無線給電/有機材料による使い捨て水分センサーによるおむつや絆創膏に
JST/東大、世界初の柔らかいワイヤレス有機センサーシステムの開発に成功
2014年02月10日 16時20分更新
東京大学の研究グループは2月10日、世界で初めて柔らかいワイヤレス有機センサーシステムの開発に成功し、その有用性を水分検出センサーシートで実証した。
これは科学技術振興機構(JST)の課題達成型基礎研究の一環で、有機トランジスタや有機ダイオードといった有機デバイスはインクジェットなどの印刷プロセスによって大面積・低コストや軽量性・柔軟性を同時に実現できると期待されているなか、それらの技術を実用に向けて利用法を研究していた。
研究では、厚さ12.5マイクロメートルのポリイミド高分子フィルムにさまざまな有機集積回路を作製することでワイヤレスで電力・データを伝送できるフレキシブルな水分検出センサーシートを開発。センサーは水分を検出すると、数Hzの信号を出力する。これにより、おむつやばんそうこうといった素材に使うことで装着時に違和感がなく、なおかつ水分検知を通知するシステムが開発できる。
開発のポイントは回路を駆動するための電力伝送に電磁界共鳴法を採用した点。電磁界共鳴法は機器の充電やセンサーなどの離れたところをに電力を送る技術として注目されているが、有機集積回路にも応用できることが実験で示されたのは今回が世界初という。これにより、柔らかいセンサーにおいても長距離ワイヤレス電力伝送と通信が可能となった。
有機集積回路はショットキー型の有機ダイオード、有機トランジスタ、キャパシタといったさまざまな電子部品を高分子フィルムの上に集積化して作製されているが、いずれの部品も柔らかく、全体としてもくにゃくにゃと曲げられる柔らかさを兼ね備えている。
今後の課題としては信頼性向上と低消費電力化のほか、生体とセンサーが触れたときに生じる静電気に耐える高耐圧化をさらに進める必要があるとしている。使い捨てにできる衛生的なセンサーにより、身体に密着しても違和感をがない柔らかさをもつセンサーデバイスの開発は、医療やヘルスケア分野において大きな可能性を持つと期待されている。