なぜか口座への支払いが“保留”に……
ここまでの流れを見ると、筆者の“Squareリーダーライフ”はプロモーションビデオのように極めてスムースに進行したように見えるが、現実は、6万円の決済を行なった連絡メールの後、Squareから別のメールが送られてきて、“セキュリティー保持”という名目の下、私のアカウントの追加情報が必要で、それが揃ってSquareが納得するまでは口座への支払いを保留(延期)するということになった。
メール内で指定されたSquareのウェブサイトにアクセスし、画面上で提出するようにガイドされた書類は、公共機関発行の身分証明書。そして、販売時に顧客同席の上でのカードをスワイプしたかどうか……と言った内容をチェック入力するアンケートだった。明らかに“決済事故”としての扱いのようであった。
すべてに入力し、身分証明書としてパスポートのスキャンデーターをPDFで添付送付した。これで決済保留はなくなるだろうと安心していた矢先、今度は、追加で別の情報提供がいるとのメールが再び……そしてそのメールの中には、追加情報として「営業許可証、履歴事項全部証明書、開業届、ウェブサイト、広告、チラシ、お取扱いの商品/サービスが掲載されているメニューまたは料金表、ライセンス、就労証明書、社員証、名刺などの上記が明示されている情報」の提出がリクエストされていた。
文章に区切りがなく、あまりにも多くの書類名が並んでいるのでいったいなにが必要なのか分かりにくい。要は、私のコンサルタントという登録で、想定外のレンズが販売されたのが引っかかったらしい。
そうクレームすればいいのに、マニュアル通りの“追加情報の提供”と言った連絡が来るので、ますます本来の問題が見えなくなってきた。結局、その後のメールのやり取りで、最終的には決済支払は行なわれた。
厳しいセキュリティーゆえに
個人事業者が簡単に利用という訳にはいかない!?
セキュリティーはモバイル決済の要ではあるが、今の体制は本当にクレジットカードによる小口決済企業のオペレーション向きだろうかと多少心配になった。同社の設立の発端は、創設者の1人でもあるアーティストが“自分の作ったガラス細工作品を買いたいという人がいたが、その場でクレジットカード決済ができなかったため買ってもらえなかった”という苦い経験かららしいが、そのアーティストは営業許可証や履歴事項全部証明書、開業届などを持っていたのだろうか?
Squareリーダーは米国スターバックスのモバイル決済に大量採用されているとのことだが、実際のビジネスの方向性はそういう大企業のモバイル決済部分なのかもしれないと思ってしまう。
保留撤回を連絡いただいた同社からのメールには、屋台のラーメン屋さんやフリマの出店者などの個人もサービスの対象だとの記載があったが、日本の屋台のラーメン屋さんや焼き芋屋さん、学生や主婦が行なうフリーマーケットの主催者である個人が、筆者が求められたような追加情報を持ち合わせている確率は極めて低いだろう。
Squareリーダーとそのサービスは、SNS系のサービスとも連携し、SNS上でマーケティング活動までもできる非常によくできた決済システムではあるが、顧客のセグメントに個人事業者を想定するなら、古典的な金融機関の影響を受けた信用調査ガイドラインとセキュリティー管理をベースにした提出書類の種類とその表現手法が極めて問題だ。本来なら個人事業者にとって極めて素晴らしい決済システムであるのに残念だ。
筆者が秋葉原のショップで980円で購入したSquareリーダーの小冊子の最後には、指定サイトにアクセスするだけで支払われる1000円のボーナスポイントがついていた。
途中、またしても支払いが“保留”になっていたので、またしても営業許可証、履歴事項全部証明書、開業届などを提出しなければならないのかと心配になったが、結局のところ、保留は解かれたようで、近く筆者は20円を得するかもしれない。
Squareリーダーを使って
小口決済システムの未来を考える
今回、幸か不幸かSquareリーダーとその顛末に直接関わって、両刃の剣であるセキュリティーのことを少しでも考える機会があったのはハッピーだった。システムで見た限りは何の問題もない完璧なアカウント登録を行なっていても、悪意を持ったSquareリーダーを装着した人が、適当な金額を入力し、隙を狙って暗証番号登録のない他人のクレジットカードをスワイプして適当なサインをしても、被害者からの訴えがない限り発見は難しのだろう。
液晶画面上にカードホルダーが行なう自筆のサインは、それを補うモノだと思うが、筆者の場合は不幸にも、支払者自身が描いた自筆のサインがあるにもかかわらずセキュリティーチェックが入った。
きっと、コンサルタントの筆者が、より体格が大きくて強そうな客を羽交い締めにして、売るはずのないレンズを適当に販売商品としてでっち上げ、脅迫してサインをさせたと思われたのかもしれない。
セキュリティーは厳しすぎても、甘すぎてもこのクレジットカードによる小口決済システムの普及の障害になるだろう。世界は、PC時代の固定型クレジット決済システムから、ここ数年の大きなインフラの変化を受けて、いつでもどこでものモバイル型クレジット小口決済システムへの広がりをスタートしはじめた。
情報通信技術の世界ではすでに使い古されたレジェンドワードだが、このビジネスセグメントに決済サービスの提供企業、採用する企業、エンドユーザーの3者がすべて満足する“トリプルWIN”はあり得るのだろうか。
・商品 Squareリーダー ・購入価格 980円 (アカウント登録すれば1000円のキャッシュバック) ・購入 秋葉原「千石電商」 ・写真今回の衝動買い
アイテム:Squareリーダー
価格:千石電商にて980円で購入
(アカウント登録で1000円のキャッシュバック)
T教授
日本IBMから某国立大芸術学部教授になるも、1年で迷走開始。今はプロのマルチ・パートタイマーで、衝動買いの達人。
T教授も関わるhttp://www.facebook.com/KOROBOCLで文具活用による「他力創発」を実験中。
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