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日本市場重視!次はモバイルとクラウドに注力

カムバックしたベロウソフCEO、アクロニスをまるごと語る

2013年11月29日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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個人向け・企業向けのデータ保護ソリューションを幅広く手がけるアクロニスCEOであるセルゲイ・ベロウソフ氏に話を聞いた。ベロウソフ氏のユニークな経歴やいったん離れていたアクロニスに戻ってきた背景、そして日本市場への取り組みを聞いた。

創業者CEOがカムバックした理由とは?

 アクロニスの歴史は、現CEOであるセルゲイ・ベロウソフ氏の経歴と大きく関わっている。ロシアで生まれた同氏は、そこで教育を受けた後、1994年にシンガポールに移住し、市民権を得る。「そこで、いくつかの会社を立ち上げ、4つめに作った会社がSWsoftというソフトウェア会社だ。そして、このSWsoftが分社してできたのがアクロニスになる」(ベロウソフ氏)。ちなみに分社したもう1つの会社が、仮想化プラットフォームを手がけるパラレルズである。

アクロニス CEO セルゲイ・ベロウソフ氏

 アクロニスがイメージバックアップソフト製品を最初に出荷したのは2001年。米国、ドイツ、日本で同時に製品を提供し、日本からはプロトン(現ラネクシー)を介して、製品を販売した。その後、日本でのビジネスを拡大すべく、日本法人も立ち上げ、今に至る。一方、同氏は2005年までアクロニスの戦略を担当し、2005年から2011年までパラレルズのCEOと会長職を務めた。この間、ベンチャー企業の活動の支援をするとともに、アクロニスの取締役を務めていたが、積極的にビジネスに関与していたわけではなかったという。しかし、2013年5月にアクロニスのCEOとして戻ってきたとのことだ。

CEOとして戻ってきた3つの理由

 では、なぜこの時期に戻ってきたのか? ベロウソフ氏は、「会社が本来の能力を発揮していないと感じているからだ。特に日本ではまだまだポテンシャルがある。アクロニスのDNAは優れた技術力と使いやすい製品を作り、それらをパートナー経由で販売することだ」とその理由を語る。

 2番目の理由は、アクロニス自身の価値があり、既存のアセットをもっと活用できるからだという。「アクロニスの顧客は世界で27万社以上にのぼり、コンシューマ向けライセンス数は約500万、OEMでも160件以上に上る」(ベロウソフ氏)。営業拠点は18オフィスにおよび、従業員は800人になり、ローカライズは14言語。グローバルで3万のパートナーがおり、90カ国において製品の販売を行なっている。中堅のソフトウェアベンダーとしては、きわめて豊富な実績とパートナーシップを抱えているといえる。

 こうした成功の要因は製品がシンプルであることに尽きるという。ベロウソフ氏は、「多くの人がシンプルな製品を望んでいた。バックアップの量は増えているのに、利用できる時間はなくなっている。データを失うと、大きな時間のロスが発生する。データを作り直す、写真を撮り直すなど、余計に時間がかかる」と時間の節約が大きいメリットだと語る。その点、アクロニスのイメージバックアップは、リストアの際のリブートも、同期も必要なく、ユニバーサルリストアにより、さまざまなハードウェアで容易に復元できる。メインフレームやUNIXなどレガシーシステムを対象とせず、PCやモバイルデバイスなど新しいプラットフォームを焦点にしているのも、既存のバックアップソフトベンダーとの大きな違いだという。

 そしてカムバックした3つめの理由は、市場が拡大しているという点だ。ベロウソフ氏は、「2005年当時、われわれがカバーしていた市場自体は決して大きくなかった。しかし、現在ストレージ市場自体が大きくなっており、あわせて300億ドル以上の価値がある。将来的には会社の規模を、今の10倍にしていける」と語る。

 では、10倍の拡大を実現するには、なにを実現するか? まずは米国、欧州、アジア、そして日本という4つの地域に分けて、地域に根ざした戦略をとっていく。特に日本は重要な市場で、売り上げの25%、利益の50%を日本市場から得ているという。今後、日本市場での売り上げを2倍に拡大すべく、日本法人でもマーケティング、パートナー、サポート担当を増員する予定だ。「日本市場が倍になれば、APACは売り上げ、利益、成長率の面でナンバー1の市場になる」(ベロウソフ氏)と鼻息も荒い。

 製品ラインも、コンシューマー向け、企業向け、モビリティ、クラウドなどの4つに分類する。日本の売り上げの90%を占める企業向けの市場においては、「Acronis Backup & Recovery 11.5」で、中堅・大企業(Medium & Large)向けのソリューションに注力していくという。ベロウソフ氏は、「災害対策や仮想バックアップ、エンドポイントバックアップ、マイグレーション、スケールアウトストレージなどのシナリオに沿った製品を提供したい。オープンな形で製品を提供しているので、パートナーにはいろいろな製品を組み合わせてもらい包括的なソリューションを提供してもらいたい」と、パートナーとのコラボレーションで市場拡大を目指すと説明する。

モバイルとクラウドのデータ保護ソリューションを拡充

 日本市場で次にフォーカスするのは、「mobilEcho」や「activEcho」などのモバイルの分野だ。「会社に行けば、PCがすでにあり、ファイル共有やActive Directoryなどでデータを管理している。しかし、モバイルデバイスに関しては、個人の端末を会社で持ち込んで使っているのが現状」(ベロウソフ氏)。こうした管理の蚊帳の外にあるモバイルデバイスのセキュアに、安全に利用するのがアクロニスのモバイルソリューションだ。

 ベロウソフ氏は、「個人が持っているモバイルデバイスはLANにつながっていない。そのため、企業のデータにアクセスできないので、生産性が落ちる。しかし、自らのデバイスを使いたいというのが人情だ」と語る。これに対して、同社のmobilEchoやactivEchoでは、モバイルデバイスのアクセスにポリシーを設定していく。ベロウソフ氏は「オフラインで使えるファイル、使えないファイル、あるいは1回見たら、削除してしまうファイルを作ったり、アプリケーション内でしか閲覧できないといったポリシーを適用できる」とアピールする。

会社で自分のデバイスを使いたいと考えるのが普通だ

 もう1つ、フォーカスする分野は「クラウド」だ。もともと同氏はパラレルズにおいて、サービスプロバイダー向けの製品を提供しており、日本でもKDDIやGMOインターネットなどのサービスで導入実績がある。アクロニスにおいても、今後はサービスを前提とした導入が増えると見込んでいる。「エージェントを導入するだけで、データを完全に保護することが可能だ。今後、こうしたソリューションを利用したMSP(Managed Service Provider)や通信事業者、ホスティング事業者などに向けたサービスが立ち上がっていくだろう」(ベロウソフ氏)とのことで、来年は飛躍的に成長すると期待している。

 ベロウソフ氏は、「データの重要性が高まっているので、今後は新たなお客様も増えてくると考えている。われわれのバックアップ製品が機能や性能などの面でナンバーワンであることは間違いない。今後は市場の認知度やシェアという点でもトップを目指す」と語る。4社を立ち上げてきた同氏の言葉だけに、その方向性は重みがある。

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