出荷が公式に伝えられている
「GeForce GTX 780 Ti」
さて、ここまでがすでに出荷されている製品のアップデートで、ここからが今後の製品ロードマップであるが、実はあまりこちらは情報がない。
まず1つ明確になっているのが「GeForce GTX 780 Ti」だ。こちらは公式に存在がアナウンスされており(関連リンク)、おそらく11月中の出荷と目されている。これはAMDの「Radeon R9 290X」への対抗製品という位置づけである。
実のところ「Radeon R9 290X」の性能はおおむね「GeForce GTX 780」よりも若干上という程度で、市場に多く出回っているオーバークロック版の「GeForce GTX 780」と大体同程度の性能レンジと考えてよい。
問題は「Radeon R9 290X」が549ドルという異様に安い価格で投入される予定なことで、これは「GeForce GTX 780」の650ドルと比較して100ドルも安いことになる。
図を見ていただくとわかるとおり、NVIDIAは普及帯では大体50ドル刻みくらいで製品をラインナップしてるため、これは2グレード異なることになる。NVIDIAで同価格帯の製品を探すと、「GeForce GTX 770」か「GeForce GTX 760 Ti」あたりが該当するが、このあたりの製品とR9 290Xではお話にならないほど性能ギャップが開く。
これを埋めるには「GeForce GTX 780」をやはり550ドル位に下げれば拮抗することになるが、そうなると当然「GeForce GTX 770」は400ドル位にしないと辻褄があわないし、これ以下の製品全部にも影響してくるから、そうそう価格は下げられない。
大体500mm2を超える巨大なダイサイズのGK110を搭載していると、これを500ドル台で販売することそのものが真剣に利益率の低下につながってしまうので、NVIDIAにとっても受け入れられない。「GeForce GTX 780」の650ドルという価格は、GK110コアを搭載するカードのほぼ下限に近いと思われる。
ではここで手をこまねいていられるかというと、そういうわけにもいかないので、価格を据え置いた状態で性能を引き上げる、という対抗策を取ったのが「GeForce GTX 780 Ti」というわけだ。
元々GK110コアは15 SMXの構成であり、「GeForce GTX Titan」は14SMXを、「GeForce GTX 780」は12 SMXを有効にする形でリリースされていたが、「GeForce GTX 780 Ti」は13 SMXを有効にするという形にするようだ。
「GeForce GTX 780」が12 SMX構成だったのは歩留まり対策というよりは性能差をつけるためという側面が強く、これを13 SMX構成にしても、製品原価そのものにほとんど影響はないと思われる。
実のところ14 SMX構成にした「GeForce GTX Titan」と比べても、「GeForce GTX 780」の性能はかなり高い。したがって12 SMXから13 SMXにしたところで、性能面での利得はあまり多くないと思われる。
これを補うために、多少の動作速度向上と、もしかするとメモリー速度の向上もあるかもしれない。ところが、メモリーベンダーの出すGDDR5チップは、既存の6Gbpsの上は7Gbps品しかなく、今のところ価格もかなり高めに推移しており、現実問題としては6Gbps品のままにするだろうと筆者は見ている。
あとは13 SMX構成+動作速度向上で、「Radeon R9 290X」との100ドルの価格差を正当化できるほどの性能改善があるかどうか、が「GeForce GTX 780 Ti」のポジションを決めることになるだろう。
場合によっては、「GeForce GTX 780」で無効化されたDP(Double Precision:倍精度浮動小数点演算)を有効にするといった形での対応もあるかもしれないが、そうなると今度は「GeForce GTX Titan」のポジションが微妙になってくるだけに、実際にそうなるかどうかは断言しにくい。
現在筆者が聞いている限りでは、Kepler 2.0世代の製品はほぼこれで打ち止めになるようで、次はTSMCの20nmプロセスを使ったMaxell世代になると思われる。
この連載の記事
-
第798回
PC
日本が開発したAIプロセッサーMN-Core 2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第797回
PC
わずか2年で完成させた韓国FuriosaAIのAIアクセラレーターRNGD Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第796回
PC
Metaが自社開発したAI推論用アクセラレーターMTIA v2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第795回
デジタル
AI性能を引き上げるInstinct MI325XとPensando Salina 400/Pollara 400がサーバーにインパクトをもたらす AMD CPUロードマップ -
第794回
デジタル
第5世代EPYCはMRDIMMをサポートしている? AMD CPUロードマップ -
第793回
PC
5nmの限界に早くもたどり着いてしまったWSE-3 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第792回
PC
大型言語モデルに全振りしたSambaNovaのAIプロセッサーSC40L Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第791回
PC
妙に性能のバランスが悪いマイクロソフトのAI特化型チップMaia 100 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第790回
PC
AI推論用アクセラレーターを搭載するIBMのTelum II Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第789回
PC
切り捨てられた部門が再始動して作り上げたAmpereOne Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第788回
PC
Meteor Lakeを凌駕する性能のQualcomm「Oryon」 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU - この連載の一覧へ