まつもとあつしの「メディア維新を行く」 第40回
ドワンゴ川上会長ほか招いてのキックオフシンポジウムを3月11日に開催
東大×KADOKAWA=メディア・コンテンツ研究寄付講座開設
2014年02月14日 17時00分更新
東大×KADOKAWA=グローバル・コンテンツ研究
メディア・コンテンツ研究寄付講座が開設
1月28日、東京大学大学院情報学環が角川文化振興財団の1億500万円の寄付を受け、推進メンバーに大塚英志氏を招いた3年間の寄付講座「東京大学大学院情報学環 角川文化振興財団 メディア・コンテンツ 研究寄付講座」の開設を発表した。
これは、マンガ・アニメ・ゲームをはじめとする日本コンテンツを、グローバルな視点も交えながら深く掘り下げ、新しい学術領域の開拓を目指す、というものだ。
そのため、特任教授として批評家・まんが原作者の大塚英志氏を迎える他、カナダコンコルディア大学教員のマーク・スタインバーグ氏も招き、東大と海外からの留学生を募りサマープログラムを実施する。
発表会冒頭、講座の概要が情報学環教授の石田英敬氏から説明された。東大では2010年に設立された「メディアコンテンツ研究機構」が中心となり、学部横断型の教育プログラムを提供してきたが、今回は角川文化財団からの寄付を受け、人材育成/研究/社会発信・産学連携の3つの分野での活動を行なっていくという。
具体的には、東大が計画している学事暦改革(4学期+1サマープログラム)に呼応し、人材育成の分野ではグローバルで深い教養を持ったソフト・パワーの担い手(プロデューサー、キュレーター、若手研究者)の育成を目指す。
ワークショップやフィールドワークなど実践的な内容となるサマープログラム(約2週間・東大から20名・海外から20名の学生を募る)は原則全て英語で行なわれる。
またMITなど国際的研究機関とも連携し、先端研究のプラットフォームを立ち上げ、メディア企業・文化産業とのシンポジウムや研究会などを開催することで、ソフト・パワー戦略に貢献したいと石田氏は抱負を語った。
角川文化振興財団の理事長であり、本講座の顧問を務めることになる角川歴彦氏は「アジアをはじめ各国を訪問しても、日本のコンテンツパワーには驚かされる」と述べる一方、「その拡がりに対してこれまでマンガやアニメなどのコンテンツ研究は国内に閉じていたのではないか」とし、本講座でこの分野での研究がグローバルに展開されることへの期待を示した。氏は「内向きの論理が声高に叫ばれる昨今、近隣諸国との結びつきを考え直すきっかけにもなるのではないか」という。
「クールジャパンの空騒ぎの一方で、我々創作者の表現がどう世界にどう届き、どう変わっていくのかを明らかにしたい」と抱負を語るのは、特任教授を務めることになる大塚英志氏だ。
氏は、中国やフランスなど日本コンテンツの人気が高い国々で、「日本型」のマンガやメディアが「国産化」していると指摘し、またアカデミックな分野でも日本コンテンツをテーマに選ぶ研究者が増えているという。
そんななか、氏が主張するのはコンテンツ研究の「一国主義からの脱却」と、そのための研究方法の確立の必要性だ。大塚氏はこのままでは日本のマンガ・アニメは「ガラケー」化してしまうとその危機感を表現する。
具体的な申し込み方法や、大塚氏以外の教員は検討中ということで明らかにされなかったが、3月11日には大塚氏・スタインバーグ氏の他にドワンゴ会長の川上量生氏らコンテンツ業界関係者、内外研究者を招いてのキックオフシンポジウムが開催されるということで、より具体的な内容がそこで明らかになるはずだ。引き続き注目していきたい。
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