このページの本文へ

テレビをハックするのは音楽よりも大変だ。

2014年03月10日 02時35分更新

文● 松下 康之/アスキークラウド

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 2014年3月9日、TBSがスポンサーの「TBS TV HACK DAY」という3日間の大掛かりなハッカソンの最終日に取材を行った。運営はマッシュアップアワードでお馴染みのリクルート、場所の提供はお台場のMONO。参加者は約60名、スタッフ、審査員などを加えると100名を超える人間がこのイベントに参加したということになる。またAPIなどの提供のベンダーもhueを提供したフィリップス、音楽認識APIのグレースノート、イメージ検索APIのゲッティイメージズ、電話APIのTwilioを提供したKDDIウェブコミュニケーションズ、テレビ番組を音声から認識する自動コンテンツ認識APIの日本エヴィクサーなど10社に及ぶ。

TBS TV HACK DAY Logo

 テーマは「未来のテレビの楽しみ方を追求するアプリケーションやWebサービス」ということで今回集まった8チームはプログラム可能な照明機器であるhueを操作して部屋の照明を変化させたり、音声認識を使って対話でテレビを操作したり、オークションやコマースを絡めてみたり、SNSを使ってチャットやグループ通話を連携させたりとそれぞれが工夫した成果を発表した。

TBS TV HACK DAYの会場。

TBS TV HACK DAYの会場。

 実際にハッカソンの内容を見てみると「テレビのコンテンツと連動して何かをする(買い物やオークション)」ものと「テレビのコンテンツをきっかけとして何かをする(出会いや会話、検索など)」ものの大きく2つに分けられるといっていいだろう。テレビという非常に受動的な悪く言えば垂れ流しが可能なメディアにアプリケーションやネットサービスという能動的にユーザーの操作が必要なものを掛け合わせた結果、ネットユーザー的には親和性の高い「テレビを操作する、テレビと連動する」能動的な仕組みが出来上がったと思われる。

フィリップスのhueで光をハック。

フィリップスのhueで光をハック。

 ただ、審査員のコメントにもあったように「受動的に垂れ流して視るテレビ」の良さがあまり感じられないのも確か。それにスポンサーのTBSに好かれようとする余りに同社のキャラクターを使ったり、コンテンツもTBSの番組を使ったりと、参加者側が思ったほどハジケていないのが気になった。審査員からは他のハッカソンと較べても非常にレベルが高いという講評があったが、確かにスマホアプリとして完成した作品もハードウェアとして稼働している作品もあり、全体的にしっかり作られている感が高かった。ただその分、「テレビ局としてこれはコメントに困る」的な荒唐無稽なモノが無く、「即ビジネスになります!」というのがウリというチームもあり、ハックとしてのデタラメさよりもマトモさが全面に出ていたように思う。審査員にテレビ局のプロデューサーや放送作家が居たこともそれを助長したのかもしれない。それとも賞金100万円というゴールを目指した結果なのだろうか。

最優秀賞を受賞した「テレブー」を開発したチーム。

最優秀賞を受賞した「テレブー」を開発したチーム。

 先日行われた音楽のハッカソンでは音楽という素材を切り刻んで遊んでみるという作品が多く、それと比較して素材としての動画の扱いづらさ、メディアとしての完成度が結果的にプログラマーやプランナーにとってのハードルを高くしてしまったのかもしれない。

 マネタイズを考えずに徹底的にテレビ番組とコマーシャルを切り刻んで遊び倒す荒唐無稽かつルール無視で視聴者がオオウケするハックが見てみたいと思った。そういうところからこそ、未来のテレビの形は見えてくるのではないだろうか。

 そういう意味でもこれに続くテレビ局主導のハッカソンが行われることを切に願ってやまない。

参考URL:TBS TV HACK DAY 公式ページ http://www.tbs.co.jp/tv_hack_day/

週刊アスキー最新号

編集部のお勧め

ASCII倶楽部

ASCII.jp Focus

MITテクノロジーレビュー

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード
ピックアップ

デジタル用語辞典

ASCII.jp RSS2.0 配信中