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マイクロソフト・トゥディ 第69回

マイクロソフトリサーチ アジア、「イノベーションディ2013」を開催

2013年10月31日 22時00分更新

文● 大河原克行

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マイクロソフトリサーチアジア イノベーションディ2013

 中国・北京のマイクロソフトリサーチ アジア(Microsoft Research Asia、MSRA)が開設15周年を迎え、2013年10月30日、北京の同研究所にて「マイクロソフトリサーチ アジア イノベーションディ2013」を開催した。

マイクロソフトリサーチアジア イノベーションディ2013が開催された中国・北京のMSRA

マイクロソフトリサーチ アジアとは

 マイクロソフトリサーチは、マイクロソフトの基礎研究拠点であり、1991年に米ワシントン州レドモンドに最初の研究所を設置。英国・ケンブリッジに次いで、3番目の拠点として中国・北京に開設した。現在、米国・シリコンバレーやボストン、ニューヨーク、インド・バンガロールにも研究所を設置している。

 1998年に設立したMSRAには、230人以上の研究者や開発者、300人以上の科学者や学生がパートナーやインターンとして勤務している。また、MSRAには6人の日本人研究者が勤務しており、その中には、言語処理の第一人者であり、紫綬褒章を受章している辻井潤一氏もいる。

20以上の最新技術をデモストレーション

 MSRAで開催された今回のイベントでは、マイクロソフトリサーチ アジアのほか、全世界のマイクロソフトリサーチの拠点や、マイクロソフトリサーチ アジアのパートナーで研究中の技術を展示。ナチュラルユーザーインターフェース、クラウドやモバイル、ビッグデータと機械学習、研究主導型製品イノベーションといった4つの観点において、20以上の最新技術がデモストレーションされた。

 また、マイクロソフトのコーポレートバイスプレジデントであり、マイクロソフトリサーチを統括するピーター・リー氏や、マイクロソフトリサーチ アジアの洪小文マネージングディレクターなどが、パネルディスカッションや講演を行なった。

関係者がMSRAの15周年を祝う

パネルディスカッションの様子

MSRAはアジアに貢献するだけでなく、世界に貢献できる

 イベントの冒頭、MSRAの洪小文マネージングディレクターは、1〜9の数字を示しながら、「1には、ワンマイクロソフト、ワンストラテジーという意味がある」といったように、それぞれの数字に関連するMSRAの取り組みを紹介しながら、各数字を3×3の9つのマスに配置。縦、横、斜めの数字の合計が15になるように置いた「マジックスクエア」の状態としたことを示しながら、「このマジックスクエアは、まさにMSRAの15年間を示すもの。MSRAのミッションは15年間に渡って変わっていないが、社会や技術は変わっている。それにあわせて、MSRAは変わっていかなくてはならない。夢を現実に変えていくということに取り組んでいく」とした。

マイクロソフトリサーチアジアの洪小文マネージングディレクター

洪小文マネージングディレクターが示したマジックスクエア

 さらに洪マネージングディレクターは、「マイクロソフトリサーチは、コンピューターサイエンスに関する基礎研究および応用研究を行ない、それをマイクロソフトの製品に反映してきた。技術、科学などの分野において、1000以上の成果が発表されている。そして、インターン制度を活用した人材育成や、大学をはじめとする学術機関とも共同研究を行ってきた。社会や人道的な分野でも成果を挙げている」などとした。

 続けて、「マイクロソフトの製品と技術によって、人々の生活を変えられると考えている。可能性を大きくし、世界に対して大きな貢献をしていきたい」とし、「15年前に北京にMSRAを開設したのは、中国には豊富な人材がいるという理由があった。そして、今ではアジアが大きな市場へと成長している。MSRAはアジアに貢献するだけでなく、世界に貢献できる。これからの15年は、これまでの15年以上に渡って貢献できるだろう」などと述べた。

成果を研究だけに留めるのではなく、製品にも展開したい

 一方、今年7月の組織改革に伴って、マイクロソフトリサーチのトップに就任したピーター・リー氏は、「マイクロソフトが、デバイスとサービスの会社になるという新たな方向性は、今後のマイクロソフトリサーチの行方にとっても重要な出来事である。新たな会社にシフトしていくことで、今までになかったような製品が登場していくだろう。

マイクロソフトリサーチを統括するピーター・リー氏

 だが、新たな会社になったからといって、今までの要素がなくなるわけではない。どんなデバイスに進化させるのか、クラウドに対してどれだけ接続しやすくするのか、といったことが重要になる。マイクロソフトリサーチによる多様なアプローチを通じて、スマートな社会を実現していく」などとした。

 また、「MSRAは、これまでにも業界の突破口となる技術を開発してきた経緯がある。なかでも、音声処理、音声翻訳の研究は、言語の障害を乗り越えられるものだといえる。会社が抱える問題を解決していくことになる。さらに、都市開発の問題解決や遺跡の保存などに関する研究も行なっている。今後も継続して技術を改善し、ビジネスを改善していくことに期待している」とした。

 さらに、「マイクロソフトリサーチのユニークなところは、オープンな立場にあること。研究開発の90%が、大学生や大学教授との共同作業であり、人材育成にも寄与している。様々な人材が所属しており、ワールドクラスの若い人材もいる。オープンリサーチモデルを展開し、世界と共有していくことで、我々も大きなメリットを享受できると考えている。今後もすばらしい研究者や学生たちと一緒に研究活動を推進し、その成果を研究だけに留めるのではなく、製品にも展開したい」と語った。

研究成果をオープンにし、結果を共有することが
サイエンスの進歩につながる

 また、マイクロソフトリサーチのバイスプレジデントであるジャネット・ウィング氏は、「研究拠点にとって、大学とのつながりは非常に重要であるが、MSRAでは学術分野とも積極的な連携をとっており、そこで大きな成果を挙げている。大学の研究者との連携も幅広い。そして、インターンシップも行っている。研究内容に関しても、リーチの広さを持った研究所であることがMSRAの特徴である」などとし、「私自身は、トラストワーシィコンピューティングに強い関心がある。システムの堅牢性、信頼性を高め、顧客が、セキュリティ、プライバシーといった課題に対しても安心して利用できる環境を提供していきたい」としたほか、「研究成果をオープンにし、結果を共有することがサイエンスの進歩につながる」などと、マイクロソフトリサーチのオープン性を強調してみせた。

マイクロソフトリサーチのバイスプレジデントであるジャネット・ウィング氏

MSRAが常に考えているのは、若い才能の育成にも力を入れる点

 さらに、特別ゲストとして、精華大学のジャン・ボー教授が登壇。「私は、15年前から顧問としてMSRAをサポートしてきた。現在でも、研究開発のプログラムを大学と一緒になって推進している。MSRAが常に考えているのは、会社のためだけの利益を追求するのではなく、Win-Winの関係を構築し、若い才能の育成にも力を入れる点だ。中国の研究レベルを高めるとともに、中国のみならず、世界に影響を与える研究拠点になっている。そしてそれは、中国の産業にも対しても大きな貢献をしている。そのひとつが多くの学生をインターンシップとして迎え入れている点である」などとした。

精華大学のジャン・ボー教授

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