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RX10開発者インタビュー後編

写真文化は広がっている――ソニーRX10開発陣が語るデジカメの今後

2014年01月04日 12時00分更新

文● 四本淑三 

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レンズ一体型の弱点「ホコリ」対策

―― 明るいズームレンズの付いたレンズシャッターのデジカメってないと思うんです。音が静かなのでステージ撮影にはもってこいなんですが、これはなぜレンズシャッターなんですか?

千葉 一時期はフォーカルプレーンシャッターも検討していたんですが、止めました。それはゴミの問題が大きかったですね。

―― ゴミ?

鏡筒設計の山内さん

山内 シャッターが動くことによってゴミがイメージセンサーに付着するリスクがあります。

―― シャッター幕がゴミを出すんですか?

千葉 組立時にゴミが入らないよう丁寧に清掃しながら組み立てているのですが、イメージセンサーの前に大きな可動部品があるとどうしてもゴミが付着しやすくなってしまうんです。イメージセンサーに乗ったゴミは微細なものでも目立ちます。レンズ交換式の場合はレンズを外して清掃できるんですが。だからイメージセンサーとその直前に付いているレンズの間は、綺麗に清掃して封入するように作っているんです。そうやって対策しているのに、その前でシャッターをガンガン動かすことはできずに諦めました。

―― でも、そこは諦めてくれてありがとう! という感じですが。倍率の大きなズームレンズなのでそれなりに伸縮します。すると空気を吸ったり吐いたりするわけですけど。もし、それでホコリが侵入したらどうするんだろうと。

山内 そこは考慮した設計になっています。呼吸するのも想定していますので、吸う口、吐く口というのも配慮してあります。外からゴミが入ったとしても食い止められる構造であったり、内部評価でも埃をかけてイメージセンサーまで到達しないという評価はしています。

―― ところで、これはケーブルレリーズ用のネジ穴なんですよね?

お若い方はご存じないでしょう。このレリーズボタンに開いているネジ穴が「レリーズ穴」です。ここにケーブルレリーズをねじ込みます

ケーブルレリーズはこんな感じに付きます。ボタンを押すとケーブルの中のワイヤーが押され、金属のピンがカメラのレリーズを押してシャッターを切ります。このとき、ボタンをロックさせるとバルブ(シャッターが開きっぱなし)撮影が可能に。メーカーは忘れましたが、1000円もしなかったはず

千葉 そうです。RX1の血の流れを注いでみたんですよ。バルブ撮影をするときに使っていただきたいです。別売りアクセサリーのリモコンを買っていただければ、それでバルブもできるんですけど、ケーブルレリーズだったら昔からカメラをやっている方なら持っていらっしゃるだろうと。ターゲットとしては一眼に触れていた方がターゲットなので、あるものを使ってもらいたかったんです。

―― 僕はもうデジカメ時代になって捨ててしまったので、わざわざケーブル買いに行きます。

千葉 RX1でもワールドワイドで「ケーブルレリーズイイね」という話が出ていますね。あれで星を撮るんです。

―― RX1で星を撮ったら綺麗でしょうねえ。

千葉 まあ、自分たちで言うのもなんですけど、あの解像度はすごいですからね。撮る度に驚きます。

私は釣った魚に餌はやらない男です。実用品であるデジカメをアクセサリーで飾るなんぞもってのほか。そうした意思を示すため、ストラップなんぞはカメラの付属品で通してきたわけですが、何となく機材愛への目覚めを感じております。今回初めてストラップを購入。T*マークとお揃いの色のレザーストラップにしてみました。HAKUBA KST-TP40-RDという製品でヨドバシカメラで2580円

私は買った車を売るまで洗わない男です。カメラのレンズだってロクに拭きやしないし、保護フィルターなんて買ったこともない。ところがRX10のレンズは前玉に埃が付くと目立つんですね。そこで自分史上初めて保護フィルターを購入いたしました

さらには無水エタノールとスプレーボトル、そしてキムワイプを大量購入。これでレンズやファインダーを普段から綺麗にしておこうと。機材愛に目覚めた結果、すっかり心を入れ替えた私を見ていただきたいです

なくなりつつあるビデオカメラとの壁

―― そういえばビデオカメラのイメージセンサーで、1型はほぼないですよね?

千葉 ビデオカメラの主流はもっと小さいイメージセンサーですね。RX10はサイバーショットですけど、動画にも力を入れています。画質に関してはビデオカメラを超えたかもしれません。もちろん長時間手持ちで動画撮影するときのホールディングなど、ビデオカメラには敵わないところもありますが。

―― 社内的にどうなんですか? 他の部署から文句がきたりとか。

千葉 他の機種を気にして性能を落とすことよりも、お互いが高い性能を目指す文化ですね。1型のイメージセンサーで、間引きのない全画素を読んで、低照度にも強い。その能力を引き出すために、画質だけでなくヘッドホン端子を付けたり、業務用マイクを付けるアダプターが付けられるように、マルチインターフェースシューもあります。絞りリングのクリックオンオフもそのひとつですね。動画のときは音が入らないようにオフにできるわけです。

三島 動画を撮るプロカメラマンの方の中で、RX10の動画性能に気付かれている方もいらっしゃって、YouTubeに上げている方もいらっしゃいますね。

―― ビデオカメラとスチールカメラの壁がドンドン低くなっているような気が。

千葉 長時間手持ちできるかどうかという形状の部分ですよね。スタイルくらいの差しかないかもしれないです。

―― でも動画を満足に撮ろうと思うと、バッテリーが足りない。モバイルバッテリーを使ってUSB給電ができればいいと思うんですが、それができない理由は何ですか?

千葉 USB給電では電力が不足する場合があるんですね。大きいレンズ玉を速く動かすためには瞬間的に大きなラッシュ電流が流れ、特に動画撮影中にフォーカスを駆動したりするとUSB給電では賄えなくて、落ちてしまうことがあるんです。そこは今後改善したいポイントですね。

RX10はUstream中継に使えます。HDMIをMacに入力するThunderbolt給電のインターフェイス、Blackmagic Design「Intensity Extreme」(3万2980円)でつなぐと、Ustream Producerに認識されます。もちろん内蔵ステレオマイクの音声もそのまま使えます。これで中継画像のクオリティが一気に向上

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