かつてネットワーク・オーディオは一度滅びた
ところでネットワーク・オーディオそのものは随分と昔からあります。同じルーターに接続しているパソコンのオーディオファイルを再生したり、自身で世界各国のサーバーに接続してインターネットラジオが聴ける、ボーズの新製品群と同じ機能を持ったネットワーク・オーディオ機器が。
その代表格が、オンキヨーの“Net-Tune”対応のAVアンプやレシーバーでしょう。発表は2002年。独自プロトコルを開発し、当時としてはネット経由で操作していることを意識させない、画期的なレスポンスを持っていました。もちろんネットワークプレイヤーとして音も悪くない。
思えばその頃、まだパソコンはリビングルームに置かれることを目指していました。テレビ番組のレコーダーであるとか、LANを利用したコンテンツ管理機器であるところの“ホームサーバー”として。データをPCに貯めこみ、家族や複数の端末でシェアして聴くという方向です。デジタル家電を相互接続するための業界的ガイドラインであるところのDLNA(Digital Living Network Alliance)が生まれたのもこの頃でした。
が、大抵の人は、もうそんな時代があったことを忘れているのではないでしょうか。私もネットワーク・オーディオの時代は来ないうちに終わったという認識です。昨今のネットワーク・オーディオがらみの話も、10年経っても音楽配信が来ていないのと同じでダメなものはダメだろうと、なかば白けた感じで聞いておりました。
ですが見方を変えると10年経った今はチャンスとも言えます。大抵の人は10年前のことなんか忘れていますので。気がつけばコンピューティングの主流はパソコンからスマホやタブレットへ移り、それに対応するオーディオ機器はワイヤレス時代に突入しております。これが今回の重要な足がかりです。