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ノーク伊嶋のIT商材品評会 第6回

法人営業の強さと流通力で遅れを取り戻す

ソフトバンクテレコムの「かんたんオフィス」はなにがかんたん?

2014年04月08日 06時00分更新

文● 伊嶋謙二(ノークリサーチ シニアアナリスト)

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「4000社と40万点」がキーワード

 「かんたんオフィス」での顧客ニーズとしては、今までソフトバンクテレコムが中心に販売してきた固定やモバイル回線サービスに関連するスマートデバイスのケースや、「SoftBank SELECTION(ソフトバンクセレクション)」のアクセサリーやiPad向けのプリンター、プロジェクターなどが販売の中心になっている。

 加えて、実際の営業活動ではオフィスの移転などで家具・什器などの需要があることなど、オフィスで必要な商材やサービスが実は多い。つまりユーザー企業の細かな要望に応えてあげることで、従来の営業売上に上乗せすることができるのがポイントだ。

 今のサービスの仕組みは、ユーザー企業から担当の営業マンが必要なもの、欲しいものを聞き出して、かんたんオフォスのサポートセンターに注文をする。翌日にはサポートセンターより営業マンを通じてユーザー企業に見積もりが届き、発注を行ない、納品されるという流れだ。

「かんたんオフィス」のイメージ(ソフトバンク提供資料より引用)

 このサービスを支えるのがソフトバンクBBの約4000社の調達先、約40万点の商材になる。ユーザーニーズに合う商品はほとんど揃えられるが、万が一商品がなくてもソフトバンクBBのネットワークで調達するか、あるいは直接メーカーに紹介する場合もある。また、クラウドサービスに関しては、もともとソフトバンクテレコムでGoogle Appsを扱っており、ワンストップで提供するサービスや商品を限定する妨げはない。広く提供、提案できることを最善としているポリシーだ。

 そのため今後は、企業ユーザーが商品選択をわかりやすくするために、アスクルやたのめーる(大塚商会)のような大がかりなカタログを用意するのは難しいにしても、ネット上でのWebカタログは考えたいとしている。

徹底したペーパーレスを実行する
iPadによる営業提案

 既存の顧客を中心にした、既存の営業体制に付加する新規営業商材、サービスが信条の「かんたんオフィス」だが、徹底されている点としては営業提案用の紙がないことである。文字通りのペーパーレスになって、営業をiPadのみで実践している点が同社のこだわりであり、ユーザーへのアピールポイントともいえる。

 実際の販売はソフトバンクテレコムの全国の営業マンが、固定電話、モバイル回線を契約している数万社への直販営業を行なっている。もともとソフトバンクは中堅規模以上のユーザーが多く、情報システム部門が存在する規模のユーザーが中心になる。NTTコミュニケーションズ、KDDIなどのサービスは、情報システム部門がいない企業にITを販売することが主な目的であるが、ソフトバンクは売り上げ増よりもユーザーとの関係強化を目指すところに違いがある。 従って、「かんたんオフィス」は新規企業へのドアノックツールとしてではなく、あくまでも既存ユーザーをターゲットとしている点が、前の2社と決定的に違う。どちらが良いかどうかではなく考え方が違うことが重要な点だ。

 営業活動のための新たな取り組みを推進しているが、宣伝広告活動やマーケティング活動などは控えめである。根本の考え方として既存客に営業マンがプラスワンの製品、サービスを届ければいいと考えているからだ。現状実施しているのは社内の営業マン向けの勉 強会を行っている程度である。

 ソフトバンクテレコムが狙う企業は情報システム部門のある中小企業、むしろ中堅企業に近い属性がメインターゲットであり、いわゆる純粋な中小企業向けの「かんたんオフィス」の販売については現在検討中である。従来は代理店チャネルを通じて中小企業へのビジネスを展開しており、さらにすそ野を広げた展開についてはグループ企業としてどのようにシナジーを図るかは少し長い目で見ているようだ。真の目的をB2Bにおける回線契約の安定的な継続と、さらなる獲得に軸足を置いていることが明確なわけだ。

ディストリビューターとしての製品・サービスの流通に強み

 ソフトバンクは今や大手キャリアの3強の一角であるが、筆者のような少し古い人はソフトの流通業者(ソフトバンクという社名の由来)としてのイメージが根強く残っている。実際、製品やサービスの強みを持っているソフトバンクBBの流通力は、他のキャリアとは一線を画している。

「有力キャリアの中堅・中小企業向け IT サービス比較」(出典:ノークリサーチの取材に基づいて作成)

 キャリアとしてもそうだが、IT製品の国内大手ディストリビューターとしての顔も持つ同社の商品調達力、物流のノウハウは、他のキャリアにはないものだ。ソフトバンクテレコムの法人営業としての強さと、ソフ トバンクBBの流通力が合わさったサービスこそが同社の最大の強みといえよう。親会社の実績と流通市場における影響力は、B2B市場の本流に近いビジネスに位置している。

 ソフトバンクBBでの間接販売向けの販売店へのディストリビューターに加えて、ソフトバンクテレコムの「かんたんオフィス」は、既存顧客への付加価値提供として、キャリアベンダーの中堅・中小企業ビジネスで少し上のゾーンでのポジション取りで、有力な1社として輝きを放ちつつある。

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