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第1回ITACHIBA会議で語られたベンダー・SIer側の本音

IT版すべらない話「SIの終焉」の続きをITACHIBAで聞いた

2014年03月25日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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3月18日、IT部門とベンダーが立場を超えて話し合う「第1回 ITACHIBA会議」が開催された。ベンダー・SIerの代表として講演したグルージェントの栗原傑亨氏は、2012年に掲出され、業界にインパクトを与えた「SIの終焉」を、その後の業界変化を踏まえつつ講演した。

「SIの終焉」の筆者が、「ポストSIの終焉」を語る

 1999年に設立されたグルージェントはGoogle Appsとその周辺サービスの販売を手がけるクラウドインテグレーターだ。もともとは栗原氏が学生時代に所属していたソフト会社で得た元手に、当時参加していたNIFTY SERVEのDelphiフォーラムでの人脈といっしょに作ったのがグルージェント。「連結決算の会計ソフトを会計士と作っていたら、その会社は結局上場してしまった。そこでの“お小遣い”で会社を作った」(栗原氏)。

グルージェント 取締役 相談役 栗原傑亨氏

 その後、JavaのOSSコミュニティであるSeaserファウンデーションの設立に関わった後、OSSのSIで知られるサイオステクノロジーにグループ入り。同社の執行役員として、Google Appsを中心としたクラウドビジネスの立ち上げを推進してきた。つまり、OSSを中心に一般企業向けのSIに携わった後、クラウドビジネスに移行したのが栗原氏のバックグラウンドになる。「今は金融向けのSES(システムエンジニアリングサービス)、Google Appsの販売とSI、グループ会社の管理を手がけている」(栗原氏)。

 そんな栗原氏が2012年にIT系メディアに掲出したのが、「SIの終焉」という3回連載だ。これはリーマンショックと東日本大震災以降、ユーザー指向の変化とITのサービス化の進展により、SIビジネスが終焉を迎えるという流れを示したショッキングな内容。ビジネスの矢面にいたからこその生々しい業界分析とユーザー・SIerの現場に流れる不穏感を切り取った栗原氏の話は、「サイオスが生々しく語る「クラウドがもたらすSIの終焉」としてASCII.jpでも掲出しており、いまだによく読まれている。担当にとって何度聞いても面白い「IT版のすべらない話」なので、ぜひ一読願いたい。

 そして、第1回のITACHIBA会議で栗原氏が語ったのは、「SIの終焉2」になる。SIの終焉2では、連載掲出から2年を経た現状を踏まえ、改めてSIビジネスの将来性を憂うものだ。栗原氏は過去10年のポジションペーパーについて説明した後、改めてSIの終焉について説明した。

SIとエンジニアが淘汰される時代の必然

 まずは企業システムがクラウド化する背景だ。2009年以降、国際的な不況やリーマンショックを背景に企業はセルフサービスや段階的で柔軟な価格付けが好まれるようになった。「すべてを買って、自らお抱えでやるのではなく、マルチベンダーで組み合わせるという選択が出てきた」(栗原氏)。また、「標準化」「可視化」「自動化」などを前提に、仮想化の進化を前提としたクラウド的なサービスが台頭。2011年の大震災でBCPの概念も浸透し、クラウド導入を促す外部的な要因が固まりつつある。

企業システムクラウド化への道

 そして、ここ数年で、システム移行の必要性がさらに高まってきたという。1990年代以降、DelphiやVisual Basic、Javaなどで作られたフルスクラッチのシステム、2003年に登場したNotesプラットフォームは数多くの企業に導入されたものの、2007年以降にIT投資が数多くのプロジェクトが凍結。ようやく雪解けになったものの、システムはすっかり陳腐化し、動かなくなるシステムが増えてくる。「ビジネスモデルとITがあわなくなってきたり、人数が変わったり、Bring Your~が増えてきた。多くの企業でクラウドやモバイルを前提としたシステムの移行が大きな課題となっている」(栗原氏)。

 また、システム投資への考え方も変わってきた。今までは、大きな初期費用をかけて、システムを構築し、残りは保守と償却で回してきた。しかし、2011年以降のクラウド勃興期には、初期費用を極力抑え、ランタイムのみのライセンスが求められるようになってきた。さらに昨今は、毎月変動する従量課金を前提にした予算編成も実現されるが、「お客様の感覚はSIのまま。クラウドのデメリットをかなぐり捨て、すべては実現できると思っている。一方で費用は月額数百円で、それをさらに値切って数十円にしてくれというお買い物が得意になっている」(栗原氏)という。

システム投資に対する考え方の変化

 こうした中、ソフト開発のニーズも変化し、SIとエンジニアが淘汰される時代に突入している。「昔はフルスクラッチのSIでカスタマイズを実施。100画面でJavaアプリケーションで、1億円というプロジェクトがいっぱいあった。Seaserファウンデーションも業界中で使われた」(栗原氏)。しかし、この時期に起こったプロジェクトで動かないシステムの問題が勃発し、その反省から「SIレス」というトレンドが浮上。「とにかく動くモノを見せてくれ」「なにかいいものないですか?」というユーザーの要望に応えたプッシュ型の提案が必要になってきたという。そして、2014年以降「サービスを買う」「アウトソーシングを利用する」という市場が活性化するようになり、昨今はITサービスのビジネスが台頭。フルスクラッチを中心にしたSI市場は、終焉を迎えるというのが栗原氏の論だ。

SI市場の終焉

 IT投資がストップし、システム投資やソフト開発のニーズが変化し、SIとエンジニアは淘汰されつつある。栗原氏は、ゲーム会社に流れているとされる元SI人材だが、実際は業界を去ったり、ITサービス側に回っていることが多いと持論を展開。この結果、皮肉なことに前述したシステムやプラットフォームの移行を担えなくなりつつあるのが問題だ。栗原氏は、ユーザー企業の問題として「社内にシステム移行についてわかっている人がいなくなった。開発当初の人が定年を迎え、転職してしまった」と指摘する。

 また、システム移行の価値や意味を真に理解し、実現する人材がベンダー側にも不足しているという。「仕様書がないなか、リバースエンジニアリングして、SIできる人がいなくなった。たかだか3~5年の不況期だが、業界が養ってこなかった。モノが作れて、もしくは読み取れて、今のITに設計し直せるエンジニア集団は相当希少」(栗原氏)。とはいえ、若年層を育てるのに時間がかかるし、熟練のエンジニアを雇うにはコストがかかる。中途半端な状態で移行作業を行なうことで、「また動かないコンピュータを粗製濫造する時代が来てしまうのではないか」(栗原氏)という懸念が浮かび上がっているという。

(次ページ、Google Appsの販売のみでは零細なSI)


 

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