging Wire買収で米国への足がかりを築いたデータセンターに関しては、先頃インドのバンガロールに8番目のデータセンターを開設。2014年4月にはマレーシアのCyberjayaに4番目のデータセンターが開設されるほか、10月には上海の浦東、2015年には香港とイギリスに新データセンター・新規棟が開設される。その後も、日本、米国、タイ、インドなどでデータセンターの開設が予定されており、相当な急ピッチでグローバル化が進んでいる。

今後開設予定のデータセンター

 こうしたデータセンターをベースにしたBizホスティング Enterprise Cloudも、2014年には11カ国/地域、13拠点に拡大。機能面では、顧客のニーズに応えたAPIの拡充を図るほか、低価格なコンピュートやセキュリティ機能、IOPS確保型やSAP対応のストレージサービス、ソフトウェア型のインターネットVPN接続などの拡充を続ける。「Bizホスティング Cloud(n)」は同日付で値下げも実施され、先日のAWSの料金改定に追従した。「どこまでついていけるかわからないが、可能な限りがんばる」(有馬氏)。

Cloud (n)もAWSの値下げに追従

 また、旧電話網の終息にも言及。既存のPSTNのIP/クラウド化を推進し、グローバルにボイス/ビデオコミュニケーションサービスを展開する方向性を明示した。具体的には、外線として使える「Arcstar SIP Trunking」や会議サービスの「Arcstar Conferencing(Arkadin製)」のほか、国内で展開している「Arcstar Smart PBX」や「Arcstar Contact Center」を海外展開を検討するという。

 さらに運用管理に関しては、グローバルに展開する顧客のICTシステムをワンストップで管理する「Global Management One」とAtlas、Emerio、DTS Group、netmagicなど高いスキルのエンジニアチームによる運用を組み合わせる。

 昨年に比べてグローバル対応の進捗は着実に進んでおり、M&Aで傘下に入れた企業のポジショニングもかなり明確化された印象。特にファクトリーモデルへの移行やオペレーションの統合まで踏み込んだ点は、NTT Comの並々ならぬグローバルへの意気込みを感じさせる。とはいえ、調査会社の評価はまだまだ高いとは言えず、顧客ベースも大半が国内企業と課題も多い。こうした中、Global Cloud Visionを掲げた2015年度のクラウド/データセンター事業の収益目標はこれまで通り、2000億円以上を目指す。「年間300億円ずつのプラスなので、けっこう大変だなと実感している」と語る有馬氏だが、今年度も攻めの姿勢を変えず、サービスの拡充を着実に進めていくようだ。

カテゴリートップへ

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