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「崖っぷちのIT部門」を担当した日経BPの記者も登壇

IT部門の理想と現実をかいま見たITACHIBA会議の課題提起

2014年03月20日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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3月18日、IT部門とベンダーが立場を超えて話し合う「第1回 ITACHIBA会議」が開催された。イベントの冒頭、調査会社であるノークリサーチ、メディアである日経BP、さらにはユーザー側、ベンダー側のそれぞれの立場で現状認識や課題掲出が行なわれた。

ユーザー部門にとってIT部門はネガティブな存在?

 ITACHIBAは「立場や利害を超えて、これからのITとの関わり方を考え、議論し、共有する『場』」を提供する非営利の組織。ITACHIBAは「異立場」の意で、ユーザー企業やベンダー、SIer、調査会社、メディアなどさまざまな立場の参加者が集い、胸襟を開いて、議論を深めていくことを目的としている。第1回のITACHIBA会議は2月14日に開催する予定だったが、大雪のために中止。1ヶ月を経て、ようやく開催の運びとなった。

第1回ITACHIBA会議の模様

 第1回の発起人でもあるネットコマース代表取締役社長の斎藤昌義氏の紹介で、冒頭に登壇したのは、中小企業のIT市場調査を得意とするノークリサーチ代表取締役の伊嶋謙二氏と、特集「崖っぷちのIT部門」でIT業界を震撼させた日経コンピュータの記者である岡部一詩氏だ。

「崖っぷちのIT部門」を掲載した日経コンピュータを手に2人を紹介するネットコマース代表取締役社長 斎藤昌義氏

 伊嶋氏は、スマートフォンやタブレットの導入をきっかけにIT部門離れが起こっていると指摘する。IT部門の発案ではなく、むしろ社員や経営者、ベンダーの要求で導入されているケースが多くなり、IT部門の存在感が落ちていると語った。「従来はIT部門とベンダーの間で良好な関係があったが、IT部門がお金を出さなくなり、しかも現状でのITの充足感が高いため、この関係も崩れつつある」(伊嶋氏)。特に中小企業に関しては、情報システム部が積極的な投資や提案を欠く傾向があると分析した。

 日経BPの岡部氏はIT部門500人とユーザー部門1000人に行なった調査を元に、両者の評価が大きく乖離している現状を説明した。岡部氏は、IT部門のイメージを「先導者」「パートナー」「参謀」「請負人」「参謀」「抵抗勢力」という6つに分類し、IT部門の自己評価とユーザー部門からの評価を得た調査を披露した。

IT部門とユーザー部門の調査結果を披露する日経コンピュータの岡部一詩氏

 これによるとIT部門が自身を、IT面で事業計画の推進を支える「参謀」とみなす傾向があるのに対し、ユーザー部門はIT部門をITに関するよう要求を慎重に見極める「門番」や要求になかなか動いてくれない「抵抗勢力」とみなす傾向があるという。新サービス・サービスの創造や業務改革を主導する「先導者」やビジネスを共に遂行する「パートナー」と考えるユーザー部門は少なく、むしろネガティブに捉えられている傾向があるわけだ。さらに、IT部門をスルーし、ユーザー部門と直接やりとりするITベンダーも増えており、「特にデジタルマーケティングの世界では、情シスはもはや登場してこない」(岡部氏)と語った。

ITが好きな人を社内コンサルにするのは難しい

 では、実際のIT部門はどうなのか? 情報システム部の代表として講演した小林健造氏は、本来ITの戦略や企画を練るべきIT部門が下流工程までやっている現状を指摘。JEITA/IDC Japanの調査を元に、IT部門への期待を日米で比較し、日本では「業務効率化/コスト効率」への期待が高いのに対し、米国では「ビジネスモデルの変革」への期待が高いという構造的な違いを説明した。

情報システム部を代表して講演する小林健造氏。ユーザー部門、IT部門、SIer、IT子会社などさまざまな立場の経験を持ち、現在は電子部品メーカーの情報システム部門長を務める

 面白かったのは、IT部門の投資改修曲線が変化しつつあるという議論だ。従来はコストをベースにしたIT部門の評価がメインだったが、昨今はコスト以外のKPIが登場し、評価が難しくなっているという。また、従来はシステム開発に初期投資をかけ、一定の運用期間を経た後、投資を回収していたが、今後は初期投資と回収効果の低い「クラウド型」、開発期間の短縮とスピーディな投資回収を目指す「戦略開発型」が主流となり、両者をハイブリッドで運用する企業は増えているという。

今後の曲線はクラウド型と戦略開発型のハイブリッドに

 今後は差別化不要なシステムはクラウド化し、浮いたIT要因を本来やるべき企画に回すというモデルはあり得るという。「メールやサーバーなどはクラウド、バックヤードはSaaSに任せ、メーカーであればサプライチェーン、PLM(Product LifeCycle Management)など攻めのITに注力したい」(小林氏)。

クラウドと戦略型開発により、IT部門が上流工程に移行し、社内コンサル化

 しかし、現実は厳しい。まずは社内のITコンサルを指向するにせよ、業務部門に精通するメンバーは少数で、現在のIT部門の人材ではそのニーズをまかなえない。「プログラムを作るとか、サーバーを構築するといったITが好きな人を、戦略やアーキテクチャの立案に回すのはそもそも無理がある」(小林氏)。一方、日本ではIT部門の人材流通やユーザー部門とのローテーションがないので、人材が流動しにくい。米国のように外部から人を雇い入れるのも難しいので、ITの展開が守り中心になる。さらに「特に製造業は海外売り上げが上がっているのに、正直グローバル化はIT部門やベンダーの手に余る」とのことで、ITのグローバル対応に関しても大きな難点があるという。

 本来、IT部門は負荷となっている運用・保守業務を外部にアウトソーシングし、ビジネス部門の業務プロセス改善に取り組む社内コンサルに行くべき。しかし、実現を阻害する数々の要因が存在し、課題が山積しているのが現状のようだ。

 後半では、「SIの終焉2」というタイトルでベンダー側の試行錯誤について語ったグルージェント代表取締役CEOの栗原傑亨氏の講演、そして参加者のディスカッションについてレポートする。

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