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顧客行動を可視化する「カスタマージャーニーマップ」とは

2014年03月19日 13時00分更新

文●橋本直樹

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 既存サービスの改善や新規サービスの開発・運用に役立つ「カスタマージャーニーマップ」が注目されている。カスタマージャーニーマップとは、サービスを利用する際に顧客がとる一連の行動や思考、感情の起伏などを視覚化した図のこと。自社と顧客との接点(「タッチポイント」という)を書き加えることで、どのタイミングでどのようなサービスを提供すればよいのかを検討できる。

カスタマージャーニーマップの構成要素

 例えば、冬の日曜日、街の中心部からやや離れた場所にある評判のレストランを訪ねたが、あいにく満席だったとする。その際、自分が寒い中を歩いてきて空腹だったとしたら、店にどんな対応をしてもらうとうれしいだろうか。待ち時間を教えてもらい、その間にメニューを選び、先に調理しておいてもらう。あるいは、空腹が我慢できないほど待ち時間が長いときは、別の店を紹介してもらえると、客としては助かるかもしれない。

レストランの食事体験におけるカスタマージャーニーマップの例

 こうした顧客の行動や文脈をあらかじめ調査し、可視化し共有しておくことで、組織として顧客のさまざまな状況に応じた施策ができる。混雑時の注文に対応できるようキッチンを組み替える、お客に渡すメニューを多めに用意する、モバイルサイトに待ち時間を掲出するなど、店員のスキルだけに頼らないシステムとしてのサービスを提供できる。

 また店舗の場合、店側は店内だけの顧客体験を考えがちだが、顧客は実際にはPCサイトやモバイルサイト、口コミなど、店との多様なタッチポイントを持っている。これらをバラバラに考えるのではなく、カスタマージャーニーマップを使うことで、連続した顧客体験を設計できる利点もある。

Little Springs Design社のデザイナーが作成したスターバックスのカスタマージャーニーマップ。入店前から店を出るまでの一連の行動と感情を可視化している  StarBucks Experience Map(Little Springs Design)

アメリカのデザインコンサルタント会社が鉄道会社に向けて作成したもの。鉄道旅行を楽しむ際の顧客の企画〜旅行中〜終了後の流れを、具体的な施策とともに示している  RailEurope Experience Map(AdaptivePath)

 カスタマージャーニーマップは顧客行動をわかりやすい図に可視化して共有する手法として有用だが、基になる情報をそろえるにはフィールドワークやダイアリー調査(対象者に日記のように行動記録をつけてもらう調査手法)のような調査が必要だ。作成に際しては、これらの調査を正しく実施できるノウハウを持つことが重要になる。


著者:橋本直樹

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UIデザイナー
2009年よりWeb制作会社勤務。ユーザー中心設計手法に基づいたサイトやアプリの作成/評価に取り組んでいる(ユーザーテストや専門家評価を通じたユーザビリティやUXの評価/改善、およびアプリケーションの企画・プロトタイピング設計など)。



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