公開されたグーグルとメーカーの契約 Androidはオープン?

文●末岡洋子

2014年02月19日 17時00分

 Androidの独占状態に歯止めがかからない。2013年通年でのAndroidのシェアは78.4%。2012年の66.4%からさらに比率を上げたとされている。そのAndroidの魅力の1つが「無料」「オープン」である。だが、GoogleがSamsung/HTCと交わしていた機密扱いの契約が公開され、現実にはかなりの条件がついて回ることが明らかになった。欧州で進行中のAndroidへの独占禁止法調査にも影響を与えるかもしれない。

機密扱いだったグーグルと端末メーカーとの合意書
その内容は?

 AndroidとiOSの2強時代とはいうものの、実際のところ2013年はAndroidの年と言える。Gartner調べによる2013年のシェアは、Androidは12ポイントも伸ばして78.4%に、一方のiOSは19.1%から15.6%に減らした。Windows Phoneは前年の2.5%から増えてはいるが、わずか1.7ポイント増の3.2%という結果だ。

 Androidは実にスマートフォン5台中の4台で利用されており、実質一人勝ちといってもよいだろう。iPadが主流だったタブレットでも同じようなパターン(iOS/Appleが市場を作ってリード、その後Androidがシェアをとる)が生じつつある。

 Androidを採用する理由の1つが「無料」であり「オープン」な点だろう。このことがアプリが多数開発されるエコシステムを生み、結果として、そのことがプラットフォームの魅力を増していると言える。

 もっともAndroidは確かに無料なのだが、Googleが端末メーカーと交わしているMADA(Mobile Application Distribution Agreement)という合意書からは、Googleが自社モバイルアプリケーションのライセンスにあたって、いくつかの条件を課していることがわかった。この書類は本来機密扱いだったのだが、OracleがAndroidはJavaの知的所有権を侵害していると主張するGoogleとの訴訟で明らかになったのだ。

 公開したのはハーバードビジネススクールのBenjamin Edelman氏(ここここここ)。このMADAという契約は、GoogleがHTCと2010年に、Samsungと2011年に交わしたもので、Google側はAndy Rubin氏が署名している。

 この中でGoogleは、「すべてのGoogle Applicaionsが事前にデバイスにインストールされた場合のみAndroidデバイスを流通できる」「Googleの検索とAndroid Market Clientアイコン(現在のGoogle Play)はデフォルトのホーム画面のすぐ次に表示されるパネルに設置しなければならない」「Google検索はWeb検索につながるあらゆるアクセスポイントのデフォルト検索プロバイダーに設定する」「Google Applicationsはトップの1つ下までに表示しなければならない」といった言葉が並ぶ。Google ApplicationsとはGoogle検索、Gmail、Google Calendar、Google Talk、YouTube、Google Maps for Mobile、Google Street View、Contact Syncなどを指している。

 OSをライセンスする際の一種の契約書としてみれば問題ないように見えるし、多くのAndroid端末がGoogle Playにはじまり、Google製アプリをプレインストールしていることから、ルールがあることはこれまでも想像できた。

 Androidを無料で公開するGoogleのビジネスモデル(Googleのサービスをモバイルでも利用してもらうことで広告収益が得られる)は秘密でもなんでもない。もちろん契約は3〜4年前のもので、内容は変更されている可能性もある(MADAにはGoogleが一方的に変更することができるとも明記されているとか)。

 だが、Googleが表向きではAndroidを“オープン”と位置づけているのと矛盾する点で問題だというのがEdelman氏の主張だ。その点からみると、Googleのスローガンであるところの「Don't be evil(邪悪になるな)」に反すると突っ込まれても仕方がないのかもしれない。

Googleの姿勢は矛盾している?

 Edelman氏はいくつかの点からGoogleの態度の矛盾点を突く。たとえばAndy Rubin氏。まだAndroidを統括していた2011年に「デバイスメーカーは自由にAmdroidを改変してあらゆる範囲の機能にカスタマイズできる」と語っていたと、Edelman氏は指摘する。

 Rubin氏は「Android互換もしくはGoogle Applicaitonsを統合したいなら、基本的な要件に従う必要がある」と付け加えてはいたが、「Androidはオープンなプラットフォーム」と大々的にうたっていることからは想像できないレベルの“基本的な要件”だとEdelman氏は問うている。

 もう一つ取り上げているのが、会長であるEric Schmidt氏の発言だ。2011年にGoogle検索の独占状態について調べていた議員の「Androidの利用の条件としてGoogle検索をデフォルトにするよう端末メーカーに要求しているのか?」という問いに対し、Schmidt氏は「Androidの利用条件としてGoogle検索をデフォルトにするようなことを強いてはいない」と回答している。

 そして、Androidのメリットの1つに「アプリケーション開発レベルでの競争を奨励すること」を挙げており、「メーカーがどのアプリをAndroid端末に事前インストールできるのかを選択できる自由を尊重している」「Androidへのアクセスや利用にあたって、Google Applicationsの事前インストールやデフォルトの検索エンジンにすることを条件にしていない」と続けている。Bingなど競合アプリの導入も自由だとSchmidt氏は主張したという。

 Edelman氏はこのようなGoogleの矛盾をつきながら、MADAで要求していることは“紐付け”だと主張する。YouTubeだけを利用したいのに、Google Mapsなどのアプリを入れなければならない……全部Googleアプリで揃えるか、全部無しかを選択しなければならないというのが現状のようだ。

 端末メーカーの中には自社でサービスを開発しているところはそれを使い、無いものはGoogleで補いたいという場合もあるが、MADAから判断する限りAndroidでは難しい。さらには秘密にしてきたことで、オープンという表向きのイメージとの矛盾を問われることなく戦略的な目標を進めていったと分析している。

端末メーカーが欲しいのは
Androidの商標とドロイド君のイラスト?

 もっともメーカーが独自にアプリを揃えられるのであれば、MADAは不要だ。実際にAmazonのKindleや中国のAndroidメーカーはこの方法を選んでいる。

 FOSS PatentのFlorian Mueller氏はこのような条件の悪い条項を飲むメーカー側の心理として、Google製のアプリやアプリストアが必要という以外に、「商標が欲しいため」と分析している。開発者はもちろん、消費者の間で「Android」ブランドの認知は高い。商標はオープンソースライセンスには含まれていないため、Googleと契約したうえで、Androidロゴをマーケティングに用い、自社の端末がAndroidであることを消費者に伝えている。

 Googleは先にオンライン広告で欧州委員会(EC)と和解したばかりだが、これとは別にEUではAndroidの独占禁止法違反について暫定調査が進んでいる。今回明らかになったMADAが何らかの影響を与えるかについては、まだわからない。Edelman氏の書類公開を報じたWall Street Journalでは、初期設定をどのぐらい簡単に変更できるのかにより、ECの見解が違ってくるだろうとする専門家の意見を示している。


筆者紹介──末岡洋子


フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている

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