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フルラインアップで“企業WANを再構築”、2016年に国内市場シェア10%を目指す

コストパフォーマンスで勝負!HPがルーター市場に本格参入

2013年10月18日 06時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は10月17日、エンタープライズ向けルーター「HP HSR Routerシリーズ」および「HP MSR Routerシリーズ」の販売開始を発表した。これを契機として国内の企業向けルーター市場に本格参入を図る。

新製品の1つ「HP HSR 6804」

 今回発表されたのはHSR/MSRの計6シリーズ。名称はHSRが「High-Performance Service Router」、MSRが「Multi Service Router」の略で、HSRがデータセンターのコアルーターや企業のセンタールーター領域を、MSRがブランチオフィスや小規模営業拠点、店舗などから企業ネットワークへ接続するWANの領域をカバーする。HPでは、他社の同等価格帯製品(ソフトウェアライセンス費込み)と比較して「3倍以上」のパケット処理性能を実現したとしている。

HSR/MSRの計6シリーズで企業向けルーター全域をカバー

 HSR6800シリーズは、データセンターや大規模ネットワークのコア向けのシャーシ型ハイエンドルーター。インタフェースモジュールを最大8スロット備え、最大スループットは276Gbps、パケット転送能力は420Mpps(HSR6808の場合)。2Tbpsまたは1Tbpsのバックプレーン帯域幅を有しており、将来的には100Gbps Ethernetにも対応する予定。一方、企業ネットワークのセンター向けであるHSR6600シリーズは、2Uサイズのモジュール型ルーター。10Gbpsインタフェースにも対応している。

 HSRシリーズはいずれもマルチコアプロセッサを搭載、ノンストップフォワーディング(グレースフルリスタート)を実現するコントロールプレーン/データプレーンの独立、電源冗長化など、高可用性を実現する設計となっている。なお6600/6800のインタフェースモジュールは共通のもの。

HSR6800、HSR6600各シリーズの特徴

 MSR Routerシリーズは、企業ブランチオフィス向けのモジュール型ルーターMSR2000/3000/4000シリーズと、小規模営業拠点や店舗向けのボックス型ルーターMSR930シリーズがラインアップされている。MSR930はWebインタフェースも備えており、リモートからの管理も可能。

MSR2000/3000/4000シリーズの特徴

MSR930シリーズの特徴

 HSR/MSRとも、OSにはHPネットワーク製品共通の「Comware OS」を採用しており、HPのスイッチ製品とCLIが共通している。また、多拠点間でインターネットVPN(IPSec VPN)接続を設定する際の作業を簡素化する「Dynamic VPN(DVPN)」機能に対応している。DVPNは最大5000拠点までのメッシュ接続が可能で、特に拠点側ではほぼ自動でVPN接続設定を完了することができるという。

 また両シリーズとも、付加的な各種WAN機能(たとえばMPLS、ファイアウォール、IPSec VPN、上述のDVPNなど)が標準ライセンスに含まれており、追加ライセンスを購入しなくてもすぐに使える。同様に、将来的にリリースされる新機能についても、追加費用なしで(ファームウェアのアップデートで)使えるようになるとしている。

シェア獲得は「必ず行ける」と自信、SDN対応も進行中

 製品発表会に出席した日本HPのネットワーク事業本部 事業本部長の多田直哉氏によると、グローバルのHPネットワーク事業では、スイッチ、ワイヤレスと並んでルーターも大きな事業の柱となっており、ルーター市場シェア(IDC調査)でもシスコシステムズに次ぐ「ナンバー2」の地位を確保しているという。国内市場では“後発”の立場となるものの、多田氏は「市場に大きなインパクトを与えられると思う」と自信を見せた。

日本HP ネットワーク事業本部 事業本部長の多田直哉氏

多田氏の示した国内エンタープライズルーター&市場動向(2013~2017年、IDC予測)。ルーター市場は企業向けネットワーク市場の約3分の1を占める

 「国内の顧客やパートナーからは『なぜ国内でもルーターを出さないのか』との声が上がっていた。『2016年に(国内エンタープライズルーター)市場シェア10%を目指す』と目標を掲げているが、こうした顧客の声なども勘案すれば、この目標は必ず行ける(達成できる)と判断している」(多田氏)

 また多田氏は、企業WAN環境における背景変化も指摘した。ハイブリッドクラウド、リッチなコミュニケーションツール(SNSやビデオ会議ツールなど)、モバイルデバイスという3つの業務活用が普及することで、WANと企業LANとを往復するトラフィックが増加し、「既存ルーターではパフォーマンス不足になる」(同氏)というのがその主張だ。

 こうした市場変化に対応し、高い処理性能と圧倒的なコストパフォーマンス、追加ライセンス不要、企業WANをフルカバーするラインアップで市場を獲得していく、と多田氏は語った。

 なお発表製品のSDN対応について多田氏は、グローバルではすでにSDN対応機能の搭載を進めており「日本市場向けにも準備中」だと述べた。国内では2014年初頭をめどに、ソフトウェアアップデートでの対応を発表する予定。

 「HPではSDNのインフラ層/コントロール層/アプリケーション層、3つすべてのレイヤーで製品とサービスを提供する構えであり、今後のSDN戦略を考えるとWAN越しのルーティングを扱うルーターのラインアップは必要。今回のルーター市場への本格参入を、SDN推進の礎にもしたいと考えている」(多田氏)

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