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上位機の技術を盛り込み、CMシリーズを上回るパフォーマンスを提供

もはや末弟とはいえない、新B&W 600シリーズが登場

2014年03月07日 13時00分更新

文● ASCII.jp編集部

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B&W 600シリーズ。ツィーター部分に網状のカバーがついている点に注目

 英B&Wのエントリー向けスピーカー「600シリーズ」がリニューアル。上位機種で培った技術を盛り込み、技術的にも音質的にも大きな進化を遂げた。約20年の歴史を持つ600シリーズは1995年に初代機が登場してから今回が5世代目。2007年に登場した現行モデル機のリニューアルとなる。

アッシュブラックおよびホワイトの色が選べる、Hi-Fiステレオ再生はもちろんだが、ホームシアター用途も想定。黄色いケブラー素材を使用したミッドレンジユニットの口径の差で上位・下位が分かれる。センタースピーカーは中央に高域と中域、左右に低域用ユニットを備えた対称レイアウトになった

 新600シリーズには、従来同様、ブックシェルフタイプ、フロアスタンディングタイプ、センタースピーカーなどのバリエーションがある。

製品ラインアップ
製品名 形状 形式 税抜価格
683S2 フロア型 3ウェイ4スピーカー ペア28万円
684S2 フロア型 2ウェイ3スピーカー ペア18万4000円
685S2 ブックシェルフ型 2ウェイ2スピーカー ペア11万4000円
686S2 ブックシェルフ型 2ウェイ2スピーカー ペア9万円
HTM61S2 センタースピーカー 3ウェイ4スピーカー 12万2000円
HTM62S2 センタースピーカー 2ウェイ3スピーカー 7万1000円
STAV24S2 スタンド ── ペア2万6000円

 数字が小さいほど上位という位置付けになる。それぞれ6.5インチのバスドライバーを持つ上位機と5インチのミッド/バスドライバーを持つタイプの2つがある。さらにブラック・アッシュとホワイトのカラーバリエーションが選べる。型番は680番台となるが、従来機と重複するケースもあるため、末尾に「S2」を加えて新旧を区別する。本体は全体的にスリム化。それに伴い専用スタンドは、686S2と685S2に対応したトッププレートを用いた新型番となる。

ツィーターは新開発。振動板は2種類のアルミドームを組み合わせて強度を確保している。さらにフローティング構造で取り付け、余分な振動が音質に悪影響を与えないよう配慮した

 いずれも新開発のツイーターを採用。CM10と同様に振動板(アルミ製ドーム)に中央部分をくりぬいた別のドームを重ね合わせることで、周辺部分を補強する仕組みにしている(デュアルレイヤー・トゥイーター)。薄さと軽さを維持しつつ、ドームを高剛性化し、高域の周波数特性を改善できる点がウリ。B&Wの説明では、高域の一次共振が従来の30kHzから38kHzにまで上がり、可聴域の特性が大きく改善されているという。

デュアルレイヤー・トゥイーターにより、一次共振が可聴域を大きく超える38kHzまで拡大(左)、さらに箱鳴りによる影響をなくすことで特性がよりリニアに近づいている(右)

 さらに、ツィーターユニットのダイヤフラムおよび磁気回路はフローティング構造として浮かせた。これによりツィーターとともに箱が振動してしまう問題を軽減でき、よりフォーカスの合った音像が実現できるという。CM10などではツィーターユニットをキャビネットに外付けする形をとってきたが、キャビネット内に収納する形でフローティング構造を実現したのは今回の600シリーズが初だという。

カバーは指がかりがなく通常でははずせないが、専用工具で外せる

外観的にはフロントバスレフ化したブックシェルフエントリー機と、センタースピーカーが大きく変わっている

 なお、ツィーター部分には金属製の保護カバーが装着されているが、これは店頭デモなどで不用意な破損を防ぐための仕組み。ツィーターを駆動する磁石で固定される仕組みになっているが、専用工具を使用することでユーザーの責任で取り外せる。この仕組みも開発者がこだわったポイントだという。

ケブラーを使用したミッドレンジ。2種類の口径がある

従来の青い線と比較してなだらかな特性が出ており改善が分かる

 「686S2」「685S2」「684S2」などが持つバス/ミッドレンジ・ドライバーでは、円錐型のフェイズプラグではなく、40周年記念モデル「PM1」と同じ、エネルギー吸収型防振プラグを採用。発泡体ウレタン素材をケブラー製のコーンの中央部、ボイスコイルボビンにぴったりとはめ込まれている。

見た目の美しさも好印象なアルミ製ウーファー

高域までフラットに歪みなく伸びている

 また「683S2」のダブルウーファーは、従来同様アルミ製だが、紙やケブラー素材を貼り付けて強度を確保していた従来機とは異なり、ツィーター同様リング状のアルミ素材を貼り合わせて周辺部分の強度を高めている。一方でセンターには少しへこんだキャップを付けている。

使用されているドライバーユニット。ここから自社で設計できる点にB&Wの強みがある

 高域/低域の信号を分けるネットワークに関してはシンプルさがウリ。これはまず最初に最適な特性のドライバーユニットを作ることを考え、回路はよりシンプルで高品質なグレードのパーツを作るおちうB&Wの思想に沿ったものだという。マルチウェイでも正相接続にこだわっている点もその思想の現れ。ドライバーユニットを自社で設計し、求める特性を追求できるB&Wだからこそできるこだわりだという。

短時間ではあるが、マランツの14シリーズのアンプ/SACDプレーヤーと組み合わせた試聴もできた

 輸入元のD&Mでマランツブランドの音質担当マネージャーを務める澤田龍一氏によると、「計測結果や使用しているテクノロジーの面を見ると、CM10を除いたCMシリーズを超えた600シリーズ」であり、CMシリーズを脅かす存在であるという。

 実際に最上位の683S2を試聴してみたが、まず驚いたのはスピーカーのはるか後方に広くかつ奥行き深く展開される、空間表現の秀逸さ・自然さだった。最初に男声と女声のデュオを聞いたが、ボーカルはきっちり中央に定位し、それぞれの立ち位置なども明確に感じ取れる。次に聞いたコンチェルトのオーケストラもバランスがいい。その後に聴いたのが805 マセラティ・エディションだったということもあり、低域の支えをもう少し、あるいは個々の音の輪郭の曖昧さなどを多少感じるといった面もあった。とはいえ、新しい600シリーズは、ソースに入っている個々の音を聞くというだけでなく、音の鳴っている空間丸ごとを体験して楽しむ気分に浸れるというのは非常に好印象。

 こうした空間表現の巧みさはB&Wのスピーカーの特徴と言える。そのDNAは新しい600シリーズにも確実に継承されているし、技術の進歩によってその品質は非常に高い水準に到達したという感想だ。

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