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お客様は給料のいらない従業員

2014年04月12日 07時00分更新

盛田 諒(Ryo Morita)/アスキークラウド編集部

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Amazon Dash

 Amazonがついに「お客様、商品発注端末はいかがですか?」と言ってきた。

 4日、Amazonが発表した「Amazon Dash」(冒頭写真)は、北米の一部地域で展開されているネットスーパー「AmazonFresh」向けに使えるハンディターミナルだ。今のところ利用申請は招待制となっている。

 バーコードリーダーとマイクが組み込まれ、商品のバーコードを読み取るか、マイクに向けて商品名を言うと、ショッピングカートに商品を登録する。毎週のように買っているミネラルウォーターやティッシュペーパーのような日用品を買い足すときに「とても便利だ」とAmazonは言う。

 しかし、公式プロモーションビデオで「なくなった商品をピックアップ」し、「ハンディターミナルで発注処理」している女性の姿は、どう見てもスーパーの店員だ。Amazonは家庭のストック(買い置き)を、自社のストック(在庫)と直結させてしまっている。もはや究極のCRM(顧客関係管理)と言っていい。

 「資本家の夢ってなあに?」「給料のいらない従業員」と言ったのは「機動警察パトレイバー」だが、Amazonはまさにフィクションを地で行っている。

Amazon Dash
Amazon Dash

 倉庫の搬入口から店頭のレジまで、ヒト・モノ・カネの流れを設計し、徹底的に流通を近代化した小売店がコンビニエンスストアだとすれば、ネット側から同じ戦略で追い落としをはかってきたのがAmazonだ。単品管理やロボットによる倉庫管理など小売業の定石を知りつくした上で、ネットという広大な販売エリアを活用しているため、在庫の回転速度はいわゆるパパママショップをあっさり追い抜いてしまう。

 しかし、Amazonも今のままでは安泰とは言えない。最近では「Amazon Fire TV」などハード戦略に奔走するAmazonだが、背景にはインターネットビジネスそのものの危機がある。パソコンの出荷台数の落ち込みとともに、ウェブブラウザーを下敷きにしたコンテンツビジネスの将来が危ぶまれてきたためだ。

 オンライン通販と実店舗を結び合わせた店舗側の流通改革が進んでいるが、そちらの世界ではiBeaconやWi-Fiを使ったM2Mが盛んだ。そのときインターネットは人間ではなく「流通そのもの」が使う。従来のAmazonのようにウェブページをカタログとして使う「通販サイト」は、徐々に過去のものとなりつつある。Amazon DashはM2M時代に向け、Amazon側が既存量販店に対して宣戦布告をした証とも言えるだろう。

 「アスキークラウド2014年5月号」では、インターネットビジネスの終わりをテーマに大特集を編成。パソコンとウェブブラウザーを中心としたビジネスの世界に激震が走る中、Web 3.0の勝ち組となるのは誰か。


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