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末岡洋子の海外モバイルビジネス最新情勢 第94回

モバイルファースト目指すFacebook、結局はアプリで勝負か?

2014年01月23日 15時30分更新

文● 末岡洋子

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 Facebookとモバイルの相性は評価が難しく、一言では成否を表現できない。2012年のIPO時に同社自身がモバイルを「課題」と認めているが、その戦略は2年が経過しようとする現在でもわかりにくいままだ。

 だがFacebookがモバイルを重視していることは明らか。Facebook社内ではモバイル開発スキルが必須というし、CEOのMark Zuckerberg氏は今年2月の「Mobile World Congress 2014」の基調講演に登壇する予定だ。今回はこれを記念(?)して、このところのFacebookのモバイル関連の動きをみてみよう。

「Facebook Home」「HTC First」は失敗

 Facebookとモバイルといえば、2013年春に登場した「HTC First」が記憶に新しい。HTC FirstはFacebookのユーザーインターフェースレイヤーともいうべき「Facebook Home」をプリインストールしたAndroidスマートフォンに過ぎず、Facebookブランドのスマホを期待した向きをがっかりさせた。

今覚えばアレはなんだったのだという気もする「Facebook Home」

 ホームアプリとしてインストールされたFacebook Homeは、Facebookにアクセスしやすいようにホーム画面やロック画面を工夫し、写真やメッセージをはじめとした電話側の機能とFacebookとの連携を強めたもの。Facebook Home自体はHTC Firstに限定せず、一部のHTC端末やGALAXYシリーズでダウンロードして利用できるアプリとして、Google Playでも公開された。

 だがHTC FirstもFacebook Homeも、経過は良好とは言いがたい。HTC Firstの独占キャリアだったAT&Tは発表から1ヶ月後の5月には、当初の価格99ドル(2年契約の場合)を0.99ドルまで値下げするとともに販売打ち切りを決定した。

 販売台数は1万5000台程度と言われており、これは「失敗」と言えるだろう。Facebook Homeのダウンロード数は最初の1ヵ月足らずで100万に達したが、現在もGoogle Playではダウンロード数が「100万~500万」となっている。10億以上とされるFacebookのユーザー数を考えると、(対応するAndroidスマホがわずかとはいえ)伸び悩んでいるのはまず間違いない。

HTML5からネイティブアプリへの移行でドタバタ
ニュースキュレーションアプリ「Paper」が登場!?

 さらにFacebook Home登場前後に右往左往したアプリ戦略が思い出される。Facebookは当初HTML5ベースのアプリを提供していたが、2012年秋にはiOS/Android向けのネイティブアプリに変更するという大幅な方針転換を行なった。

 まさに試行錯誤といえるが、当時のFacebookのモバイル担当プロダクトマネージャはHTML5の長期的な成功を予想しつつもネイティブにすることで「個々のOS向けの機能を強化していく」と説明していた。なおHTML5と比べると個々のOS向けに開発するネイティブアプローチは開発作業と言う点では負担となる。Facebookはつい先日、社内でモバイルアプリ開発に利用しているテストフレームワーク「Airlock」などの取り組みを明らかにしている。

 Facebook Homeがそれほど浸透しないことを受けてだろう、The Vergeが情報筋からの報道として、Facebookは今後スタンダロンアプリのスイートの方向性を強化する計画と報じた。すでにメッセージングの「Facebook Messenger」、買収した写真共有の「Instagram」などがあるが、これらをスタンダロンのアプリとして個別に機能強化するという方向性のようだ。

 PCで生まれたFacebookはさまざまな機能を統合したソーシャルネットワークサービスのFacebookとして拡大してきたが、これをそのままモバイルで展開するのは難しいという判断だろう。スマホ上のメッセージング市場はまさに今が旬だ。

 日本の「LINE」や中国の「WeChat」、それに「BlackBerry Messenger」「WhatsApp」などがあるし、写真共有では相手が閲覧後に削除されるというユニークな「SnapChat」なども登場(FacebookはSnapChat買収を試みたが、拒否されている)、モバイルでは機能が限定的で特徴のあるアプリが次々と登場しており、個別に戦っていかなければユーザーを奪われてしまう。

 The Vergeでは伏線として、第3四半期の業績発表の際にZuckerberg氏が「広く使われているスタンダロンアプリがある」とFacebook MessengerとInstagramに触れて、「将来、このようなサービスを開発して共有を支援していきたい」と語ったことを紹介している。同時期、ニュースを集めて読むキュレーションアプリ「Flipboard」ライクなニュースアプリ「Paper」(仮称)をFacebookが間もなくリリースするといううわさも出ている。

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