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日本の自由化に先駆け、東芝がドイツで電力小売り

2013年12月09日 16時00分更新

盛田 諒(Ryo Morita)/アスキークラウド編集部

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 東芝は4日、ドイツで来春に太陽光発電を使った電力小売事業に参入すると発表した。ドイツの不動産大手ガグファと提携、賃貸集合住宅の屋根に太陽光パネルを設置して、発電した電力を住民向けに販売する。

 東芝によれば電力の小売りは国内外を含めて初めて。

事業の仕組み。発電した電力は、小売事業者である東芝インターナショナル・ヨーロッパ社ドイツ支店(TIL)が購入する

(注1)2013年10月時点の20kWシステムサイズの固定買取価格
(注2)オストフィルダン市での2013年10月時点の価格(税前価格)
※資料はプレスリリースより

 ドイツは電力小売りが完全自由化されているとともに、再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)を定めている。FITは、太陽光や風力による発電設備で作られた電気を、一定価格で買い取ることを電力会社に義務づける制度だ。

 ドイツは気候変動対策などを目的に、再生エネルギーを政策の最重要課題と位置づけている。ドイツ政府は2010年9月に決定したエネルギー計画で、総容量に対する再生可能エネルギーの比率を2050年までに80%に上げるという目標を掲げた。おかげでドイツの太陽光市場は世界一の規模に達している(2013年6月、ブルームバーグ調査)。

 一方でFITは社会問題になっている。買い取り価格が市場価格よりも高く、電力会社のFIT関連コストがそのまま消費者に電気料金の形ではね返っているからだ。日本エネルギー経済研究所によれば、ドイツの標準家庭における1ヵ月あたりのFIT関連負担額は、年間185ユーロ(1万8500円)になると予測されている。

 今回の東芝とガグファの提携事業は、こうした電気料金の高騰を背景としたもの。

 東芝の小売り価格は電力会社よりも1割安く、賃貸住宅の住民にとってメリットがある。発電事業者は投資家としてガグファと屋根貸し契約を結ぶ。東芝の電力買い取り価格はFITを基にした価格より高いため、発電事業者にもメリットが出る。

 なお夜間など太陽光発電が稼働しない時間帯は、東芝が卸電力市場から電力を調達することで、電力を途切れさせずに安定供給できるようにする。

 東芝の狙いは、ドイツやイタリアのように電気料金が高騰している欧州諸国に向けて太陽光システムを導入することと、本業の電機事業とのシナジーを開発すること。蓄電やホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS)など、効率的な電力運用によって電気料金を下げられるスマートグリッド関連製品と組み合わせたノウハウを蓄積する。

 日本でも11月13日に改正電気事業法が成立し、今から3年後の2016年には電気の小売りが全面自由化される。

 資源エネルギー庁によれば、新電力会社の販売電力量シェアは2013年9月時点で4%とわずか。だが自由化が進めば、電機業界を巻き込み、大手と新電力の間で電力小売りの価格・サービス競争が起きると考えられる。新電力大手のエネットは既に、節電の達成度に応じて電気料金を割り引く「デマンドレスポンス」などのサービスを開発している。

 そんな中、電力小売りのノウハウは競争が始まったときの大きなアドバンテージになる。東芝はドイツ市場に将来の日本市場を見て、前哨戦を開始したと言える。


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