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myrmecoleonの「グラフで見るニコニコ動画」 第13回

ニコ動参入を考える企業は「パチスロ」「パチンコ」タグを勉強すべし

18歳未満お断りな大人のニコニコ動画に迫ってみた

2013年11月07日 11時00分更新

文● myrmecoleon

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この連載では、独自に収集したデータを使って、みんな知ってるようで知らないニコニコ動画の現在を紹介していきます。今回はちょっと大人なニコニコ動画、エロじゃないけど18歳未満お断りの「パチスロ」「パチンコ」タグを調べてみました。連載一覧はこちら

筆者紹介:myrmecoleon

 明治大学米沢嘉博記念図書館スタッフでニコニコ学会β幹事。趣味で同人誌やニコニコ動画関連の研究をしてる人。記事に使ったデータ元の『ニコニコ統計データハンドブック2013』など同人誌をコミケで頒布。ブロマガでは連載記事の補足も。
 Twitterアカウントは@myrmecoleon。関わった近著に『進化するアカデミア 「ユーザー参加型研究」が連れてくる未来』(イースト・プレス刊)。右の画像は筆者を擬人化?して描いてもらったキャラ「ありらいおん子」。男の娘。

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独特な人気の「パチスロ」「パチンコ」タグ

 以前からタグトレンドに登場していたので気になってた方もいると思いますが、「パチスロ」「パチンコ」は以前からニコニコ動画でよく検索されているタグです。一方でニコニコ動画の他のジャンルとはあまり関わりなく人気があることから、謎の多いタグでもあり、今回調べてみました。

 「パチスロ」「パチンコ」タグは文字通りパチスロ・パチンコに関連のある動画につけられるタグです。カテゴリタグとしては「エンターテイメント」で投稿されることが多いです。動画の内容としては筐体の実機を個人で入手してそれをプレイしている動画を投稿する「実機配信」という形式の動画が多く、そのほかにパチスロ・パチンコで使用されているBGMの転載、パチンコを扱うゲームなどのプレイ動画などがあります。また後述のとおりチャンネル動画が多いタグで、そちらではテレビのパチンコ・パチスロ番組のようなホール内で撮られた動画も多いです。

 動画は「パチスロ」「パチンコ」ともそれぞれ3万6000ほどの動画が投稿されています(1割ほどが重複)。動画の投稿者は「パチスロ」が約3300名、「パチンコ」が約2700名で、規模的にはおおよそ同程度です。

動画投稿数は左軸、新規投稿者数は右軸。2013年10月は28日までの途中の数字(以下同じ)。2012年ごろより新規投稿者の増加のわりに動画投稿数が増えている傾向が分かる

 「パチスロ」タグの新規投稿者は2008年頃から継続して月40名前後を上下しており、劇的な増加・減少はしていません。一方で動画の投稿数は2012年前後から急に増加しており、現在は1ヵ月に900近くの動画が投稿されています。

 再生数は合計が約2億7000万、中央値が約3500、18.6%の動画が1万再生以上と全体によく再生されているタグです。ユーザー別にみても上位2.30%の投稿者の動画に全体の再生数の半数が集中と比較的格差は低いです。

動画投稿数は左軸、新規投稿者数は右軸。上下がかなり激しいがやはり2012年ごろより動画投稿数が増えている

 「パチンコ」タグの新規投稿者も2008年頃から継続して月40名前後を上下していましたが、こちらは2012年末から規模が落ちて現在は月に25名前後が新しく「パチンコ」タグの動画を投稿しています。動画の投稿数はこちらも同じく2011年から急に増加しており、現在は1ヵ月に650前後が投稿されています。

 再生数は合計が約1億8000万、中央値が約3000、1万再生以上の動画は12.2%と、「パチスロ」に比べると低いですがこちらも全体によく再生されています。上位2.69%の投稿者の動画に全体の再生数の半数が集中と比較的格差は低いです。

