レンズ一体型の弱点「ホコリ」対策
―― 明るいズームレンズの付いたレンズシャッターのデジカメってないと思うんです。音が静かなのでステージ撮影にはもってこいなんですが、これはなぜレンズシャッターなんですか?
千葉 一時期はフォーカルプレーンシャッターも検討していたんですが、止めました。それはゴミの問題が大きかったですね。
―― ゴミ?
山内 シャッターが動くことによってゴミがイメージセンサーに付着するリスクがあります。
―― シャッター幕がゴミを出すんですか?
千葉 組立時にゴミが入らないよう丁寧に清掃しながら組み立てているのですが、イメージセンサーの前に大きな可動部品があるとどうしてもゴミが付着しやすくなってしまうんです。イメージセンサーに乗ったゴミは微細なものでも目立ちます。レンズ交換式の場合はレンズを外して清掃できるんですが。だからイメージセンサーとその直前に付いているレンズの間は、綺麗に清掃して封入するように作っているんです。そうやって対策しているのに、その前でシャッターをガンガン動かすことはできずに諦めました。
―― でも、そこは諦めてくれてありがとう! という感じですが。倍率の大きなズームレンズなのでそれなりに伸縮します。すると空気を吸ったり吐いたりするわけですけど。もし、それでホコリが侵入したらどうするんだろうと。
山内 そこは考慮した設計になっています。呼吸するのも想定していますので、吸う口、吐く口というのも配慮してあります。外からゴミが入ったとしても食い止められる構造であったり、内部評価でも埃をかけてイメージセンサーまで到達しないという評価はしています。
―― ところで、これはケーブルレリーズ用のネジ穴なんですよね?
千葉 そうです。RX1の血の流れを注いでみたんですよ。バルブ撮影をするときに使っていただきたいです。別売りアクセサリーのリモコンを買っていただければ、それでバルブもできるんですけど、ケーブルレリーズだったら昔からカメラをやっている方なら持っていらっしゃるだろうと。ターゲットとしては一眼に触れていた方がターゲットなので、あるものを使ってもらいたかったんです。
―― 僕はもうデジカメ時代になって捨ててしまったので、わざわざケーブル買いに行きます。
千葉 RX1でもワールドワイドで「ケーブルレリーズイイね」という話が出ていますね。あれで星を撮るんです。
―― RX1で星を撮ったら綺麗でしょうねえ。
千葉 まあ、自分たちで言うのもなんですけど、あの解像度はすごいですからね。撮る度に驚きます。
なくなりつつあるビデオカメラとの壁
―― そういえばビデオカメラのイメージセンサーで、1型はほぼないですよね?
千葉 ビデオカメラの主流はもっと小さいイメージセンサーですね。RX10はサイバーショットですけど、動画にも力を入れています。画質に関してはビデオカメラを超えたかもしれません。もちろん長時間手持ちで動画撮影するときのホールディングなど、ビデオカメラには敵わないところもありますが。
―― 社内的にどうなんですか? 他の部署から文句がきたりとか。
千葉 他の機種を気にして性能を落とすことよりも、お互いが高い性能を目指す文化ですね。1型のイメージセンサーで、間引きのない全画素を読んで、低照度にも強い。その能力を引き出すために、画質だけでなくヘッドホン端子を付けたり、業務用マイクを付けるアダプターが付けられるように、マルチインターフェースシューもあります。絞りリングのクリックオンオフもそのひとつですね。動画のときは音が入らないようにオフにできるわけです。
三島 動画を撮るプロカメラマンの方の中で、RX10の動画性能に気付かれている方もいらっしゃって、YouTubeに上げている方もいらっしゃいますね。
―― ビデオカメラとスチールカメラの壁がドンドン低くなっているような気が。
千葉 長時間手持ちできるかどうかという形状の部分ですよね。スタイルくらいの差しかないかもしれないです。
―― でも動画を満足に撮ろうと思うと、バッテリーが足りない。モバイルバッテリーを使ってUSB給電ができればいいと思うんですが、それができない理由は何ですか?
千葉 USB給電では電力が不足する場合があるんですね。大きいレンズ玉を速く動かすためには瞬間的に大きなラッシュ電流が流れ、特に動画撮影中にフォーカスを駆動したりするとUSB給電では賄えなくて、落ちてしまうことがあるんです。そこは今後改善したいポイントですね。