初めてグーグルグラス(以下グラス)のコンセプトビデオを観たときに「これでマジックを観られたら嫌だなぁ……」というのが、正直な感想でした。僕がマジックを披露してる最中に、観客のグラスに秘密のシカケやマジックショップでの値段とかがポップアップ!とか、不思議なムードが台無しです(笑)。さらに、マジシャンの年収まで出ちゃったりして……(汗)。
グラスと共に映画の鑑賞中でも、スクリーンにプロダクトや俳優が映る度に、製品広告や俳優のゴシップがグラス内に表示される。そんなアプリが登場したら、監督も俳優もたまりません。
でも、テクノロジーの発展や普及は止められないはず。じゃあ、どうしたら、そんな最新デジタルデバイスと仲良く出来るかを考えたほうが幸せだと思うのです。先日もトークショーの会場で、タブレットで質問ツイートを募集したら、けっこうな数が集まって盛り上がりました。
グラスって、武器なの?防具なの?
ちょっと強引な例えになりますが、能動的に情報発信するのが武器だとすれば、検索などで情報を収集することが防御と言えるかもしれません。たとえば、「オレって、こんな高級料理を食べてるんだぜ!」と写真をSNSに投稿することは、リア充報告という名の牽制パンチに近いし、電車の車両事故で代わりの交通手段を探すのは、「約束に遅れない」という社会的な秩序を「防御すること」とも考えられるからです。
グラスは、他のデジタルデバイスと同じように、情報の発信も受信も出来ますから、武器なのか?、防具なのか?まるでドラクエをしてたら、スゴそうなアイテムを拾っちゃった感じでしょうか……。
ただ、あきらかに他のデジタルデバイスと異なるのは、その機能のオンオフに関わらず、装着していれば「カメラ向けてるよ」とか「ネットに繋がってるよ」って、他の人に認知されること。いろんなことの抑止力になり得るかもしれません。つまり、いつもテレビカメラを向けられている状態に近いです。
これは、ユーザーの使い方っていうよりも、周りからどう捉えられるかのイメージの話です。たとえば、レストランやデパートやクラブなどで「当店では、グラスの着用はお断りしています」なんて注意されちゃう。そんなことを考えると、江戸時代にトラブルを避けるために、旅籠の入口で「刀をお預かりします」と言われたのと同様に、コミュニティにとってグラスは「武器」と捉えられる可能性が大きいといえます。
知のファッションとしてのグラス、またはドラクエの魔法アイテム
次は、グラスを身につけるユーザーの内面から考えてみます。仕事にしろ、プライベートにしろ、外出するときのファッションって、ちょっと考えるのが常です。「今日はクライアントに会うからスーツ」とか「もしかしたら、新たな出会いがあるかもしれないからマックイーンで……」とか(まぁ、これは、恋愛に限らずですが……)。女性がメイクをしっかりして家を出るのもそんな理由があるかもしれません。
それと同じようにウエアラブル・デバイスのユーザーは、コミュニケーションの新しい形への期待があると思うのです。もし、会議中に突然「SLAって、どうなってる?」なんて、知らないビジネス用語が登場しても、グラスがちゃんと「SLA(Service Level Agreement:品質保証契約のこと)」と翻訳して、即答できるかもしれないからです。
これって、ドラクエで言えば武器や防具というよりも、魔法アイテムに似ているとも考えられます。少し守備力がアップする「金の指輪」や、ダンジョンから脱出する「おもいでのすず」のように、装備しておけば思わぬ所で役に立ちそうな気がします。
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