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Dark Mail Allianceから始まるメールの新時代とは

2013年11月15日 05時24分更新

文● 松下 康之/アスキークラウド

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 2013年10月30日にマウンテンビューで開かれた小規模なイベント、「Inbox Love」は現状のメールシステムの将来を考えるきっかけになるかもしれない。

 そのイベントはシリコンバレー界隈のインターネット関連企業から約150名が集まった「Inbox Love」。「インボックス」の名前が示す通り、メールシステムに関連したソフトウェア、サービスを開発、コンサルティングしている企業が集まったカンファレンスだ。ホストはマイクロソフト、参加した企業にはヤフー、グーグルなど著名なネット企業が目白押しだ。
http://inboxlove.com/

Inbox Loveのスポンサー企業

Inbox Loveのスポンサー企業

 イベントでの大きなトピックは同日発表された「Dark Mail Alliance」。オープンソースで現状の暗号方式にとらわれない新しい暗号化メールを実現する試みだ。現状のメール本文だけの暗号化ではなくFromやToのフィールドにも暗号化を行うことを目指している。すぐにアメリカのITやネット系サイトでニュースとして紹介された。

「NSAの検閲を避ける新しい技術を作り出すDark Mail Allianceが登場」
Meet the ”Dark Mail Alliance” Planning to keep the NSA out of your Inbox

「Dark Mail Alliance、メッセージの監視を防ぐ電子メール技術を開発へ」
Dark Mail Alliance develops surveillance-proof email technology

 エドワード・スノーデン氏のリーク事件から延焼した感があるメッセージサービスベンダーLavabitへのメールデータに対する調査(スノーデン氏が使っていたメールをホスティングしていたのがLavabit)、メールの暗号を解読する秘密キーの公開要請、そしてその要請への拒否とサービスのシャットダウン。その状況を受けてLavabit創業者がSilent Circleと共に設立したのが「Dark Mail Alliance」だ。時事ネタとしてシリコンバレーではニュースにならないほうがおかしいだろう。しかし日本での扱いは皆無だった。

 当日、そのイベントに参加した唯一の日本からのベンチャー、BHIのCEO、日昔靖裕氏とマーケティング担当井上準之介氏に話を聞いた。両名はライトニングトークに自社開発のメールアプリ、Swingmailを発表する機会を得たのだ。

 まずこのカンファレンスに参加した理由はなんだろう?「いまBHIが開発しているSwingmailを広めたかったというのが参加した理由です。まず英語圏でユーザーを獲得したいので。実は去年も参加していたんですが、その時は単なる観客でした。今年はアプリを紹介するライトニングトークの枠に入れてもらいました」と語るのはBHIのCEO日昔氏。

 「Inbox Loveのキーノートが「Dark Mail Allianceの結成」となってしまったので、会場でもその話題が活発に論議されました。この話が出た時は会場の参加者がちょっとどよめきましたね。賛同する人が多かったような印象があります。ただ、実際にはそれ以外にも様々なトピックがありました。特に多かったのがユーザーインターフェースと『洪水のように溢れる電子メールを如何に処理するか』にフォーカスしたトピックとソリューション。やはりアメリカでもメールが多すぎることが問題になっており、日本とあまり変わらないという印象です」と語るのはマーケティング担当、井上氏だ。

BHIのCEO 日昔氏とマーケティング担当井上氏

BHIのCEO日昔氏とマーケティング担当井上氏

 参加した際のカンファレンス全体の印象について日昔氏は「元々狭いアプリケーションの領域なので、殆どの参加者は競合するサービス、アプリケーションベンダーの人間なのです。だから発表しながらもなんとなく微妙な感じでした。お互い褒めながらも牽制しあってるような(苦笑)」と説明する。「多すぎるメールをどう処理するのか?に関しては様々なアプリやサービスがありましたが、我々のようにメールシステムを代替するのではなく補完するアプリ、多機能ではなくわざと機能を絞ったアプリを出しているところはありませんでした。とにかく多すぎるメールを如何に分類するか、優先順位を付けるか、というのがポイントだったと思います。我々のSwingmailのようにGmailやフェイスブックのメッセージ、ツイッターのダイレクトメッセージから最低限必要なものだけをスマホで返信するだけシンプルなソリューションについては興味を持ってくれた人もいましたが」。

 Gmailとマイクロソフトのメッセージング製品、それにヤフーメールのそれぞれの担当者からベンチャーのメールアプリベンダーまでが参加してメールシステムの課題をどうやって解決するのかを話し合うオープンな機会は稀だろう。Dark Mail Allianceだけではなくこのようなカンファレンスから何か新しい方向性が見えてくるはずだ。

 情報伝達の方法としてのメールシステムとそれを犯罪防止の観点から傍受したい政府機関、そして大量に発生するメールに悩むエンドユーザー、それを解決しようとする新興のベンチャー。様々なステークホルダーが入り混じって次のシステムが見えてくる。そんな現場を垣間見たのかもしれない。現代のビジネスマンの頭痛のタネであるメール洪水問題に関しては引き続き注目していきたい。

 なおSwingmailはまもなくApp Storeで公開される予定だ。英語版からのリリース、かつ人数制限がされるという。品質を高めるための方針だそうだ。日本発のちょっと変わったメールアプリケーションである。ツイッターやフェイスブックを使いこなすiPhoneユーザーは要チェックだ。

Dark Mail Alliance: http://darkmail.info/
Swingmail: http://swingmail.co/

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