 両タグに共通する顕著な特徴として、チャンネル動画の比率が非常に高いことが挙げられます。パチスロ・パチンコ関連のニコニコチャンネルとしては「ジャンバリ.TV」「パチテレ!」「MOND TV」など約50チャンネルがあり、もっぱらいわゆるパチンコ・パチスロ番組的な動画がよく投稿されています。以下のグラフをみるとよく分かりますが、2012年頃からどちらのタグでもチャンネル動画の比率が高くなっており、特に最近はユーザー動画とチャンネル動画の比率がほぼ同数となっています。

パチスロタグでは2012年4月以前と5月以降でユーザー動画とチャンネル動画が入れ替わるように増減している傾向が見える。ちなみに「P-martTV」がニコニコチャンネルに切り替えたのがちょうど2012年5月

パチンコタグでは2011年まではチャンネル動画の比率は非常に少なかったが、やはり2012年頃からチャンネル動画が増加、逆にユーザー動画が減っていき現在は半々となっている

 また「パチスロ」タグのユーザー動画の中でも人気の高い「アロウズスクリーン」は、外部のパチスロ動画配信サイトが自社の無料コンテンツを投稿しているものですし、現在はニコニコチャンネルを持っている「P-martTV」も以前はユーザー動画として投稿していました。

 昔テレビの深夜番組でよくやっていたようなパチンコ・パチスロ番組と似たようなものを無料・有料で動画配信するビジネスが昔からあり、その配信チャンネルのひとつとしてYouTubeなどとともにここ数年ニコニコ動画が使われるようになっている、ということのようです。

 こうした商業のパチスロ・パチンココンテンツとは別に、ニコニコ動画では従来からプレイ動画的な実機配信を続けているユーザーもいます。実機配信とは要するに、パチスロ・パチンコの台を自分で購入して自宅等でプレイした映像を投稿するものです。

 チャンネル動画の比率が増えてきたことを背景に、こうしたユーザーによる実機配信動画を区別して探しやすくするために「ニコスロ」「ニコパチ」というタグが提案され使われています。ただし十分普及しているわけではなく、タグのついてない実機配信動画も多いようです(古くは「実機」「実機配信」のタグが使われたようです)。

 パチスロとパチンコの実機配信動画の違いとして、パチスロ実機配信ではプレイ内容を字幕や実況で解説している動画が非常に多いのに対して、パチンコ実機配信ではあまり見られない点が挙げられます。これはそもそも遊戯の仕組みとしてパチンコと比べてパチスロは知識で出玉を左右できる要素が大きいことが原因と思われます。

 この点から、パチンコ実機配信はその台の演出を見たい、という要素が高いのに対して、パチスロ実機配信はホールでのその台の攻略の参考にしたい、というような意図の視点が強いのではないか、と考えられます。

 ちなみにパチスロ実機配信では上記のとおり実況プレイをしている動画も多いのですが、ゲームプレイ動画と違って特に区別しているタグは付けられていません。初期のパチスロ動画ではPeerCastでゲーム実況などをしていた「永井先生」の投稿も人気だったため、パチスロで実況が多いのはこの影響もあるかもしれません。

 また実況プレイ動画などと同様、パチスロでもニコニコ生放送で実況しながら実機配信をしているユーザーも多いようです。

 「パチスロ」「パチンコ」タグは、ニコニコ動画の中でも特に企業等によるチャンネル動画の比率が高いタグです。しかもかつて多くのチャンネル動画がそうであったようなコメントが少なく閑古鳥がないてる動画ばかりでなく、それなりに見られている動画も珍しくなくなりました。

 チャンネル動画ではないですが「アロウズスクリーン」の「シーサ。の回胴日記」のように企業による動画でもニコ動内のファンが生まれている例もあり、パチンコ・パチスロ系のチャンネル動画は企業がニコ動などに参入する上で参考になるものかもしれません。

「シーサ。の回胴日記」は10万再生超えも多数ある「パチスロ」タグで人気の動画シリーズ。パチンコ・パチスロの無料動画サイト「AROWS-SCREEN」の看板番組で、公式に投稿されている。MADなども作られており、ニコ動でもファンが多い

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