携帯電話やスマートフォンの普及が公衆電話の撤去につながったのは記憶に新しい。では固定電話への影響はどうなのだろうか。今年9月末に総務省が公表した平成25年度第1四半期のデータによれば、スマートフォンの登場により新たに「2台持ち」需要を掘り起こした携帯電話の契約数は依然伸びているが、固定電話の契約数は前期比-0.1%で5674万と、おおむね横ばいという。IP電話への移行は進んでいるものの、ほぼ下げ止まったといえる。2013年10月号で特集したように「第2次スマホバブル」がやってきても、固定電話はなくならないのだ。
つなぐだけで会話を自動録音
固定電話が必要な代表例は企業の外線だ。パイオニアホームエレクトロニクスが発売した「AF-CR1000-W」は固定電話機用の自動通話録音装置。今ある電話機につなぐだけで、通話を始めると同時に自動的に録音を開始する。SDカードスロットを備え、32GBのSDHCカードを装着すれば約8888時間の通話が録音できる(長時間録音モード時)。通信販売の窓口やユーザーサポートに電話すると、会話を録音する旨を告げるメッセージが流れるケースが増えている。言った言わないの記録だけでなく、オペレーターと利用者の会話を共有したり、サービス開発に役立てているという。電話機を置き換えるのは大変だが、本機をつなぐだけならほとんど手間は掛からない。電話機そのものの操作も変わらないので、利用に当たっての社員教育が不要なのもメリットだ。
通話料が掛からない転送電話
家庭の固定電話に目を向けると、スマートフォンと連携する仕組みが見つかった。パソコン専門店を展開するPCデポが提供を始めた「ozzio 050 Home」(オッジオ050ホーム、以下オッジオ)は、固定電話に掛かってきた電話をスマートフォンに転送するアプリだ。自宅の電話機に専用の機器(ターミナルアダプター、TA)を取り付ける必要はあるが、TAやアプリの設定はすべて店頭で実施。利用者はTAを持ち帰ってケーブルをつなぎ替えるだけでいい。仕組みだけならNTT東西が提供している「ボイスワープ」機能と似ているが、オッジオでは転送元の自宅から転送先のスマートフォンへの通話料が掛からない。スマートフォンが自宅にあるか屋外にあるか自動判別されるので、転送設定のオン/オフを切り替える手間も不要だ。今あるものを組み合わせてより便利にする。仕組みをゼロから作り出すのが苦手でも、ビジネスのヒントはいくらでもありそうだ。