国際線の楽しみと言えば、昔は機内上映の映画を楽しむなんてこともあった。でも今はオンデマンドでいろんなプログラムを見たり、ゲームなどもできるので楽しみ方は分散してしまった。しかし、機内食は今も昔も変わらず、機内での大きな楽しみだ。
しかも年々機内食は美味しくなり、色々な趣向を凝らしたメニューが提供されている。今回のテーマは日本航空(以下、JAL)の機内食だ。工場でどのように機内食が作られているかを追いかけてみよう。
一般のレストランでもキッチンを見るのはままならない。ましてや俺たちのソウルフード「メイド喫茶」のキッチンさえもだ(こっちは見られないというより、見ないほうがいいのか!?)。
機内食のキッチンともなれば安全管理が徹底しているので、取材でもなかなか見ることができない聖域なのだ(コレ本当。食品加工会社は滅多に取材させてくれない)。今回は滅多に見られない機内食のキッチンを余すところなく取材してきた。
えっ! ファミレスのロイヤルホストが
JALの機内食を作ってる!?
訪れたのは成田空港のほど近くにあるジャルロイヤルケータリング株式会社、通称JRCだ。ジャルは日本航空のJALってのはわかる、ケータリングも食事を提供する会社てのもわかる。謎は間に入っている「ロイヤル」だ。宮内庁ってわけでもないっぽい。
その答えは、ファミリーレストランのロイヤルホストを束ねるロイヤルホールディングス株式会社のこと。えーっ! 実はこの会社ファミレスで超有名なのだが、もともとは機内食が始まりで、その歴史は1951年の戦後初の国内線営業開始までさかのぼる。
ジャルロイヤルケータリング株式会社は、1992年に設立したJALとロイヤルホールディングスの合弁会社だ。JALの機内食のみを提供する会社で、パリやロンドンなどの欧州線やロサンゼルスやニューヨーク、ホノルルなどの太平洋線の機内食を調理している。
その数1日平均で10便、4000食以上を提供し、年間にすると3700便150万食と膨大な数になる。言うなればJALの顔となる主要路線の機内食を専門に調理する会社というわけだ。
さてそんなJALのキッチンに入るのは並大抵ではない。実際に機内食を作っている現場に立ち入るので、異物混入やホコリ、インフルエンザなどの菌を持ち込めないからだ。
まず熱がないかを調べられ、感染危険地域から日本に再入国するときに機内で書かされる健康に関する質問票(ケニアとボリビア帰りに書かされた)より、さらに厳しい質問に答え、署名しなければならない。
そして全身を髪の毛だけでなく、手や足、胸毛にいたるまでの体毛を落とさないように、手首と腰の部分がゴムで絞られる特殊な白衣と帽子をかぶった上に、ズボンのすそをレッグウォーマーみたいなので絞り込み、マスクも装着する(現場の方はさらにズボンと手袋を着用)。
さらに指輪や腕時計、アクセサリー、折れてしまう可能性のある鉛筆やシャープペンなどの筆記用具は持ち込み禁止だ。いずれも食品への異物混入予防策。
また調理場に入る前は、手洗いやコロコロでのホコリ除去、エアシャワーを浴びるなど、とにかく厳重だ。それもそのはず、現在は食品衛生法に加えて、HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point:読み方は決まっていないが、ハサップというヒトが多い)という考え方に基づき、法よりも厳格に、調理のあらゆる工程で安全の管理しているからだ。これ食品加工業界のトレンド。