PCからスマートフォン・タブレットへ。デバイスの主役が交代したことで、ネットワーク市場も大きく変わりつつある。プライベートイベント「AIRHEADS 2013」(APAC)の会期中、アルバネットワークスのCEOのドミニク・オー氏に、ネットワークの主役に躍り出たワイヤレスのメリットと最新の取り組みについて聞いた。
スマートフォンとタブレットの台頭で急速な成長へ
TECH 大谷:スマートフォンとタブレットの台頭は、御社のビジネスにも大きな影響を与えたようだ。
ドミニク氏:ノートPCだけを対象としていたときは、10億ドルの売り上げを達成するのに8年かかった。しかし、iPhone登場以降は、さらなる10億ドルの成長が2年で実現できた。
TECH 大谷:企業が無線LANを構築する条件は、どのように変わったのだろうか?
ドミニク氏:まずはデバイスの台数が増えた。以前はノートPCだけを想定し、座って使うホットスポット型で十分だった。しかし、最近はスマートフォン、タブレットで3台持ちになっている。スマートフォンやタブレットは持ち運んで使うので、継続的なカバレッジが重要だ。音声も、ビデオも動きながら使わなければならない。Wi-Fi同士だけではなく、セルラーとWi-Fiのローミングも意識する必要がある。われわれはこうした要件に確実に対応する。
TECH 大谷:競合との差別化ポイントを教えて欲しい。
ドミニク氏:ワールドワイドでの競合はもはやシスコしか存在しないと思うが、確かにシスコは企業として大きく、数多くの製品ポートフォリオを持っている。アルバは組織として大きくはないが、ワイヤレスにフォーカスしているので、カスタマーに声を真摯に聞ける。シスコはワイヤード(有線LAN)の製品があるので、ワイヤレスの製品のみに注力できないだろう。
この10年、多くのネットワークベンダーはデータセンターとコアネットワークで厳しい競争をしてきたが、アルバはアクセスネットワークにフォーカスしてきた。結果として、その戦略がうまくいっている。
TECH 大谷:ワイヤードと比較しても、ワイヤレスの適用範囲は格段に拡がっている。
ドミニク氏:昔、ワイヤレスはあくまでワイヤードのオプションだった。ハンバーガーショップのメニューで例えれば、ワイヤードがメインのハンバーガーで、ワイヤレスは添え物のポテトのような存在だったのだ。しかし、今やワイヤレスがハンバーガーで、ワイヤードがポテトになっている。でも、お客様としては、ハンバーガーとポテトをセットにした「ハッピーミール」として提供して欲しいと考えている。その点、アルバはシスコよりもよいハッピーミールを提供できる。
IEEE802.11acの時代、もはや有線のスイッチは不要だ
TECH 大谷:基調講演で発表された「Cloud WiFi」について教えて欲しい。
ドミニク氏:ラージスケールの顧客は自分で管理できるが、規模の小さい会社にとっては無線LANの管理は複雑だし、担当するスタッフもいない。「Cloud Wi-Fi」は、無線LANのマネージドサービスを展開するプロバイダーを使うものだ。
競合のマネージド型サービスとは違い、Cloud Wi-Fiはパートナー経由での提供を前提としている。アルバインスタントのAPを顧客宅に設置すると、ブロードバンドから自動的に設定が落ちてきて、セキュリティやファイアウォールなどのポリシーを適用してくれる。管理はエンドユーザーに任せてもよいし、サービスプロバイダーが代行しても問題ない。
TECH 大谷:IEEE 802.11acの製品戦略は?
ドミニク氏:エンタープライズのITベンダーとして、他社に先駆けて最新の無線LAN規格に対応してきた。ここ1年でIEEE 802.11acのデバイスは急速に増えてくるはずなので、屋内・屋外、低価格、ハイエンドまで含めて、とにかくフルラインナップを用意する。
11acはマルチメディアトラフィックを前提としているので、IPフォンやUCアプリケケーションに安定した通信環境を提供できる。今後は有線のスイッチをわざわざ導入する必要はなくなるだろう。
TECH 大谷:基調講演ではマイクロソフトとの提携について説明されたが、ほかにもパートナーとの提携は進めていくのか?
ドミニク氏:2種類の方向性がある。上位レイヤーにあたるノースバウンドのアライアンスは、マイクロソフトのようなアプリケーションのほか、モビリティ、コミュニケーション、セキュリティのベンダー、あるいはビッグデータのアナリスティックと提携しても面白い。下位レイヤーのサウスバウンドに関しては、シスコ以外のネットワークベンダーになるだろう。
TECH 大谷:企業としての直近の目標を教えて欲しい。
ドミニク氏:さらなる年間10億ドルの売り上げ拡大にアプローチしたい。アルバは規模は大きくないが、責任感のある、動きの速い会社という定評を持っている。この定評の通り、今後もシリコンバレーで最大のスモールカンパニーを目指していきたい。