女の子が女の子を描くpixivのカゲプロイラスト
pixivでは「カゲロウプロジェクト」または「カゲプロ」のタグでカゲロウプロジェクト関連のイラストが投稿されています。その数は3月までに約13万、投稿者数も3万6000人以上にのぼります。
カゲプロ関連のイラストは「人造エネミー」投稿の時期から一応はあり、ニコニコ動画に「カゲロウデイズ」が投稿された後には60枚ほどの投稿がありました。
しかし劇的に投稿数が増えたのは2012年にアルバム・小説・漫画の一連のメディアミックスが開始された時期です。小説・漫画での出版系の動きと、この時期にpixivで「夏のカゲロウプロジェクトイラストコンテスト」というのが開催されていたこともあってか、2012年は8月をピークにイラスト投稿が増えました。pixivでのカゲプロ人気は、CGMとしてのボカロ曲の人気で火が点いたというよりは、「カゲロウデイズ」のヒットをきっかけとした小説などの商業展開によるところが大きいと思われます。
また2013年になってから引き続きのメディアミックス展開やニコニコ動画での新作投稿の影響もあり、投稿数が再び増加、毎月5000から1万件のイラストが投稿されています。現在はアニメ化の影響もあってかまた投稿数が増えているところであり、2014年3月は6000名以上により約1万2000のイラストが投稿されました。アニメが開始される今月以降どこまで増えるのか分からないほどです(参考として、過去1ヵ月では「艦隊これくしょん」のイラストが約1万9000件、「東方」が約1万8000件投稿されています)。
こうしたpixivでの「カゲロウプロジェクト」イラスト投稿者の9割以上が女性です。投稿者の7割が性別の情報を公開、4分の1が性別と年齢の両方を公開しています。両方を公開しているユーザー約9000名について見てみると、14歳と15歳の女性の投稿者が非常に多く、また19歳のところで男女ともに山があります。10代から20代前半の女性で8割を占め、女子中高生だけで過半数を占めます。
カゲプロのイラストをpixivに投稿しているユーザーの多くは、中3前後の女の子であるようです。
イラストの傾向を見るために、投稿時期ごとでイラストに多くついていたタグをグラフ4に並べてみました。初期の2011年から2012年4月頃までは、VOCALOID曲の文脈として、「VOCALOID」タグや楽曲名のタグがついていることが多かったようです。それが2012年の夏頃からは描かれているキャラクター名のタグがつくことが一般的となりました。
初期に投稿が多かった「キド」、2013年頃から安定して上位にいる「エネ」「マリー」「アヤノ」はいずれも作中に登場する女性キャラの名前で、カゲプロでは基本的に女の子が描かれたイラストがよく投稿されているようです。
男性キャラでは「夜咄ディセイブ」が投稿された時期に曲に対応するキャラクターである「カノ」の投稿が増えました。また「コノハ」「シンタロー」らも継続して人気があり、「セト」は「少年ブレイヴ」PVが収録された「MEKAKUCITYV's」が2013年末に発売されて以降は投稿が増えています。
月ごとに投稿数の多かったキャラクターを見ていくと、2012年の夏以降で「エネ」の投稿数が安定して高いです。彼女はカゲプロのマスコットキャラクター的な存在となっています。
それ以外のキャラクターについては前後に発表された楽曲や小説での扱い等によってか、特定の月に急激に投稿数が増える傾向があります(「夜咄ディセイブ」投稿時期の「カノ」など)。個別のキャラクターの固定した人気にはあまり偏りがなく、登場時期などの影響はあるものの主要キャラクター全体が公平によく描かれている印象があります。そうしたなかでも定常的な人気が過去一年で比較的高かったのは「エネ」のほか、「マリー」「アヤノ」「シンタロー」「カノ」です。
ちなみにカゲプロのイラストではR-18タグのついた投稿はほとんどありません(330件で約0.25%)。女性向けの男性カップリングものもありますが、比率としては非常に少ないです。男性向けも女性向けも成人描写のある作品はあまりありません。
また漫画タグのあるイラストは約4.7%とあまり多くはないです。漫画などのストーリーものよりも一枚絵のイラストが好んで描かれていると思われます。
以上のようにpixivでのカゲロウプロジェクトのイラスト投稿は基本的には、中高生の女の子が可愛い女の子のイラストを描いている、というようなものであるようです。
ネットで二次創作が大きく盛り上がるジャンルはどちらかというとエロだったりやおいだったりが強い印象がありますが、カゲプロではそれとはまた別の層が主流となっている様子が伺えます。
こうした傾向のせいか、カゲロウプロジェクトはpixiv等での人気のわりにこれまでコミケなどの同人誌即売会ではあまり目立たない印象があります。2013年に初めてカゲロウプロジェクトオンリーの同人誌即売会「メカクシ団活動日誌」が開催、盛況だったそうです。今年は5月にその第2回が開催されますが、こちらも最初の募集スペース数を超えるサークル参加が予定されており、今後カゲプロ同人は活発になるのかもしれません。
今回のアニメ化で今回調査したような傾向にも大きく動きが出るかと思われます。またアニメに関連して2014年も夏に向けて新たな展開があるでしょう。年々拡大していくカゲロウプロジェクトの二次創作活動が今年どこまで行くのか注目していきたいと思います。
カゲロウプロジェクトのテレビアニメ「メカクシティアクターズ」の番宣映像。アニメは4月12日深夜0時より放送開始。 |
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