JAL機のエンジンをすべて整備する
エンジン整備センター
さて取材で訪れたのは、成田空港の敷地内にあるJALエンジン整備センター。ここはJAL機すべてのエンジンを点検整備をする巨大センターだが、飛行機の姿はどこにもない。ここには機体から下ろされたエンジンのみが運ばれてくるからだ。また羽田をベースにする国内線のエンジン整備は、成田に回送する場合もあれば、エンジンのみを羽田から陸送してくるときもあるという。
2013年9月30日現在で、JALが保有している機体とエンジンは次の通りだ。
JALが保有している機体とエンジンの比較表 | ||||||
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機種名 | 用途 | 巡航速度 | 航続距離 | エンジン型式 | エンジンメーカー | 推力 |
767-300 | 国内線・近距離国際線用 | 862km/h | 3280km | JT9D-7R4D | プラット・アンド・ホイットニー | 2万1773kg |
767-300 | 国内線・近距離国際線用 | 862km/h | 5510km | CF6-80C2B4F | ゼネラル・エレクトリック | 2万5982kg |
767-300ER | 国内線・近距離国際線用 | 862km/h | 9400km | CF6-80C2B7F | ゼネラル・エレクトリック | 2万7230kg |
777-200 | 国内線用 | 905km/h | 4740km | PW4074 | プラット・アンド・ホイットニー | 3万5127kg |
777-200 | 国内線用 | 905km/h | 4740km | PW4077 | プラット・アンド・ホイットニー | 3万6270kg |
777-300 | 国内線用 | 905km/h | 3210km | PW4090 | プラット・アンド・ホイットニー | 4万1636kg |
777-200ER | 国際線用 | 905km/h | 8200kmもしくは1万2600km | GE90-94B | ゼネラル・エレクトリック | 4万4135kg |
777-300ER | 国際線用 | 862km/h | 1万2600km | GE90-115B | ゼネラル・エレクトリック | 5万2409kg |
737-400 | 国内線用 | 798km/h | 3320km | CFM56-3C-1 | CFMインターナショナル | 1万660kg |
737-800 | 国内線・近距離国際線用 | 829km/h | 4500km | CFM56-7B | CFMインターナショナル | 1万977kg |
787-8 | 国際線用 | 901km/h | 1万4800km | GEnx-1B | ゼネラル・エレクトリック | 3万1480kg |
現在エンジンを4発搭載したボーイング747(ジャンボ)や3発のDC-10、MD-11などはすでに引退している。そのためすべて2発(双発)機なので、エンジン数は機体数の2倍になる。
さらに飛行機には、見えない箇所にもう1台小さなジェットエンジンを積んでいる。それが尾翼後部のシッポについているAPUと呼ばれるもの。シッポをよーく見ると丸い穴が開いているが、それがAPUの排気口だ。APUは駐機中にメインエンジンに変わって発電したり、圧縮空気を作ってメインエンジンのスターターの役割をする(APUのスターターはモーター)。
エンジン整備センターでは、この機体の数だけあるAPUもメンテナンスするので、扱う自社エンジンは全部で500台以上もあるのだ。
年間に整備するエンジンは83台ほど、APUは34台もあるという。月あたりにするとエンジンを7台、APUを3台という計算。しかもエンジンを完全にバラしてオーバーホールするとほぼ1ヵ月、ハイパワーなGE90系だと80日もかかるので、整備士270名で作業しても、エンジン整備センターはフル稼働だ。
広大なフロアは、作業や特殊大型機械ごとに区分けされ、隣同士の壁はないものの、小さな町工場が何十軒も集まる感じになっている。さらにビルは数階建てになっていて、細かい部品に分解されると上階で整備されるようだった。
ビル内にはエンジンを載せて昇降できる6畳間ほどあるエレベーターも設置されている。整備センターができたころには、どんなエンジンでも運べたが、予想以上にエンジンの大型化が進み現在は1階でバラしてからでないと、エレベーターに乗せられないエンジンもあるという。