草の根周辺機器はステレオミニプラグを目指す?
IRKitのベースとなった「Arduino」(アルデュイーノ)を始めとするマイコンキット/ハードウェア開発環境(以下、Arduino系キット)は、スマートフォン界隈にイノベーションをもたらすかもしれない。3Dプリンタはモノづくりにイノベーションをもたらすと昨年話題を集めたが、同じモノづくりでもArduino系キットはソフトウェア開発の要素を多く含む。
イタリアのMassimo Banzi氏によって考案されたArduinoは、2005年の登場以来、教育機関を中心に支持を集めてきたが、昨年あたりから風向きが変わり始めた。以前から互換品は多く存在したが(Arduinoはオープンソースハードウェアなので商標を無断使用しないかぎり問題ない)、あのIntelまでもがArduino互換の開発ボード「Galileo」の発売に乗り出している(関連記事)。
Arduinoは、「スマート家電」のモックアップを作成するには最適だろう。数千円で購入できるほど低価格、開発環境一式も用意されている。欧米を中心に厚い(熱い)ユーザ層を抱えるため、資料も豊富だ。IRKitのような派生品が登場することで、開発コミュニティは確実に拡大することだろう。
だからといって、LightningなどiOSデバイスの規格に沿った周辺機器の開発は難しいのでは……という指摘があるとすれば、それはそのとおり。iOSデバイスにはMfi(Made for iPhone/iPad/iPod)というプログラムがあるので、勝手な仕様の「iOSデバイス対応ハード」は売り出しにくい。
しかし、iOSデバイスにもいくつかの抜け穴がある。たとえば、どのiOSデバイスにも用意されている「ステレオミニプラグ」。iOSデバイスをクレジットカード決済端末として利用可能にする「Squareリーダー」は、その好例といえる。無数にあるイヤホン/ヘッドホンがそうであるように、このポートを利用するデバイスは必ずしもMfiを取得する必要はない。
ステレオミニプラグ経由でコントロールできる家電は多い。実際、JVC KENWOODがビデオカメラ「Everio」向けにオプションとして発売したパンクレードルは、ビデオカメラ本体がiOSアプリからWi-Fiで受信した操作指示をステレオミニプラグ経由で受け取っている。
少々ニッチかもしれないが、操作用の信号をステレオミニプラグで伝えるというアプローチは、家電では「あり」ではなかろうか。草の根デバイスがiPhone周辺機器市場を席巻する、などということがあればおもしろいのだが。
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