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石井英男の『研究室研究所』 第1回

この研究者・開発者がスゴイ!――渡辺敦志氏

筑波大の"あのポスター"のモデルは凄腕大学院生だった!

2014年04月02日 15時00分更新

文● 石井英男

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ネットで話題になったあのポスターは?

 渡辺さんの多岐にわたる活躍(?)として、冒頭のポスターを挙げないわけにはいかないだろう。どういった経緯でイメージポスターに出演することになったのか、せっかくの機会なので訪ねてみた。

―― 筑波大学の例のポスターですが、あれはどういう経緯で作られたんですか?

ポスターに登場しているロボットに、道案内をしてもらっているところ。エレベーターに乗り込み(行き先階ボタンは人間が押す必要があるが)、油田先生が使っていた部屋まで案内してくれた

渡辺 「もともと筑波大学 創造学群表現学類のプロジェクトでして、学生が大学のポスターを作るというものなのですが、システム情報工学研究科周辺の先生に『こんな感じのイメージのものを撮りたい』というメールが回ってきたので、私がモデルとして立候補したんです」

―― なるほど、なんで暗い廊下で研究しているのかと思ったら、あれはイメージ画像として作ったものだったのですね。先ほど、モデルに立候補されたとおっしゃいましたが、アート的な方向というか、デザインもお好きなんですか?

渡辺 「そうですね。同人活動で創作漫画を描いたりもしていますし。

 このポスターのデザインは全部芸術の学生さんがやってますが、最終的にこんな感じでどうですかとアイデアを出し合って、撮ったうちの1枚なんです」

―― このコピーも秀逸だと思いますが、これはどなたが。

渡辺 「コピーも向こうですね。これを考えた学生はすごいなと思います。筑波大学は、総合大学であることがすごい強みですね。例えばロボコンの授業は専攻を問わないので、たまに芸術の学生が来て、我々では思いも付かないロボットを作ったりとかありますよ」

さらには創作活動まで!?

 さらに渡辺さんは、研究活動とは別に、趣味として長く創作活動を続けている。化学物質を擬人化したり、料理をしたりと、普段の研究室での姿からは想像できないような一面を見ることができる。

―― ロボット研究の一方で、同人誌の活動もされていますよね。化学だったり、Kindleを改造してPDFを読み込ませたり。

渡辺 「化学は元々好きで、高校生の頃には物理化学同好会に所属したり。化学物質の擬人化は、かつての化学実験の経験から、科学や工学をもっと楽しく伝えられないかなと思って、完全に個人で作っていました」

―― それはいつ頃まで活動を?

渡辺 「一応今もやっています。今年度は博士論文があったので、1年間お休みしていますが」

渡辺さんが制作した同人誌から。物理的な栞を挿入できるようKindleに工作を施すことで、電子書籍内にも栞機能を実装するという仕組み

人間を理解するロボットを作りたい

 渡辺さんは、この春、筑波大学を卒業し、京都にある研究所でポスドク研究員として、さまざまな分野の研究・開発に取り組む予定とのことだが、将来の夢は何なのだろうか。

渡辺「今後は人間とロボットの共存を研究していきたい」

渡辺 「ロボットというよりも、もう少し人間側に、ロボットと人間が一緒に働くとか、人間に不快感を与えないとか、人間を理解するというのもロボットの隣接分野になっていくと思いますので、そこら辺からスタートして、もっと面白いところを見つけていきたいと思っています」

―― いつの世になっても、人なり物なりを物理的に移動させることが必要にならなくなる時代っていうのはまずありえませんから、それをいかに便利に、インテリジェントにしていくかっていうのは、王道だと思います。では最後にいくつか。まず、この研究室のアピールポイントはありますか?

渡辺 「ここに入った人は(エンジニアとして)もれなく鍛えられます(笑)」

―― やりがいはあるということですね。では、ロボットをやるには、若いうちから何をやればいいですか? プログラミングは必須でしょうし。

渡辺 「たぶん、何かをやっておくというより、ものづくりが好きな人ならできるんじゃないですか。この研究室に入る人でも、最初はC言語を全く使えない人もいます。プラットフォームはC/C++ベースですが、C言語などを触ったことがない人でも、最初の1ヵ月間に開催するセミナーで学べば、もう1ヵ月後にはデモプログラムを作れるようになります」

―― すごいですね。その辺は教える人も上手というか、ノウハウがあるんですね。

渡辺 「はい、学生が教えるのですが、毎年引き継がれてブラッシュアップされています。そしてプラットフォーム自体は機械もソフトも揃っていますので。興味が沸いた高校生・学生はぜひ」

―― ありがとうございました。

じつは大学入り口付近から研究室が入っている棟に行き着くまで、かなり迷ってしまった。「大学なのか、森なのか。」を実感した取材でもあった


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