新しいモバイルプラットフォーム「Tizen OS」を開発する非営利団体Tizen Associationが、11月中旬に韓国・ソウルで開発者カンファレンス「Tizen Developer Summit」を開催した。
参加メンバーが36社になったという発表があったものの、スマートフォンなどは登場せず、今後の予定についても目新しい情報はなし。SamsungがTizenをサポートした自社製カメラを披露するにとどまった。
年内発売予定だった端末登場に
遅れが生じている
Mozillaが「Firefox OS」が計画を実行に移している一方で、参加メンバーからみると一番有力視されておかしくないTizenの動きが遅いと感じるのは気のせいだろうか?
今年は年初から4種類のモバイルOSが新しい勢力を目指して名乗りを挙げた。前述のFirefox OSに加え、「Sailfish OS」に「Ubuntu」、そしてTizenだ。このうちUbuntu以外は年内に搭載端末登場予定としており、Firefox OSは7月に欧州と南米でローンチ済みだ。
機種はMWCですでに端末を披露していたZTE(ZTE Open)の後、Alcatel(One Touch)、LG(Fireweb)も発売にこぎ着け、着実に前進している。Jollaも5月の端末発表と同時に事前予約を開始、今週にもフィンランドで発売されることになっている。端末登場は来年としていたUbuntuも、夏に展開した「Ubuntu Edge」のクラウド調達キャンペーンが記憶に新しい。キャンペーンは失敗に終わったものの、新しい可能性を感じさせた。Ubuntuのスマートフォン登場は2014年春と見られている。
このように3つのプロジェクトがそれなりに計画を進めたのに対し、Tizenの動きはおとなしく見える。TizenはMeeGoの後継として2001年に発足。立ち上げメンバーのIntelとSamsungに加え、LiMo Foundationの流れとしてNTTドコモや日本の携帯電話メーカーも参加している。
MWCではIntelとSamsungのほかNTTドコモとOrangeの2キャリア、それにHuaweiらがプレスイベントに顔を見せた。それぞれの思惑はさまざまだろうが、AppleとGoogleがモバイル市場を制することへの懸念という点では共通している。
キャリアにしてみれば、Apple/iPhoneとGoogle/Androidへのパイプに徹するか、サービスを強化するかの選択肢を迫られており、後者の場合はTizenかFirefox OSがリスクの低い賭けと見えるのだろう。
この2つは参加企業が多いが、キャリアはそれぞれの市場での競合もあり、Firefox OSとTizenのメンバーはその競合関係どおりに分かれる結果となった。わかりやすい例がTizenのNTTドコモとFirefox OSのKDDI。TizenのOrangeは、TelefonicaとT-MobileがFirefox OSを押すなか、LiMo Foundationの流れもあってTizenに参加した格好だ。
NTTドコモがTizen端末には触れずにiPhone提供に踏み切った今秋、今度はOrangeで端末担当トップのYves Maitre氏が、「Tizenコミュニティーとともに、市場に向けた戦略を評価しなおしているところだ」として年内に端末登場が難しくなったと述べたことが報じられた(PC Advisorより)。Maitre氏はMWCで、NTTドコモやIntel、Samsungとコミットを強調した人物で、Orangeはその席で今年後半に端末を発表すると語っていた。
実は、MWCのときのOrangeには迷いが感じられた。Tizenの発表会の外で話をしてくれたOrangeの参加者は、会期中に大々的に発表会を開いたMozillaの動きを見て焦りを隠さなかった。結局は離陸しなかったLiMoに触れながら、「Tizenにコミットすることが戦略的に正しいのかどうか……」と匿名を条件にこの人物は語った。
なお、Maitre氏のPC Advisorへのコメントは、Firefox OSのローンチがそれほど盛り上がらなかったことを受けてのもので、同社のTizenへのコミットが変化しているという文脈ではない。
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