「ニコニコ動画」のコメント機能を模倣した「ビリビリ動画」(http://www.bilibili.tv/)という動画サイトが中国にはある。
漢字表記のサイトではあるが、bilibiliで検索すればサイトを訪問できる。ビリビリ動画自身は書いていないが、「百度百科」など中国の百科事典サイトによれば、ニコニコ動画の模倣と認知されている。
そのビリビリ動画だが、どれくらい利用者があるかは書いておらず、ニュースもない。取材依頼もかけているが、今のところ応じてくれない。
そこでウェブの調査事業を手掛けるアレクサ(http://www.alexa.com/)のデータを見ると、中国で400位、世界で3500位程度だが、これは中国の動画サイトでは有名な「YOUKU(優酷)」が75位、ニコニコ動画が世界で200位であることを考えると、それほどアクセスがあるわけではなく、中国を代表する動画サイトではない。
しかし、中国で人気の初音ミクを含め、さまざまなネットカルチャーが発信されたニコニコ動画の模倣だけあり、日本のコンテンツ絡み、ないしそこから派生したコンテンツが多数ある。
熱狂的な日本アニメやゲームのファンは、ニコニコ動画のようなビリビリ動画に走っていく。動画を右から左へ流れるコメントのノリも日本のそれに近い。
そんなビリビリ動画で、ひとりの日本人が話題になり再生数を伸ばしている。28歳のアートプランナーの山下智博氏だ。
山下氏の動画は、彼自身がタイツを着て、ラブドール(空気娃娃)の彼女「薇薇(ウェイウェイ)」がサトシに変身し、一緒に中国のコミケ的なイベントの会場を歩き回り、コスプレイヤーと交流するというもの。
中国語を勉強途中の山下氏が教える日本語講座もウケがいい。YouTubeでも山下氏の動画見られるが、薇薇と一緒に行動する動画はビリビリ動画にあり、そこに多くのコメントが書き込まれている。そんな山下氏に直接会って中華料理を食べつつ話を聞いた。
中国のネット動画で話題の山下氏を直撃!
筆者:こんにちは。ビリビリ動画ですごく人気ですよね。イベントに乱入する動画とかが印象的です。
山下:「コスプレデート動画ですね。いくつかの中国の動画サイトにアップして、YOUKU(優酷)が6000に対してビリビリが22万もアクセスがあって、3日間で2位、週間で総合3位になったんですよ!」
筆者:すごいですね!
山下:「イベント会場をビリビリで実況しているカメラの前に入って、そしたらなんだこいつは? となって、カメラが寄ると一気にコメントの弾幕が来ましたね。最初、現場にいた人たちも距離を置いてたんですが、彼女にサトシのコスプレをさせたら、ああなるほど仲間なのかと近づいてくれました」
筆者:ほかにも教科書的ではない日本語を教える動画とか……
山下氏:「日本人が生で教えるサブカル寄りの日本語講座なので見てもらえました。ほかにも僕が中国語を勉強していることを応援する意味でも見てもらえたと思います。上海の観光地「外灘」でデートをする動画とか、成都・広州のコミケへ突撃とか、コンテンツは全部で10もないけれどみんな覚えてくれてますね。ビリビリのコメントはみな優しい。日本同様の「www」とかその中国版の「23333」ってのがいっぱい流れているので受け入れてくれてると解釈してます。たぶんニコニコ動画だと直球で突き刺さるコメントもあるのでヘコむと思います(苦笑)」
筆者:ニコニコ動画は、半年ROMらないと分からない流れがあると思いますが、ビリビリはどうですか?
山下氏:「日本のファンが見る空間なので似てますよね。中国のほかのコンテンツだと一見さんでも大丈夫ですが、ビリビリはちょっとハードルは高い。たとえば動画がはじまると「山下だ」「山下智久?」「ちげーよ山下智博」といった流れがお約束であったりとか。あと非モテ(中国語でディャオスー)の空間なので、映像にカップルが映るとしねしねとばかりに「FF」という言葉を投げるんですよ。で、「自分も彼女(薇薇)がいるから心配だ」と言うと「お前は大丈夫www」
筆者:その後ネットの反応はどうですか?
山下氏:「微博でフォロワー数が7000になりました。微博でも中国語を勉強しているという姿勢が評価されているみたいです。ほかの動画サイトから「うちにも載せてほしい」というので、何か作るのかなあとOKの返事をしたらその動画を載せただけでした。転載の可否を伺っただけだったんですね」
筆者:7000という数字がリアルですね。数字でいうとどれくらいの人が動画を見てると思いますか?
山下氏:「30万人くらいは動画を見たことがある人がいて、1割くらいの人は名前を知ってるんじゃないかなあ。広州・杭州・成都のイベ ントに“彼女”と突撃したときは「上海のアイツだ!」と認知されててすんなり溶け込みました。僕と薇薇のポストカードも4000枚刷って6日間でほとんどなくなりました。」
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