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リアル店舗で幅広い決済手段に対応、処理を“10→1秒”に短縮する「J-Mups」

インターネットは本当に“危ない”か? カード会社の挑戦

2014年03月13日 08時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 アカマイテクノロジーズが2月28日に開催したユーザー企業向けイベント「Akamai Enterprise Conference 2014」では、アカマイユーザーの4社が自社事例を披露した。三菱UFJニコスが運営するカード決済システム「J-Mups(ジェイ マップス)」では、全国のリアル店舗に設置された決済端末とセンター間を結ぶネットワークとして、インターネットとアカマイソリューションを活用している。

三菱UFJニコス 常務執行役員 CTO アクワイアリング副ビジネスユニット長 鳴川竜介氏

構想から8年を要した“クラウド型マルチ決済システム”

 J-Mupsのプロジェクトがスタートしたのは8年ほど前。だが、実際にサービスを開始したのは1年半ほど前の2012年7月である。CTOとしてプロジェクトを率いた鳴川氏自身も「非常に時間がかかった」と振り返る。

 まずJ-Mupsについて簡単に説明しておこう。J-Mupsは、リアル店舗に設置された決済端末を通じて、クレジットカードや電子マネー(交通系ICカードなど)、デビットカード(銀聯カード)などを使った決済を可能にするシステムである。

J-Mupsではクレジットカード、デビットカード、電子マネーが決済可能(画像はJ-Mupsサイトより)

J-Mupsの専用端末(中央が端末本体、左がPINパッド、右が非接触式リーダーライター)。端末本体にはタッチパネルを搭載。専用端末だけでなく、カードリーダーを接続したPOSレジなどでもJ-Mupsを利用できる

 J-Mupsの大きな特徴は、決済処理のアプリケーションがすべてデータセンター側にあり、店舗側端末は「シンクライアント」にすぎない点だ。そのため端末を交換することなく、決済にかぎらず、電子クーポンや売上集計といった店舗向け付加サービスも提供可能だ。データセンター側の作業だけで対応する決済手段を増やしたり、新しい付加サービスを提供したりできる。これが「クラウド型マルチ決済システム」を名乗るゆえんだ。

J-Mupsのシステム構成。データセンター側にアプリケーションがあるため、端末交換なしで決済手段やサービスの追加が容易にできる

「すさまじく古い」カード決済インフラを変革せよ!

 鳴川氏は、多くの店舗に設置されている従来型カード決済システムのインフラは「すさまじく古い」と説明する。実際、端末とセンターが決済時に通信する通信手段は、30年前からほとんど進化していないのだ。

 「現在ある決済端末の約半数は、いまだにダイヤルアップ接続。さらに残り半分も、その8割がISDN接続だ。リアル店舗の(カード決済の)世界は、ネットワークや通信技術の進化から完全に取り残されている」(鳴川氏)

従来型の決済端末のほとんどはアナログ/ISDN回線を通じてセンターと通信。J-Mupsではこれをインターネットに置き換えることを目指した

 それだけでなく、アナログ/ISDN回線という“すさまじく古い”決済インフラでは新しいマーケティング手法や決済手段にも対応できなくなっていく可能性が高い。たとえば現在、マーケティングの世界では、Webサイトとリアル店舗が連携したかたちでサービスを行う「O2O(Online to Offline)」に注目が集まっている。また、非接触型決済やスマートフォン決済などの新たな決済手段も次々に登場している。

 こうした新時代の店舗サービス、決済手段に対応する決済システムはどうあるべきか――。J-Mupsプロジェクトは、こうした危機感からスタートしたのだった。

(→次ページ、「10秒を1秒にしたい」決済スピードへのこだわり)

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