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デルの新COOに聞くクラウド、コンバージドシステムの戦略

デルとレッドハットとの提携でOpenStackは現実解になる

2013年12月25日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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デルが12月13日まで米テキサス州オースティンで開催した「Dell World 2013」で、同社はさまざまな提携を発表し非公開企業として好調なスタートを切ったことを印象づけた。戦略の柱となるのはソリューションベンダーへの転身であり、ここではIBMやヒューレット・パッカード(HP)の牙城に切り込むことになる。

Dell World 2013において、戦略を執行するCOO(最高執行責任者)に11月後半に就任したデルのエンタープライズソリューショントップのマリウス・ハーズ(Marius Haas)氏に、Dell Worldでソリューションを中心に戦略を聞いた。

調査会社の見解は今回の提携で覆せる

――今回のDell Worldではたくさんの提携を発表しました。戦略を加速しているというメッセージでしょうか?

 スティ-ブ・ジョブスでもない限り、単独の企業や個人では大きな変化は起こせない。エンタープライズ分野に積極的に展開には戦略的提携が重要になる。提携により、相手企業とお互いのリソースや専門知識を共有し、お互いの顧客にリーチできる。

 レッドハットとの提携は好例となる。OpenStackベースのプライベートクラウドシステムを共同開発するというもので、共通のビジョンを実現する。確固とした意図と信頼がないとうまくいかないが、成功する提携はお互いを補完し、事業を加速させる。

マリウス・ハーズ(Marius Haas)氏。2012年、デルに入社し、エンタープライズソリューション担当プレジデントとCOOを兼任する。

――レッドハットとの提携について詳しく教えてください。提携は独占的なものですか?

 独占的なものではない。背景としては、デルはOpenStackシステムを自社で構築しようとしたが、(OpenStackベースの)ディストリビューション事業がデルに必要かを熟考した。開発してパッケージにすることが得意なところと提携する選択肢もあると考え、レッドハットとの提携を選んだ。レッドハットは数百人体制でOpenStackの開発を行なっている。レッドハットとデルはLinuxですでに10年以上の提携関係にあり、これをOpenStackでも行なう。

 メリットとしては、提携によりもっと速く動くことができる。レッドハットはハードウェア、ソフトウェア、プロフェッショナルサービスを必要としており、デルがこれを提供できる。タイミングとしてもベストだった。

――11月にガートナーのアナリストがOpenStackについての見解を発表し、業界で話題となりました。OpenStackは技術やコミュニティの点で成熟していないという批判でしたが、OpenStackは企業が利用できるレベルにあるのでしょうか?

 レッドハットとデルの提携で、その見解を覆すことができる(笑)。12月に入って、オラクルがOpenStack Foundationのボードに参加するなど、勢いはさらに増している。企業からの関心も高い。今後はリスクが低いところから利用し、少しずつ拡大していくだろう。

パブリッククラウドがないことは不利にはならない

――御社はクラウド戦略を変更し、パブリッククラウドの提供計画を中止しました。HPやIBMは提供していますが、競合という点で不利にならないのでしょうか。

 パブリッククラウドサービス事業者と提携し、これら事業者の設備と専門知識を顧客に提供することが、パブリッククラウド分野をカバーするもっとも効率のよい方法だと考えている。巨大なデータセンターにコストを割くことはいま現在、デルのとるべき戦略ではない、と判断した。

 デル自身はパブリッククラウドを提供しないが、大手パブリッククラウド事業者のほとんどがデルのハードウェアでインフラを構築している顧客だ。デルはプライベートクラウドを積極的に展開し、パブリックでは顧客でもあるパブリッククラウド事業者と手を組み、シームレスなデル体験を構築することにフォーカスする。デル体験とは、プライベート、パブリック、ハイブリッドと移行するための技術やソリューションを通じて実現していく。今回のDell Worldでは、実装などのサービスを強化するためにアクセンチュアとの提携も発表した。

 また、5月にジョイエント(Joyent)など3社とパブリッククラウドで提携した際に「Dell Cloud Partner Program」を立ち上げた。今回これに、Google(Google Compute Platform)、Microsoft(Windows Azure)が加わった。2014年にも新しい発表を行なう予定だ。

――パブリッククラウドで最大手のAmazon Web Servicesの名前がありませんが、提携の予定は?

 AWSもデルの顧客だ。提携の予定については現時点ではお話できない。

――特にプライベートクラウドの領域では、コンバージドシステムがトレンドになっていますが、これに対するデルの戦略は?

 これまでのようなデータセンターを求めている顧客、ワークロード重視で土台技術はあまり気にしていない顧客と2種類の流れがある。前者はオープンなアーキテクチャを活用して効率化や速度を最大限に得ようとしている顧客で、われわれの開発作業の中核となる。コンバージドシステムは後者が求めるものだ。だが、前者と同じ土台技術を用いており、相互運用性や管理という点ではまったく同じ長所を持つ。単にフォームファクターが異なるだけで、シスコ、EMC、HPなど他社製のハードウェアとも接続できる。

 顧客が必要とするものを提供するのがデルのミッションであり、両方にソリューションを提供する。ベンダーの中にはどちらかに強要しようとするところがあるようだが、強要はよくない。顧客は選択できる柔軟性を求めている。

 2014年前半にデータセンター関連で大きな発表を行なう。業界を崩壊するようなインパクトを持つだろうと期待している。

必要な投資を自分たちのペースで行なっていく

――COOに就任したばかりですが、最優先事項は何になりますか?

 Dell Worldではたくさんの提携とコミットを発表した。市場での動きを加速すること、そしてデル製品やソリューションを知らない潜在顧客にリーチすることが大切だと思っている。これはエンタープライズでもコンシューマーでもいえることだ。そのために提携を通じて、顧客と対話できる機会を増やしていきたい。

 製品や技術と言う点ではわれわれは現在、すばらしいポートフォリオがありベストな状態だ。今後6ヶ月の間に、いくつかの大きな発表を行なう計画だ。これらを通じてデルの方向性を伝え、実行に移す。市場のペースは速いが、われわれも迅速に動いている。

 非公開企業で60億ドルの資本金があるというのはビジネス市場でもまれなことだ。われわれはビジョンを実現するために必要な投資を自分たちのペースで行なっていく。エンタープライズソリューションベンダーに転身するための動きを加速していく。必要があれば買収を行なう。自分たちのペースで意思決定を下し、動くことができるという柔軟性を得られたことに満足している。

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