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パイオニアがあえて「強敵」と組んだワケ

2013年12月10日 07時00分更新

文● 寺田祐子(Terada Yuko)/アスキークラウド編集部

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 トヨタ自動車は今年6月より、渋滞や災害時に通行できる道路をルート案内するアプリ「smart G-BOOK」の個人向け提供を開始。トヨタ純正のカーナビを搭載した車両約330万台の現在位置や運転速度をビッグデータとして収集し、クラウドサーバーに蓄積して解析している。

 そこでカギとなるのは、ビッグデータの「母数」だ。純正カーナビを持つ自動車メーカーとカーナビを製造するメーカーが個別でサービスを提供しようとすると、結局、各社の販売台数の範囲でしかデータを集められない。そんな課題を解消しようと、据え付け型のカーナビでトップシェアを誇るパイオニアとNTTドコモが連携した。

ドコモ ドライブネットインフォ

ドコモ ドライブネットインフォの利用イメージ

 ドコモが12月中旬より提供を開始する無料サービス「ドコモ ドライブネットインフォ」は、パイオニアが開発した次世代自動車向けクラウド基盤「モバイルテレマティクスセンター」とドコモの「しゃべってコンシェル」の音声技術を活用。スマートフォンに話しかけるだけで、最新の渋滞情報や周辺情報が得られる。スマホからリアルタイムな道路情報が投稿できるのも特徴だ。

 ただし、ドコモがパイオニアにとって「強敵」になる可能性も否定できない。音声ナビに対応した「Googleマップ」やオフラインでのルート案内も可能な「カーナビタイム for Smartphone」といった地図ナビゲーションアプリが続々と登場。スマホをカーナビの代替として利用するユーザーが増えているからだ。

 ドコモの累計契約者数は6180万9100件(2013年10月)、もちろん、すべてのユーザーが使うわけではないが、集まる情報量はトヨタと単純比較して18倍以上に上る。スマホはカーナビにとって強敵かもしれないが、パイオニアにとってはより母数の大きいビッグデータによる精度の高い交通情報が、他社との差別化要因になることは間違いない。スマホに駆逐された小型デジカメの二の舞にならないよう、慎重な事業展開が求められそうだ。


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