海外に出る−−たとえば日本チャンネル
中村 そうしたことを後押ししましょうっていうのが、ここで言っている議論なんですね。それには、韓国のやり方もあるし、アメリカのやり方もあれば、フランスのやりかたもあって、その中で日本のやり方があるだろうと。
−− アメリカはどういうやり方なんですか?
中村 アメリカは民間が中心になって、民間の資金が民間につきやすいように政府が制度を作った。要するに、普通のやり方だったら、税金を取って税金を使って支援する。一番強烈なのは、フランスみたいにテレビ業界からドンと金を取って、映画業界に投資する。一種の金融ですよね。アメリカの場合は、たとえば民間の寄付が大学にどんと集まるといったことを税制で実現したりしている。逆に、またハリウッドがパワーを持てるように、昔のことですが、テレビ局の規制をしたりしましたよね。
−− ありましたね。ゴールデンタイムの一定枠はテレビ局以外の制作にせよと。
中村 フィンシンルールですね。
−− それが、いまのハリウッドドラマに繋がっています。
中村 強いセクターをハリウッドで作ってそれで海外展開をしていく。これがアメリカのやり方なんですが、日本はそれをやろうと思ってもできない。
−− なぜできないですか?
中村 それはもう政治力の差ですよ。だから日本は逆の道を選んだ。テレビ局にいろんなことができるようにしている。だからテレビ局にパワーが集まって、映画をテレビ局が支えている。だからそのパワーをハリウッドみたいに国際的に使ってくださいよっていうのがいまのクールジャパンで言ってることなんです。
−− 番組を売るってことなんですか?
中村 番組も売るし、向こうのメディアやチャンネルに出て行く。
−− それはアメリカのケーブルテレビでジャパンドラマチャンネルみたいなものができるってことですか?
中村 そうそう。やんなきゃいけないんですよ。アメリカのケーブル放送を見てみると、中国語放送が何十かあって、韓国語放送が13ぐらいあるんですよ。でも、日本のは1個しかない。
−− 1個しかない!?
中村 そもそも流通を広げないとだめですね。かつてマルチメディアだとかニューメディアだとか言われていた時代ってがんばっていたのは銀行や商社でした。そこの影がいまないんです。そこのプレーヤーがおとなしくなった時期と韓国ががんばった時期が重なってるんです。
−− 1980年代は、それこそハードにソフトがついていったみたいな状況で、ソニーが放送機材を売り込む場合に日本の番組もありますからと言ったという話があるじゃないですか。そういうことをやっていた商社やワイルドな発想な人たちがいまはいないということですね。
中村 で、いまどうするんだと。新しいプレーヤー、ITベンチャーみたいなものがどんどん世界に出て行けるよう応援するだとか、政府だけじゃなくて実際に利益を上げている放送業界だとか通信業界がもっと前に出て、コンテンツを引っ張ってくれるだとか。
−− じゃあそこに税制面で優遇するとか、言葉は悪いけどエサはないんですか。
中村 いまのところは税制面でのメリットはないですね。政府がいまのところやってるのは予算。
−− 今回の具体例としてはチャンネルを誰がどう作るようにすべきなんでしょう。
中村 それは──たとえば日本のテレビ局です。あるいはテレビ局連合ですね。やっとそういう機運が、コンテンツ各業界に出てきたところなんですよ。テレビ番組をネットだとか海外のテレビで流すべきだという議論はずっとあったんですが、そうはいっても、株式会社なのでビジネスの観点から言うと、まだそこまでできてなかった。それが、ここ1~2年で、放送局側のほうが積極的になってきた。
−− 米国のドラマは、『SEX and the CITY』みたいな世界的なヒット作品もあって、『The Sopranos』の製作費は1話あたり2億円だとか言っている。日本のテレビドラマをそうしたドラマに対抗できるくらいのものに変えていくことも重要とも思うのですけどね。
中村 いろんなトライアルをこれまでやってきたんで、各社戦略は違うんですが、これだったら行けるというのがある程度見えてきているんじゃないでしょうか。しかも、バラエティーとか、ドラマとは違うジャンルのもの。企画力というかフォーマットビジネスもあります。そこのパワーを発揮したら一番浸透度が高いですね。