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自律海洋遊弋ロボットとの連携も実証

JAMSTEC、最新のリアルタイム津波監視システムの試験観測に成功

2014年04月11日 13時56分更新

文● 行正和義

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ベクトル津波計

 JAMSTEC(海洋研究開発機構)は4月2日にチリで発生した地震の際、海洋ダイナモ効果を利用した新型津波監視装置による津波の観測、自律海洋ドローン「ウェーブグライダー」による中継に成功した。

今回有効性を確認できた新津波監視システム

 海底に設置する津波監視装置は、これまで水圧計によって水深を測り、津波の際の海面の盛り上がりを検出していた。新型津波監視装置「ベクトル津波計」は高感度の電磁気検出装置を持ち、海水の流れによって生じる磁場「海洋ダイナモ効果」を測定。地震による微振動や水圧と合わせて津波を監視する。

新津波監視システムは宮城県沖で試験中

 ベクトル津波計による海底観測試験は、2012年11月から約3か月間、四国海盆の海底に設置して実施され、2013年2月6日に発生したソロモン諸島の地震(M8)により発生した津波を捉えることに成功している。今回の宮城沖沿岸に設置して試験中の機材がチリ地震による津波伝播に伴う水位変化、海水の流れ、津波の伝播速度、伝播方向を測定できたという。

米Liquid Robotics製「ウェーブグライダー」は燃料を使わずに自律航行するサーフボード大(全長2m強)の海洋ドローン

 さらに今回、自律型海洋ドローン「ウェーブグライダー」によるデータ中継にも成功した。ウェーブグライダーはフロートと海中ユニットを棒で繋いだ装置で、波による上下運動を海中ユニットのヒレが推力に変え、ソーラーパネルの電力で動く自律航法ユニットで目的地まで航行、あるいは一定の海域に留まる。

「ウェーブグライダー」はGoogle主催の学術研究イベントで半年以上かかったものの太平洋横断にも成功している

 新津波監視システムは、海底のベクトル津波計からのデータを音響信号でウェーブグライダーに伝送し、ウェーブグライダーは電波信号でデータを送って衛星で受信するしくみ。今回の津波で有効性が確認できたという。また、ベクトル津波計とウェーブグライダーによるシステムは設置が4時間で済むなど、機動性の高い監視網が特長という。

チリ地震による津波は紀伊半島沖(南海トラフ付近)に設置され海底ケーブルで陸上基地と繋がっている「地震・津波観測監視システム(DONET)」でも観測されている

 JAMSTECでは、システムの長期運用の信頼性確認のため引き続き3ヶ月程度継続して実施し、運用データに基づいて実用化に向けた研究開発に取り組む。

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