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ネット決済の手段はクレカだけじゃない

2014年03月21日 16時00分更新

文● 石山俊浩(ISHIYAMA Toshihiro)/アスキークラウド編集部

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 パソコン用のソフトが売れていない。ソフマップやコジマといった量販店を傘下に収めるビックカメラのIR資料によると、2008年8月期(同社は8月決算)には272億円の売上があったパソコンソフトが、2013年8月期には144億円にまで縮小している。売上全体に占める割合も4.5%から1.8%に低下。ヤマダ電機の2013年3月期の数字を見ても112億円(同0.7%)と、苦戦していることが分かる。
 ではなぜ、量販店でパソコンソフトが売れなくなってしまったのか。
 理由の1つに、販売チャンネルの多様化が挙げられる。パソコンソフトが必要になれば、面倒でも量販店に足を運ばなければならなかったころと比べ、今はアマゾンのような通信販売サイトや、ソフトメーカーが独自のショッピングサイトを用意するなど選択肢が増えている。誤って消去してしまったファイルを取り戻す「ファイル復元」系のソフトのように、「店に足を運ぶ時間や宅配便を待つ時間すら惜しい。今すぐ必要」な場合は、ダウンロード販売を使う手もある。
 ただ、ネットで買い物をする際にはクレジットカードが必要。決済手段と身分証明書を兼ねるクレジットカードは、商品の販売側にとって命綱だが、利用者側からすると持ってないと買い物ができないのは不便極まりない。そこで最近、にわかに注目を集めているのがプリペイド方式の「POSAカード」だ。

万引きしても「誰得」なPOSAカード

 POSA(Point Of Sales Activation)とは、POSレジで支払いが確定した時点で、対象のカードが有効化(アクティベーション)される技術だ。カードを有効化した時点で売り上げが立つと同時に仕入れが発生するため、有効化前のカードはただのプラスチックの板に過ぎない。万が一、店頭で万引きされても店側にダメージはなく、一方で万引きした側も、カードを有効化しない限り使い道がないので、そもそも盗む意味がない(カードに描かれたキャラクターへの思い入れで収集したくなるケースもゼロではないだろうが……)。店舗からすれば、有効化しない限り仕入れが発生しないので棚卸の必要もない。販売のためのスペースもそれほど必要としない割りに単価も高い、「おいしい」商材なのだ。

※ただし店員が有効化の手続きを忘れると非常に面倒なことになる。購入時のレシートをなくすと目も当てられない。

POSAカードは「中抜き」

コンビニの店頭に置かれたPOSAカードのラック

 iTunes CardやGREEプリペイドカード、Mobageモバコインカードなど、オンラインで決済する際にはクレジットカードが必須だが、コンビニでPOSAカードを購入して記載された番号をパソコンやスマホで入力すればチャージされる。現金でゲームやアプリ内の通貨が買えるので、クレジットカードを持たない(あるいは持てない)人、カードを持っていてもネットサービスに登録したくない人などに好評だ。最近ではゲームやソフトウエアのダウンロード権付きのカードも登場している。例えば任天堂の携帯型ゲーム機「ニンテンドー3DS」用の「パズドラZ」は、ゲームショップで購入できる通常のパッケージ版に加えて「DLカード版」がコンビニなどで買える。アドビのCreativeCloudに対応したプリペイドカード「アドビキーカード」なんてのもある。
 このように、コンビニでソフトが買えるようになると、しんどいのはソフトウエア流通業者だ。ダウンロード販売は、いわば「中抜き」。メーカーと消費者が直接取引するので、仲介者の入る隙間がない。インターネットが普及した今だからこそ当たり前のようにできていることだが、ソフトバンクが昔のままソフトの流通業を続けていたら、自身が積極的に広めた高速回線により首を絞められたことだろう。

 ソフトバンクの例を出すまでもなく、どんな企業も時代に合わせてトランスフォーメーション(変質)しなければならないのは明らかだ。そのためのヒントは、成功している企業に共通する法則を解説するアスキークラウド2014年3月号の特集にある。

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